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吸血殲鬼ヴェドゴニア
発売日:2001.01.26 / Nitro+

◇ あらすじ

 普通の学園生活を送っていた筈の主人公「伊藤惣太」。 その彼がある日の学校帰りに吸血鬼に噛まれてしまう。 そんな主人公を救ったのがヴァンパイアハンターの「モーラ」と名乗る少女だった。
 しかし既に中途半端に血を吸われた主人公は、自身の血液が一定値以上無くなると飢えて吸血鬼化する「ヴェドゴニア」になってしまっていた。 人間に戻るためには一刻も早く噛んだ吸血鬼を滅ぼし、血の盟約を解かなければならない。
 主人公を噛んだのは齢2000を越えるロードヴァンパイア「リァノーン」。 だが彼女は人間でありながら吸血鬼と手を組み不老不死を夢見る集団「イノヴェルチ」に捕えられ、その所在すら掴めない…。 そこで主人公はモーラ達ヴァンパイアハンターと行動を共にし、イノヴェルチとの闘いに明け暮れることになるのだった。


◇ ゲーム概要

 全13章から成るドラマ仕立てのADV。 ゲーム中で分岐に関わる選択肢は3〜4回程度。 後は戦闘時に使用する武器を選ぶ選択肢が入るくらいなので難易度は低く、分岐に関わる選択肢以外はただ用意されたシナリオを押し進めて行くだけのゲームとも言えます。 ただ各章ごとに0〜2回程度の戦闘シーンがあり、この場合は相手の出方に合わせた戦闘コマンドを上手く使い分けていかないと結構苦戦すると思います。

 エンディング総数は4種類。 先にも書いたように分岐の数は少ないのですが、各シナリオの分岐は比較的序盤に集中している為、プレイ時間は結構かかりました。


◇ システム

 インストール容量は約500MBほど。一度インストールすれば以後はCD-ROMが不要。 画面サイズは800×600固定。それ以上の解像度では周りが全て黒で塗りつぶされてしまいます。 メッセージは表示速度の指定や既読・未読の判定のあるスキップ、更にテキストの再読機能も備わっていて特に不満はありませんでした。

 セーブやロードは戦闘シーン以外なら何時でも可能で計30ヶ所まで保存できるようになってました。 セーブした時の章番号とタイトルも表示してくれるので再開時に分かり易いのが好印象です。 なお、このゲームは不具合がいくつか挙がってるようなのでNitro+のサイトで修正ファイルをDLしてから始めることを薦めます。 修正ファイルを入れた後はセーブデータの互換性が無くなるようなので。


◇ グラフィック

 キャラデザイン・原画は「中央東口」さんと「NIΘ」さん(にし〜 と読むらしい?)。 えっと、正直言って女性キャラ陣にあまり魅力は感じませんでした(汗)。 ただ男性キャラやキメラヴァンプ…いわゆる怪人どもはなかなか逝っちゃっててナイスです。
 それと前作同様に今回も銃器やバイクに凝っていてLightWave3DあたりでモデリングしたっぽいパーツCGが結構出てきます。 また主人公の戦闘シーンのアニメ処理も3Dになってるみたいですね。

 通常CGは背景が実写を加工したものとツールで描き込んだものが半々程度ですが、背景に関しては特に違和感は無し。 ただアニメちっくな人物や怪物CGと重ねると結構違和感ありました。 実写を所々に取り入れた背景と3Dツールで描いたパーツとアニメ塗りな人物絵の融合は人によっては馴れるまで時間がかかるかも知れません。
 CGモードやエロシーンの回想モードはトップメニューの「OPTION」より入れるようになってます。


◇ サウンド

 PCMで曲数不明。なかなかシーンを盛り上げてくれる曲が多くて満足。 主題歌「WHITE NIGHT」と「MOON TEARS」もOPやEDだけでなく、イベントシーンなどで使われていたりして盛り上げてくれます。 ちなみに主題歌はどちらも男性ボーカル(小野正利氏)。
 音声はなし。音楽モードもありませんでした。ちょっと残念。


◇ 感想まとめ

 このゲームは何と言っても主人公を始めとした各キャラの心理描写が素晴らしいです(ただし主人公の恋愛感情は除く)。 望まぬ闘いを余儀なくされた主人公の心情、そして脇役キャラに対して抱く怒りや戸惑いの感情などの描写が丁寧で、例え主人公に感情移入できないとしても、その行動自体に疑問を感じるようなことは殆ど無いんじゃないかと。
 更に殺られ役の三下は別として脇役キャラの心理描写も丁寧です。 例えばヴァンパイアハンターの「フィリッツ」が相棒の「モーラ」に抱く感情、敵の幹部である「ギーラッハ」が「リァノーン」に抱く感情などをあれだけ丁寧に描かれると、正しく彼らにとって主人公は邪魔者以外の何者でもなく、主人公に向ける憎悪にも納得できてしまいます。

 更に…前作なんかもそうでしたが、見せ場となるイベントの描写も非常に熱くて良いですね。 先に書いたモーラとキメラヴァンプとの戦闘シーンや、バイクに乗って敵を追い詰めていくときの描写など、コンマ数秒の駆け引きのシーンが容易に頭の中で描くことが出来、正に手に汗握る展開を堪能できました。 派手で見栄えのするムービーに頼ることなく、テキストとCGの組み合わせでここまで表現できるのはホントに凄いことだと思います。

 ただ難点もいくつかありまして、その一つが展開の幅が無いことでしょうか。 更に戦闘シーンでは折角複数の武器が登場するのに、それを使い分けるメリットが無いのも残念。 ハッキリ言って全てナイフのみでもクリアできてしまいますから…。 どうせならお気に入りの武器を決めて、それを使用し続けた場合は攻撃力がアップするとか必殺技を覚えるとかのメリットを入れて欲しかったです。

 それと…先に主人公の心理描写が素晴らしいと書きましたけど、これは恋愛感情には当てはまらないです。 各ヒロインのシナリオに入れば確かにそのヒロインとのイベントが増えるのですけど、恋愛感情に発展するまでの描写が弱くて唐突に感じてしまいました。
 エロシーンへの入り方も不自然に感じるものがいくつか…。 「リァノーン」や「弥沙子」あたりはそれほど違和感なかったですけどね。 ただ個人的にはエロシーンのテキスト描写も特に興奮したようなものは無かったですし、恋愛描写やエロ描写はあまり期待しない方が良いと思います。

 全体的にもう少し短くしても良かったかなとは思いますけど、各キャラのシナリオは結構良かったです。 ただどれも純粋なハッピーエンドというものでは無いので後味が良くなかったり納得行かないと感じてしまう人も居るかもしれません。 個人的には恋愛面に期待しなければかなりおすすめできるゲームになってると思います。


◇ お気に入りキャラ

 ヴァンパイアハンターの少女「モーラ」です。 スレッジハンマーをぶんぶん振り回す最初のキメラヴァンプとの戦闘シーンはなかなか熱かった(笑)。 もっと彼女の戦闘シーンが見たかったです。


◇ 備考

 所要時間: 1プレイ5〜8時間。コンプリートまで約16〜17時間くらいだったかな…


私的満足度: ★★★★★ ★★★☆☆

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