Rascal・改 − Game Impression
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月光
発売日:1999.10.01 / URAN

◇ あらすじ

 大学生の主人公「宏」は学費を稼ぐため運送屋のアルバイトをしていた。 ある日いつものように深夜の配達の途中だった宏はふとカーラジオから流れるマイナーなインディーズレーベルの曲を聞いて驚く。
 初めてこの曲を聴いたのは今から五年前、宏にとって決して忘れる事のできない曲であった。 やがてメロディを耳にしながら宏はかつての光景を思い出していく…。


◇ ゲーム概要

 3部構成になっているノベル型のADVで、それぞれ中学、高校、現在のストーリーがメインで展開されていきます。 シナリオは一本道。 途中で選択肢が出る事もありますが、すぐに共通のシナリオに合流してしまうので全く意味が無い…と思います。

 それとゲームの進行に合わせてフローチャートが作成され、何時でも進行状況や分岐点が表示可能で、更にそのフローからのロードも可能になっていました。 ただ先に書いた通りストーリーが一本道なので、この恩恵を受ける機会は皆無なんですけどね(苦笑)。


◇ システム

 インストールはフルで200MBほど。 音声をインストールしなければ100MB程度に抑えられます。 それとこのゲームはCDのインストーラーからインストールしただけではプレイできず、付属のFDでアップデートしてからじゃないと動かないようです。

 画面は800×600と少し大きめで、更にフローチャート画面も表示するとなると1024×768は欲しい所。 動作は全体的にちょっと重め。 メッセージはスペースキーを押しっぱなしにする事でノーウエイトで流れて行きますが、未読のチェックもしておらず、速度的にもあまり快適では無いです。 でもメッセージがキャラの台詞によって色分けされていて見やすかったのは好印象でした。

 セーブファイルは任意のファイル名を指定でき、HDD容量の許す限りいくらでも保存できるタイプ。 ただしロードはシナリオの区切りポイントからとなり、選択肢が出てる場面でセーブしても、少し前からやり直す事になります。


◇ グラフィック

 原画は「飯田友和」さん。 デザイン的に不満は無かったし、CGも結構奇麗なのですが…枚数がちょっと少な目なのが残念。 それにキャラの立ち絵パターンも一つしか無く、喜怒哀楽による表情の変化が無いのも寂しいです。
 CGモードは最初からトップメニューにあり、ストーリーが進行するに従って随時登録されていくようです。


◇ サウンド

 CD-DAとMIDIから選択可能。 私はずっとCD-DAで聴いていたのでMIDIの方の出来はわからないですが、ちょっと印象にのこりにくい曲が多かったです。 はっきり言ってしまえば不満でした。 曲数は24曲ほどで、エンディングやゲーム中の特定のシーンでボーカル曲「月光」が再生されます。

 CVは主人公以外フルボイス(男キャラも喋ります)。 演技のほうは結構レベルが高くて満足しました。 音楽モードは最初からトップメニューにあります。


◇ 感想まとめ

 プレイ開始から4時間、3部構成になっているシナリオの最初の1つが終了した時点では、中学生ならではの恋愛に対する初々しさや病弱なメインヒロイン「由希子」に対する主人公の対応などで結構感情移入してプレイでき、「これは当りか!?」と思ったのですが…その後2部3部と進めるうちに大甘だった事を思い知らされました。

 まず概要でも書いた通り、どんな選択をしてもストーリーに変化が無く、プレイヤーの意志(希望?)を全く無視で完全にプレイヤー置き去り状態でした。 例えば高校でサブヒロインの「泉実」に言い寄られた時、「恋人が居るから」と断ったとしても主人公はズルズルと交際を続けて強制的にプレイヤーの意志と正反対の話が進んだりする訳です。

 そもそもこの主人公、かなり駄目駄目な奴でした。 あまり書くとネタバレなので控えますがヒロインの由希子と泉実との関係をふらふらと優柔不断にさ迷い、自分に言い訳をしながら最後まで決着を付けなかった時は殺意さえ感じたほどです。
 そしてそんな主人公から結果的に酷い扱いを受けた由希子やその母親から「主人公は良い人」みたいな事を言われた時には 「どこがやねん!おまえら揃って節穴かい!」って感じで完全に覚めましたわ。 こんな主人公を好きになってしまったヒロインに対しても冷めた。 駄目な主人公といえば個人的に海月の『ラブエスカレーター』を始め、いくつか思い当たりますが、コイツはそれらの上を行ってると思います。
 もちろん主人公の行動や物語の展開にプレイヤーを納得させるだけの説得力があれば無問題なのですが、 全体的に描写不足で先のヒロイン母娘の言動のようにゲーム中のテキストに常に違和感を感じまくりでしたよ。

 極めつけはエンディング…もう何も言う気は無いです。 3部の中盤あたりは『加奈』っぽくて少しでも期待してしまった私が愚かだったんですよ(遠い目)。 結局なんだったんでしょう?不幸な人生を送った女の子の話…か?

 余談ですがこのゲームを購入したきっかけの一つに意味深なパッケージイラスト(月をバックに十二単を纏った由希子が主人公を抱いている)があって、PSの『久遠の絆』のような転生物を期待してたと言うのも今となっては自分自身に笑えます。 念のため書いておきますが、全く意味がありませんのでご注意下さい。
 とりあえず、主人公に感情移入せず傍観者的な位置から物語を“眺める”のなら色々と突っ込めて或いは楽しめるかもしれません。 個人的には「はじめまして、そしてさようならウラン」ってとこでした。


私的満足度: ★★★☆☆ ☆☆☆☆☆

Copyright(c) 2007 SHEO