Rascal・改 − Game Impression
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魔王と踊れ! - Legend of the Lord of Lords -
発売日:2005.03.25 / catwalk
 1周目フィリアEndおよびBad補完、2週目ウィッカEndを目指してプレイ中。回想枠は残り 4つという状況での感想です。プレイ時間は1周目で25時間くらいでした。

 大陸中を震撼させていた「魔王アツィルト」が謎の失踪をとげてから千年の時が流れた。 温厚で気弱な鍛冶屋見習いである主人公「ビナー」はある晩に「ウィッカ」と名乗る女暗殺者と出会い、自分が魔王アツィルトの転生体であることを知らされる。 ウィッカは7つに分けられた魔王の力を完全に復活させるため主人公に残りの封印探しに出かけるようけしかけるのだった…というあらすじのファンタジーRPG。


 全10章構成で、各章ごとにADVパートとダンジョン探索パートがあり、ダンジョン最深部にいるボスクラスの敵を倒すと次の章へ…という流れを繰り返していきます。探索するダンジョンは章ごとに固定で自由に選べる訳ではありませんし、ダンジョン探索の途中で街へ戻ることも出来ません。個人的にはもう少し自由度を持たせて欲しかったものです。
 ヒロインは2人でダンジョン探索も常に同行。 エンディングはヒロイン個別の他にバッドエンド、それとハーレムエンドが存在するようです。

 まずこのゲームの核となるダンジョン探索と戦闘に関してですが、結論から書くと作り自体は悪くないのにバランス配分と動作速度の緩慢さがかなり足を引っ張ってる印象を受けました。

 移動は移動したい地点をマウスクリックすることでその地点まで自動で歩いていき、回復その他は右クリックからのメニューから行えるので、マウスオペレーションとしては悪くない。 ですが動きが全体的に遅め。 個別の操作としては耐えられない速度ではないのですが、長時間プレイするRPGの場合はその一つ一つの緩慢さが少しずつストレスとして蓄積されていきます。

 戦闘は敵/味方単位でのターン制のタクティカルバトル。個人的にはキャラの素早さ順に行動できるタイプの方が好きですが…まぁそれは置いておいて、何よりもまずバランス配分に難ありと感じました。
 このバランスとは敵の強さ調整だけではなく、戦術的に見ても使えるものと使えないものとの差が大きすぎるのです。 私のプレイした感覚だと中盤以降は通常攻撃があまり敵に当たらず、当たっても泣きたくなるくらい貧弱なダメージしか与えられなくて全く使い物になりませんでした。 反面、ウィッカの全体魔法が強すぎです。 魔法は必ず命中するし、物理攻撃に強い敵はいても魔法攻撃に強い敵はいないので、他の戦術を使うのが馬鹿らしくなり、戦闘に突入する度に魔法で一掃するという、殆ど“作業”と化してしまいました。
 加えて敵キャラの攻撃が単調な上に貧弱すぎです。普通に育てていれば中盤以降はダメージゼロ。偶にクリティカルヒットを食らったりステータス異常になりますが、殺るか殺られるかと言った緊迫感は感じられず、次第に退屈になってきます。 こんな状態で更に敵のターンが先攻になった場合は、のっそりと動く敵のダメージゼロ攻撃が一順するまで黙って見てるしかないと言う「無駄な時間」を送ることになり、かなりのストレスでした。
 こうなってくると戦闘そのものに楽しさを感じるはずも無く、単なるテンポを悪くする障害物と化すのですけど…困ったことにこのゲーム、ダンジョンマップがやたら広大で必然的に障害物の数も多く配置されていて戦闘回避も実質不可能に近く、正直言って「嫌がらせか?」とすら感じます。

 また、戦闘後のご褒美要素が不足しているのも難点。 レベルアップはありますけど、目に見える変化はHPやMPの最大値くらいで強くなったという実感が薄いのです。 スキルは章が終わるまで覚えられないし、アイテムの数が少ない上に大部分は使い道がない or 装備枠に余裕がない事が多々あるので敵がDropするアイテムにも期待できない…等々。

 RPGって戦闘の作業感をいかに取り除き、いかに戦闘の楽しみを提示できるかというのはゲームの評価を左右するほど重要な事だと思うんですけど、そういった配慮がほとんど見られないのが致命的に思えます。 アイテム数を増やしておまけモードで取得アイテムの一覧を表示したりとか、レベルアップ時のステータスをポイント振り分け制にしてプレイヤー毎に個性を持たせたりとか、いくらでもやりようはあると思うんですけどねぇ。 とにもかくにも費やした時間に見合うだけの達成感を得られないのが辛いところです。

 ダンジョンマップが広大というのは先にも書きましたけど、終盤の章になるとホントにただ広いだけでプレイヤーを唸らせるようなトラップがある訳でも無いし、探索中のイベントがほとんど発生しない…発生するのはそれこそ最後のボス戦くらいで、それまでは黙々と作業を繰り返すだけなのも苦痛でした。
 イベント自体もRPGの割に演出が地味。 文章的な盛り上がり不足もありますが、せっかくユニットキャラがあるのだから、せめて動きくらいは視覚的に表現して欲しかったですよ。 例えば壁に向かって吹き飛ばされる場合は該当キャラのユニットが吹っ飛んでいくような感じの演出くらいは欲しかった…この手の演出は10年前にだって取り入れてたくらいの最低限の演出方法と思うんですけどね。

 物語は…主人公(魔王)たちが、その力を取り戻す過程すらも黒幕の手のひらの上で踊らされてるという…まぁタイトル通りな感じで悪くはないけどもう少し捻って欲しかった。 特に仮面の騎士や黒幕の正体は声のせいで瞬時にバレるので意外性や盛り上がりに欠ける印象を受けました。

 構成的にも章の終わりにヒロインのどちらかを選んでHというのは再プレイが容易なADVならともかく、RPGでは避けて欲しかったところ。 主人公は魔王という設定なんだから、ケチケチしないで二人同時とかヒロインどちらともHするようにして物語も同時進行させて終盤で分岐…という構成のほうが有難かったです。
 また魔王アツィルトとビナーの人格や考え方の違いからくる苦悩などの描写がほとんどなく、どちらもその場の状況に流されていってるだけって感じなので、主人公の心理描写や二つの人格に接するヒロイン達の戸惑いなどをもうちょっとしっかり描いて欲しかったかな。

 更にサブキャラ達の関わりが物語の本筋とは関係ないオマケ的な扱いなのも不満。 ピルミアやオーラなどは準ヒロインと言っても良いくらいなのに終盤で混沌とした状況下でも全く出てこないのが不憫…というかもっと話しに加わらせてもっとエロシーンを描いて欲しかった。

 で、そのエロシーンはメインヒロイン一人あたり8回ほど発生。 ただシチュエーションが毎回同じで、どうにも物語の流れ的に取って付けたような印象を受けます。 なんとなく義務感でHしてるような感じがしますし…。
 尺はそれなりにあるし、声優さんの演技も悪くない。 CGも個人的には好みの部類なのでシーン内容に不満はないのですけど、 例えばダンジョン探索中にどちらかのヒロインと落とし穴に落ちて、もう片方のヒロインが救助に来るまでは二人っきりだからとか何とかでHするような流れも欲しかったなぁと思う訳です。 (例えが具体的なのは気にしない方向で…。) 要するにシチュエーション的な盛り上がりに気を使って欲しかったなぁ…と。
 ファンタジーRPGならではと言ったシーンは触手シーンが1回だけ。 この手の特殊シチュに期待すると肩透かしを食らう可能性はあります。

 発売前の期待が大きかっただけに色々と不満を書いてしまいましたが、6800円という値段設定をみるとメーカーにとっては習作なのかも知れません(…宣伝文句は誇張ぎみですが)。 最初にも書いた通り、操作感などは割と良かったし今回の開発で得た経験を糧に次回以降では良質RPGを作ってくれることを期待します。


私的満足度: ★★★★★ ☆☆☆☆☆

Copyright(c) 2007 SHEO