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椿色のプリジオーネ
発売日:2001.03.16 / Mink

◇ あらすじ

 主人公「西園寺 顕嗣(あきつぐ)」は世界的な大企業であるブルッフラ・コンツェルン会長の一人息子であったが、父「弓三郎」に対して幼少の頃より親としての愛情を感じず、母親の死と同時に西園寺家を出て単身アメリカで事業を起こしていた。 ところが父親である「弓三郎」が急逝してしまった為、その跡取りである主人公は財産絡みの整理のために西園寺の屋敷に呼び出されることになった。 主人公自身は財産に興味はなかったのだが、父親の遺品の中で何故か貸金庫の鍵だけが見つからないという話を聞き、その鍵で閉ざされた扉の先に家族に冷たく接した父親の秘密があると思い、屋敷に戻ることを決意した。

 5年ぶりに訪れたその屋敷は庭一面に咲き乱れる椿に囲まれた洋館である事に変わりはなかったが、屋敷内には執事である「佐伯昇」の他に4人のメイド達が住み込んでいた。 はたして主人公は限られた滞在期間の間、彼女達とどのように接していくのだろうか。そして目的の鍵は無事に見つけることができるのだろうか。


◇ ゲーム概要

 屋敷内を移動して手掛かりを追っていくノベルタイプのADV。 居間、食堂、書斎など屋敷内を移動し、その場所に誰か居る場合は会話イベントが発生します。 基本的にはこの「誰かに会って話をする」ということで物語が進行し、会う順番によって後に発生するイベントが異なってきます。

 ゲーム期間は約5日間で、一日に一定のイベントを発生させると翌日に進めるようになります。 場所移動の簡易マップ上では誰が何処に居るのかは不明ですけど、制限時間などは無く、重要なのはイベントの発生順番なのでハズレの移動先ならいくら選んでも問題ありません。 また何度か同じ部屋を訪れるとアイテムを入手することがあり、そのアイテムを毎晩メイドさん達がしてくれる「奉仕」のときに使用することが可能になります。

 登場するヒロインはメイドの4人プラス秘書の計5人。 エンディングはそれぞれのヒロインのものに加えて「鍵」を見つけて全ての真相が明らかになるTureEndが存在します。


◇ システム

 インストールは標準245MB、コンパクト52MB、フル555MBの3種類から選んでインストール可能です。 フルインストール時はメディアレスで起動可能。

 画面サイズはフルスクリーンと640×480の窓の二通りで、デフォルトではフルスクリーンになってました。 メッセージは速度の調整を「早い」「普通」から選択可。 スキップはCTRLキーによってできましたけど、あまり快適とは言えません。 未読や既読のチェックもしてくれませんしね…。 あとテキスト枠は画面の縦半分を使用していて、もう半分を人物の立ち絵に使ってるという少々変わった仕様になってました。

 セーブやロードは画面に「SYS」のスイッチがある場合に限り可能です。 まぁ移動画面を含めて殆どの場面でセーブ&ロードは可能でした。 セーブ領域は10ヶ所とやや少な目かな。


◇ グラフィック

 原画は「Hide18」さん。 なかなか可愛い絵柄でキャラの描き分けもしっかりしている方だと感じました。 キャラの立ち絵などは胸から上だけでかなり大きめに表示してます。

 CGは背景なんかは凄く雰囲気が出ていていい感じでしたけど、イベントや人物絵は少々薄いというか全体的に白っぽくて生気を感じないのが少し気になりました。 あとCGの表示もソフトフォーカスがかかってる状態から段々とピントが合っていく…という感じになっていて馴れてくると鬱陶しさを感じることがありました。 まぁそれも演出だと思いますけど…あと枚数は若干少なめですね。 一人あたり20枚くらいあるんですが、同じCGのパターン違いも別々に登録されるので実際はもう少し少ないです。
 CG及びイベント回想モードはちゃんと備わってました。


◇ サウンド

 BGMはDirectSound(WAV)で計19曲。 更にエンディング用にボーカル入りの曲が2曲あるので計21曲というところでしょうか。 どの曲もなかなか雰囲気が出ていて良いと感じました。 エンド曲はキャラ別エンドとTureEndとで異なります。

 音声は主人公以外はフルボイス。 各声優さんの演義は結構レベルが高くて満足してます。
 BGMモードは無し。曲自体が良かっただけに勿体無いですね。 なお、初回版には主題歌2曲を収録した「イメージソングCD」が同梱されています。


◇ 感想まとめ

 このゲームをプレイして強く感じたのが各キャラとも非常によく立ってるなぁということでした。 全ての登場キャラそれぞれに様々な思惑や目的があり、その目的を達成するために各キャラとも行動している訳ですが、どのシナリオルートに入ってもその設定に無理を感じない…。 それどころか別のシナリオでは描かれなかった各キャラの側面が思わぬ形で描かれている場合もあって驚かされたこともありました。

 ただ、このゲームはあまり「キャラに萌える」ということは無いと思います。 各キャラのシナリオもヒロインと仲良くなるというものでは無く、そのキャラの思惑を知ることができる…というものなので恋愛的な要素を期待すると人間不信に陥るかもしれません。 なにより主人公自身にあまりその気がないようです(笑)。

 物語の展開も各キャラの思惑に主人公が介入し、影響を与えていくことである者は思惑と違った展開になり、またある者は目的を達成しやすい状況になって後に発生する事件(イベント)が異なっていき、様々なストーリー展開をみせてくれる構成はなかなかよかったです。 何気ないやり取りの中でも伏線やトリックなどがちりばめられていて「謎が解明されていく楽しみ」もありました。

 そんな訳で個人的には久しぶりに純粋な謎解き&マルチシナリオのADVとして楽しめましたけど不満点もいくつかありました。 その一つはもう少し“プレイヤー”がゲームに介入できる要素があっても良いかったのではないかと言う事。 全部主人公がまとめちゃいますから…。
 あとはシステム面ですが、ある程度物語が進んだ時点で場所移動などは省いて欲しかったです。 何処へ行くかという事が明確なのにわざわざ全体マップから移動場所を指定するのは無駄な作業だと思うし、盛り上がってるところに水を差される感じがしたもので(笑)。

 エロシーンは一日の終わりに「ご奉仕の時間」がやってくるので4人のメイドの中から一人を選んで奉仕してもらうことになります。 「フェラ」「日本座禅」「放尿」などのヒロインによって異なる5つの項目があり、して欲しい事を選択するのですが…各ヒロイン毎にカルマ値というのがあり、カルマを上回る項目は選択できないようになっています。 カルマ自体は同じヒロインを何度も呼ぶことで上昇していきます。
 肝心の中身は…少々期待外れかなという印象。 基本的にHシーン1回につきCG1枚ですし、その内容も実用可能とは思えませんでした。 声優さんの演義は良かったですけどね。

 雰囲気的にはエルフの『河原崎家の一族』にちょっと近い感じがしました。 この手のゲームが好きで純粋にシナリオを楽しみたい人にはおすすめできますが、キャラ萌えやHシーンに期待すると外す可能性があると思います。


◇ お気に入りキャラ

 主人公の幼なじみのメイドさん「蓮見 茜」ですね。 ただ先にも書いたように、このゲームはキャラに萌えるというよりも人間の欲望とはのドロドロしたものが多くて少々人間不信になりがちだったんですが…。


◇ 備考

 所要時間: 1プレイ約2〜2.5時間。コンプリートまで約11時間


私的満足度: ★★★★★ ★★☆☆☆

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