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もしも明日が晴れならば
発売日:2006.02.24 / ぱれっと
 全CGと回想を埋めてコンプ。 所要時間は1stプレイで9時間くらい掛かった気がします。 2nd以降もスキップ速度が異様に遅いのと個別ルートのボリュームもそれなりにあってコンプまでは20時間以上は掛かったかも。

 夏が始まろうとしてる頃、主人公「鳩羽 一樹」は幼い頃から家族同然に育ってきた野乃崎明穂に告白し恋人同士となった。 しかしその数日後に明穂は病でこの世を去ってしまう。 やがて夏も終わろうという頃、恋人の突然の死から立ち直りかけた主人公の前に明穂の幽霊が現れる…というあらすじ。


 全6章で構成された選択肢タイプのADV。 1〜5章までが共通ルートで最終章のみがヒロイン個別ルートという構成。 ヒロインは4人でエンディングはBadエンドを含めて5種類。 共通ルートでのフラグによって最終章に誰のルートに入るかが決定しますが誰のフラグも立てられなかった場合は5章で終了。 お目当てのヒロインを決めてプレイする分には難易度は低めです。

 共通ルートのうち1〜4章まではメインに描かれるヒロインが異なるお当番制で、具体的には1章は明穂、2章は千早、3章はつばさ、4章は珠美とヒロイン毎に掘り下げたストーリー展開となっていました。 ちなみに5章はヒロイン全員とのコミュニケーションです(笑)。


 シナリオ展開は…まぁメインヒロインが幽霊ということから予想できる通り、かけがえの無い愛しい人を失った主人公が悲しみを乗り越えて未来を見据えるようになる成長物語。 勿論それだけでは無く、例えば妹のつばさは姉に対する劣等感、千早は取り返しの付かない罪の意識など、ヒロイン毎に様々な枷となる要素があり、それらが主人公や明穂に対する想いと絡み合って盛り上げるシナリオ展開がなかなか良い感じ。 特に主人公やヒロイン達が抱えていた想いに対して決着を付けるような見せ場はBGMとの相乗効果もあってかなり感動的でした。

 また、ストーリー展開を盛り上げる要素として各ヒロイン達の心理描写の秀逸さも見逃せません。 偶にヒロイン視点にザッピングして主人公や別ヒロイン達に対する想いが描かれるのですが、プレイヤーに理解し易い描写な上に挿入タイミングも実にお見事。
 そしてそれらの心理描写を踏まえた上でのキャラ同士のやり取り…とりわけヒロイン同士の修羅場がなかなか良い感じでした。 特につばさは十年越しの想いの強さが良く伝わり、姉や他ヒロインに対する嫉妬で情緒不安定になったりケジメを付けようとする様は結構やるせない気分にさせてくれて満足できました。

 難点は心理描写が良すぎて先の展開が容易に読めてしまう事でしょうか(苦笑)。 いやこれは恐らく伏線の張り方が甘い…と言うか、あからさまにプレイヤーに気付くように張られてる感じなのが一番の原因なのですけどね。
 先の展開が読めてしまうというだけなら大してマイナスにはなりませんが、主人公が超が付くくらい鈍感なのでプレイヤーには理解できてることを何時までも恍けられるのがイライラしてきます。

 上と関連しますが主に主人公が原因となるストーリーテンポの悪さも気になりました。 主人公は基本的に優柔不断で何かにつけて「それはそうだけど…」と結論をズルズルと先伸ばしにすることが多いのですよ。 かと思えば異様に行動的になることもあるのですけど、その場合は考えなしに衝動的に行動して、ことごとく後手に回る…という展開ばかりで見てるコッチはもどかしい気分になります。 「何も出来ないくせに首だけは突っ込みたがる」とは明穂のセリフですが全くもってその通りで、当の主人公もそれを理解して反省するものの、後の行動に反省が全く活かされていないのは流石に呆れました。

 ただ主人公はヘタレというよりは不器用なんですよね。 もちろん主人公だけでなくヒロイン達も皆不器用なところがあって、性格や環境や人生経験不足からくる不器用なキャラ達が不器用なりに精一杯頑張る様がこのゲームの見所でもあると思います。 そうと解っていてもプレイ中に感じるもどかしさは如何ともし難いものがあるのですけど(苦笑)。 まぁこれはそれだけ作中のキャラ達に感情移入できたからこそだと前向きに思うようにします。


 エロシーンは1人あたり3回発生。 うち1回は未遂とか自慰といった挿入無しのシーンなので本番ありは実質2回と言ったところ。 ちなみに全員処女です。
 シーン自体は割りと頑張ってる印象は受けました。 テキスト描写としてのエロ度は低めですが、声優さんに喘がせることで尺をそれなりに補った感じ。 主人公が着衣H好きなのでほとんどのシーンが半脱ぎ。 シチュエーション的には放課後の暗くなってからの学園内が多かった印象を受けます。
 個人的には実用性は無いかなと感じましたが、くすくす氏のキャラ絵と声優さんの嬌声があればイける人なら無問題かと。


 システムまわりは全体的に重く感じます。 特にメッセージスキップ速度が鈍亀で、2ndプレイでもかなりの時間を要する破目になってしまったし、スキップ解除のキーイベントもなかなか拾ってくれないのが個人的には結構なマイナス要因。
 CG枚数はちと少なめ。各キャラごとにもう2〜3枚は欲しかったところ。 ただ立ち絵のパターンはかなり豊富ですね。 ぱれっとらしく後ろ姿もありましたし、音符が浮いたり、汗が飛んだり、大粒の漫画汗がタラーと流れたりと感情演出としては良い感じでした。
 BGMもかなり秀逸。シーンを盛り上げる挿入歌も良い感じで流石です。 予約特典がサントラCDということもあって、予約しておいて良かったと心底思いました。


 結論としては「不器用な若者達の成長物語」としてなかなか満足。 システム周りが重かったりテンポが悪かったりで多少のストレスは感じましたが、終わってみればそれなりに余韻の残る良作だったと思います。


以下、キャラ別雑感(ネタバレあり)


野乃崎 明穂
 幼い頃に両親が他界したため、主人公の家に居候していて周囲から夫婦同然に思われていた恋人。 ゲーム開始時点で既に死んでいて主人公の前に姿を現すとこから始まる。 重い設定ながら明穂自身はかなり明るい性格で、主人公の性格を熟知してるが故のやり取りは幼なじみという立場が活かされていると同時に主人公にとっても掛け替えの無い存在であることを理解できて良い感じでした。 「カズちゃんは私の尻に敷かれてるのがお似合いなんだからっ」と騎乗位でHする展開とか結構好きです(笑)。
 シナリオ展開は二人で過ごす時間が心地よすぎて未練が募ってしまう…という流れ。 ラストは他のゲームでも何度か類似した展開があったので正直「またか」という感じでした(苦笑)。

野乃崎 つばさ
 明穂の妹。姉を目標に頑張ってるが、努力の報われない不遇なヒロイン。 明穂に対する劣等感や嫉妬などドロドロした心理描写がかなり良い感じでした。 委員長は刺されるかと思いましたが、そういう展開は無かったですね(笑)。 萌えとは異なりますが、ヒロインの中では一番気に入ってます。
 シナリオ展開は姉に対する劣等感と主人公を寝取ってしまったという罪悪感に苛まれる流れ。 演劇部という設定がこういう形で活かされるとは少々驚かされました。

湊川 珠美
 退魔師の巫女さん。 他人を避けているがつばさとは親友で、つばさが懐いてる主人公の事を嫌っている。 属性的にはツンデレで主人公と仲良くなってからの言動がなかなか可愛いですね。 4章での実との別れのシーンはちょっとキタ。
 シナリオ展開は他人を避けてしまうほど別離を怖がる珠美が主人公達によって一度は打ち解けるものの、やっぱり辛い別離がやってくる…という流れ。 つばさとのケジメ、明穂との別離と個人的には見所が多くてお気に入り。 ただ最後のメールはちと都合よすぎな気はしますね。

千早
 合歓の木に封印されていた齢500の厄病神。 主人公と明穂の告白シーンを見ていて明穂に嫉妬して呪い殺してしまった張本人。 明穂が千早を許す展開は何度見ても不自然さを感じてしまいます。一体どんな聖人君子だよ…。 明穂は珠美ルートでは嫉妬してたけど、千早に関しては呪い殺された上に寝取られたんだから感情的に嫉妬どころでは無いと思うんですけどね。
 シナリオ展開は千早の贖罪の過程で主人公が千早の過去を覗き見たら、自身が千早の初恋の相手の生まれ変わりだった…という流れ。 明穂にあの世から強制送還される流れはやっぱり都合良過ぎだし、転生物としてもあと一押し欲しかった気がします。 エンドもあの後の展開が知りたい…というか都合の良い展開なら千早が人間化するくらいして欲しい。


お気に入りキャラは
 つばさ > 明穂 > 珠美 > 千早

 うーん、まきいづみキャラや巫女キャラが下位になるとは自分自身でちょっと意外。 委員長はひたすら当て馬にされて不遇でしたね。つばさルートなんかでは特に。 なんとなく最初からファンディスク要員として考えられてそうな感じ。


私的満足度: ★★★★★ ★★★☆☆

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