◇ あらすじ
白陵柊学園に通う主人公「鳴海孝之」。
気の合う友人達と平凡な日常を送ってはいるが、会計士を目指して頑張る「平 慎二」、水泳選手として実業団入りが確定している「早瀬 水月」に比べ、主人公自身は将来に対する明確なビジョンを持っておらず、少なからず焦りを感じていた。
そんな夏のある日、主人公は水月の親友である「涼宮 遙」に告白され、付き合うようになる。
最初はいい加減な気持ちで付き合っていた主人公だが、その事で遙を傷つけ、そして遙の主人公に対する気持ちに気付いてからは互いに一番大切な存在へと変化していった。
そうして迎えた最後の夏休みには遙と同じ大学を受験する為に志望校を変更し、恋に受験勉強にとても充実した毎日を送るようになるのだった。
この幸せは永遠に続くものだと思っていたが…。
◇ ゲーム概要
二部構成になっている選択肢型のオーソドックスなADVです。
第一部はひと夏の高校生活から主人公達の将来を大きく狂わす出来事までを描いたプロローグ的な要素が強く、選択肢の内容で若干イベントが変化するものの、その結果が第二部に反映されることは無い…と思います。
エンディングが用意されてるヒロインは計8人。
1人あたり複数のエンドが存在するようなのでエンド総数は結構多いのですが、私自身はこの感想を書いてる時点で12種類しか見てません。
それでもCGや回想モードは全て埋まってますけど。
難易度は低めなので、エンディング補完で悩むようなことは無いかと。
ただ一人あたりのシナリオが長いのでプレイ時間は結構かかります。
◇ システム
インストール容量は約750MB。
他サイズは指定できません。
画面サイズは800×600の窓かフルスクリーンから選択可能。
テキスト枠はある程度好みで大きさを変更でき、行間やフォント、ウインドウ背景の色まで変更可能になっています。
他にメッセージ速度の調整、自動送り機能、既読スキップ、キャラによって異なる文字色とその色の変更、ホイールですぐに見れるテキスト履歴、一度選択した選択肢はグレー表示されるなど、かなり使い易くて好感が持てます。
セーブやロードはオープニングやエンディングを除けばゲーム中にいつでも可能。
セーブ領域は最初は10ヶ所ですが、10番目にセーブされると更に10ヶ所追加されていき、最大で1000ヶ所まで保存できるようになっています。
更にセーブした時点の画面やゲーム中の日付、もちろんセーブ日時も保存してくれるので再開時に非常に判り易くて良いと思います。
欲を言えばタイトル画面に戻る機能や『とらいあんぐるハート3』のように選択肢履歴も欲しかったところですが、現状でも十分に扱い易いシステムになってます。
◇ グラフィック
原画は「バカ王子ペルシャ」さん。
サブ原画として「いくたたかのん」さん「ゆうろ」さん「Bou」さんも参加されています。
バカ王子ペルシャさんは『君がいた季節』でも原画を担当されてますが、個人的には今回の絵柄のほうが好み。
立ち絵は表情パターンだけでなく、服装やポーズもそれぞれ組み合わせで結構な数があって満足。
立ち絵の拡縮パターンがいくつかあって主人公と登場キャラとの物理的な距離感を上手く出してますし、会話に参加していないキャラにも表情変化や動きがあって見ているだけでも楽しいです。
CGの塗りに関しても背景、イベント絵共に高レベル。
塗りだけでなく、エフェクト処理も非常に凝っていて必見。
特に雨の効果は素晴らしいですね。
まぁ全体的に枚数が少なめに感じますけど、先に書いたように立ち絵の効果が良いのでそれほど不満には感じません。
CGモード、及び回想モードは一度エンディングを迎えた後にトップメニューの「プレミア」より閲覧可能。
◇ サウンド
BGMはCD-DAで曲数は30曲以上。
曲単体で聴いてもインパクトのある曲はそれほどありませんでしたが、ゲーム中の演出としてはこれ以上ないってくらい合っていたと思います。
特にOP曲「Rumbling hearts」やEDの「君が望む永遠」、そしてゲーム中の見せ場でかかる「誰にでもある明日」はイベントと曲とのタイミングが合っていて素晴らしい。
上に挙げた3曲は曲単体としてもかなり気に入っています。
他には「陽射し」もなかなか良い感じ。
音声は主人公以外フルボイス。
男性サブキャラだけでなく野次馬連中にもしっかりと音声があったのには驚きました。
演技のほうは「遙」と「大空寺あゆ」が最初の頃に若干違和感を感じた以外は皆演技力は高く、キャラに合っていたと感じてます。
音楽モードはCGと同様、一度エンディングを迎えた後にトップメニューの「プレミア」より視聴可能。
ただ一部の曲は音楽モードだけでなく、CD-DA部にも収録されていません。
先行配布された「一章まるごと先行配布版」ではCD-DAで入ってるので持ってる人はそちらで聴くと良いかも。
※現在はサントラが発売されているはずです。
◇ 感想まとめ
まずこのゲーム、第一章と第二章では主人公を取り巻く状況がかなり変化しています。
私はこのゲームの発売1ヵ月以上前に配布された「一章まるごと先行配布版」をプレイしていたおかげで一章と二章の間にワンクッション置くことができ、感慨にふける期間がありましたが、いきなり事前情報無しでこのゲームをプレイされる場合はゲーム全体を通して「鍵」となるイベントが単なる通過点になってしまうだけでなく、二章の主人公の状況に戸惑うかも知れません。
今回の私の感想はこのあたり全く考慮してないことを予め言っておきます(前置き長いよ)。
一章は先にも書いたようにゲーム全体のプロローグにあたるもので、将来の事、親友の事、恋愛の事に想いを馳せたり悩んだりと、若者特有の初々しさが上手く描かれた学園恋愛物って感じで進行します。
特に恋愛面での遙とのイチャイチャっぷりが良くて、私はプレイしていて気恥ずかしかったです。
主人公に同調して浮かれまくり、イベント内容も主人公とプレイヤーを持ち上げてくれます。
そして…何の前触れもなく叩き落されるのです。
この急転直下ぶりが凄まじく、そのシーンの演出と合わせて暫く呆然となります。
主人公に同調すればするほどそのダメージは大きいでしょう。
二章の主人公の立場には敢えて触れませんが、二章以降に関しても基本的にはこの「持ち上げて、落す」という流れが何度か続くことになります。
加えてこのゲームが「多重恋愛アドベンチャー」という事が売りになってる事もあり、主人公の立場からすれば非常に悩む選択を迫られるケースが多いのです。
それも選択肢の直前にヒロインの辛い境遇を見せられて、「この娘はこんなに健気に主人公を想っています、対するこの娘は貴方のせいでこんなに深い心の傷を負って救いを求めてます…、さぁどっちか選べや!」というキツイ二者択一を求められるんですよ。
本気でどう選べば良いか迷いますし、それが何度も続くんで、精神的に結構くるものがありました。
ただ二章に関しては主人公に殆ど同調できないというのが救いと言えば救いでしょうか。
とにかくこの主人公、優柔不断で悲劇の中心ツラしてうじうじ悩んで周りに迷惑を撒き散らす自分勝手さが生理的に受けつけません。
客観的に見てると後でまとめてツケを払う時が来るのが分かるのに言うべき言葉を言わず、ずるずると問題を先送り。
しかもプレイヤーは何もできずに見ているだけなのでストレス溜まりまくりですわ。
どのシナリオでも発生するトラブルの殆どは主人公が原因になっているんですが、それをさも悲劇のヒーローであるかのように周りにやつ当りする姿は殺意すら覚えます。
「自分だけがイラついて不幸背負って、むかっ腹立ってるなんて思うなや!」
というのは「大空寺あゆ」のセリフですが、まったくもってその通りですな。
この主人公って結構モテるんですけど、二章では「なんでこんなヤツが?」と感じる事しきりでした。
もっとも、このヘタレ主人公あってこそのシナリオ展開なんで、仕方ないと言えば仕方ないんですけどね…(苦笑)。
エロシーンに関してはそれほど濃いものではないですが、テキストの描写や声優さんの演技がよくて不満は感じません。
ただ、プレイヤーである私が凹んでるときに発生するものが多くて、個人的には「Hどころじゃねぇよ…」と感じるシーンが多かったのが残念。
ヒロインの配置的には「涼宮 遙」「早瀬 水月」「涼宮 茜」の白陵柊学園派、「大空寺あゆ」「玉野まゆ」のレストランすかいてんぷる派、「天川 蛍」「星乃 文緒」の看護婦派に別れていて、それぞれの分類内でのシナリオ間の繋がりは強いです。
「穂村 愛美」はちょっと(?)特殊なので外しました(笑)。
基本的にどのヒロインシナリオでも痛いんですが(愛美も別の意味で痛いが)、やはりメインの白陵柊学園部隊は第一章のこともあってプレイしていて辛いですね。
特に茜絡みのシナリオはどれもキツイものばかりでプレイしていて切なかった。
とにかくこのゲームはヒロインと結ばれれば他のヒロインが都合よく諦めるという生易しい展開は一切なく、誰かと結ばれれば誰かが傷付き、嫉妬や蔑みなどのドロドロした展開が多いので、いわゆる萌え系のゲームを期待してプレイすると手痛いダメージを受けると思います。
そういう意味では人を選ぶでしょうけど綺麗事だけじゃない恋愛物としてプレイする価値はあるんじゃないかと思います。
◇ お気に入りキャラ
どのキャラも魅力的に描かれているので結構悩みますが…やはり最後は「涼宮 遙」に回帰しました。
キャラの個性では「大空寺あゆ」、シナリオとの相乗効果では「涼宮 茜」がかなり気に入っています。
◇ 備考
所要時間: 1'stプレイ約8時間。CG・回想モードコンプまで約27時間
私的満足度: ★★★★★ ★★★★☆
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