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Silvery White 〜君と出逢った理由〜
発売日:2006.09.29 / 桜月
 全エンドを補完してコンプ。所要時間は1stプレイ約5〜6時間。 コンプまでは20時間弱と言ったところでした。

 他人には無い特異な力を持つ主人公「柴原 慎也」。 彼はその力ゆえに周囲から孤立していたが、唯一主人公の力に理解を示してくれた中学時代の恩師の薦めで とある離島の学園に転校することとなった。 そこには主人公と同じような力を持ち、どこか懐かしさを感じる人達との出会いがあったが、同時に怪しげな人物との出会いや人の仕業とは思えない奇妙な事件が発生し、次第に巻き込まれていく事になる…というあらすじ。


 前世・ファンタジー設定を取り入れた伝奇ADV。 ヒロインは5人いますが、実質的には3人と2人のルートに分けられます。 例えば3人のルートに入った場合は他の2人は全く登場しないのでちょっと勿体無い気がしました。 エンディング総数は10種類。選択肢は特に捻ったものは無いので難易度は低め。


 主要登場人物のほとんどが前世で何らかの関わりがある…という転生物で、個人的にはこの前世となる世界の“設定”には惹かれる物がありました。 登場キャラのほとんどは日本人として描かれてるけど、前世として語られる世界は誰でも名前くらいは知ってる某幻の大陸と文明が舞台となっており、現在に伝わる伝説やオーパーツなどを元に創り出されたライターさん説(御子石説)を理解していくのが楽しい(笑)。 『Lost Passage』の観月シナリオで記紀神話や卑弥呼の諸説を取り入れた設定を堪能させて貰った身としては、やっぱり同ライターさんのシナリオにはこういう独自説が無いと物足りなく感じますよ(笑)。

 ただ、その肝心の独自説を物語展開に絡めて説明していく描写が非常に解り難いのが難点。 前世での描写は夢とか覚醒後の回想といった形で描かれますが、何の予備知識も前置きも無い状態から聞いたこともない地名や人物名をポンポン出されても訳わかりません。 前世では10の国がそれぞれ争ったり同盟を結んだりして、それが現在の人物達の立ち位置にも影響を与えているのですけど、前世での動乱の世界は逐一メモを取っていかないと理解不能です。 一乃ルートだけは大陸地図と勢力図を表示してくれますけど、他ルートでもこういった気配りが欲しかったところ。

 また主人公を含めた各キャラの心理描写や各種演出も弱く感じます。 前者は「前世の自分はああだけど今の自分はこうだ」という主張に対してプレイヤーが納得できるだけの描写や説明が不足していて折角の世界観や登場キャラが薄っぺらく感じるのが凄く勿体無かった。 それに特定ルートでしか登場しない敵は他ルートでは何やってるのかが気になって仕方ない(苦笑)。 ただ、メインじゃないもう2人(詩亞&牧歩)のルートの方は牧歩が主人公に惹かれていく様子をヒロイン視点で描いていたのは悪くなかったですね。 他のルートでもこのくらいの描写は欲しかったところです。
 演出面では特に戦闘描写の味気なさがもう少し何とかならなかったのかと感じずにはいられません。 淡々としたテキストと剣戟のSEがだらだらと続いた後に突然決着が付いてしまうという盛り上がりの無さは致命的。 テキスト的には必殺の一撃を打ち込む間際の手に汗握る描写は欲しかったでよ。 画面効果も敵の数が増えたのに画面上は変化なかったりと寂しいのでスタッフの方々はとりあえず『AYAKASHI』あたりをプレイして猛省してください。


 エロシーンは1人あたり1〜4回とヒロイン毎に差があります。 メイン側の3人なんかは何となく「エロシーン入れ忘れてた」と終盤に無理矢理挿入したかのような展開に感じられてしょんぼりですよ。 回想枠では複数あっても展開的には一回で、どのコスプレでHするかで別枠登録される仕様。 反面、もう2人(詩亞&牧歩)のルートはヒロイン確定後にコンスタントに発生し、特に牧歩ルートでは詩亞&牧歩との3Pシーンまであって大変よろしゅうございました。

 シチュエーションは基本的に和姦ですが、牧歩ルートでは主人公を罵りつつ無理矢理犯される展開もありました。 いやホント牧歩は優遇されてるなぁ(笑)。 先にも書いたようにコスプレ要素も多めです。 主人公曰く「俺がコスプレ好きだからだ」ですが、コスプレ好きなのは主人公じゃなくライターさんだろと突っ込みたくなった。 ちなみにH可能なキャラは全員初物。 特殊系は3Pの他は詩亞にアナルがあったくらい。

 テキスト描写によるエロさはほとんどありませんが、尺は比較的長めで個人的には実用性も高めでした。 と言うのも声優さんによる嬌声やチュパ音が大部分を占めているから。 数クリック連続でひたすら嬌声やチュパ音が再生され、特にチュパ音は「じゅるるるるるるるるる」といくつ“る”を使ってるんだ?と突っ込みたくなるくらい“る”だらけのテキストでしたが、その辺は流石に実績ある声優さん揃いなので上手く演じてくれてます。 詩亞&牧歩のWフェラでは音声も二人同時再生してくれる箇所があったのもポイント高し。 ただ二人共同じテキストの擬音を演じてるので、そこはかとなく違和感もありましたけど(苦笑)。


 システムまわりは私の環境では特に問題はありませんでしたけど修正ファイルが出ているようです。 既読テキストは色違いで表示してくれる親切設定ですが、スキップ実行中に頻繁にHDをカリカリ鳴らしてくれるのがちょっと怖かった(メモリ不足?)。
 CGはちょっと少なめに感じますね。 CGモードの枠は多いけど差分CGも別枠登録ですし。 BGMは私的には悪くなかったが「慕情」という曲を聴いて南極物語を思い出したのは俺だけでいい。 主題歌はOP・EDともに気に入ってます。 榊原ゆいさんは萌え系ポップス調の曲が多いけど、このED曲のようなバラード調の曲の方が得意なのかな…という印象を受けました。


 まとめとしてはライターさんが創造した前世の世界観は面白かったが、その設定をシナリオ展開や演出として活かしきれなかった惜作という印象です。 薀蓄絡みも風水の話で少しあるだけで物足りない…薀蓄ウザイとか言われて押さえちゃったんでしょうかね。 個人的に一番面白かったのがエリッサエンド後のおまけで語られる世界観講座だったりするので、こういうのを暴走ぎみでもいいからもっと本編に絡めて欲しかったですよ。


ヒロイン別雑感はクリア順に少し(ネタバレあり)。


エリッサ・イシュチェル
 主人公の転校初日に剣を突きつけてきた謎の少女。 このヒロイン…かなり重要なキャラかと思ってたんですが、前世での関わり的には那由里や一乃より弱いし彼女自身のルート以外ではほとんど何もしてないしで、ぶっちゃけ「いらない子」じゃね?
 個別ルートではミステリアスな彼女が主人公に気を許し惹かれていくのですが、このあたりの描写が不足していて不自然に感じられます。 いきなりエロシーンで♪記号が乱れ飛ぶほどラブラブになっても違和感しか感じませんよ(苦笑)。 前世世界でも何故アトラスやラスゴル同盟に与したのかの理由がイマイチ解らんし、主人公と敵対して戦った描写も無いし、ラスゴルの真意に気付いたときの絶望感とか悔恨のようなものも描かれてないのでエリッサの言動に全く感情移入できないのがマイナスでした。 ラストバトルも「ここは任せろお前達は先に行け」的な流れがチープに感じられてちょっと苦笑ものでしたし、ラスゴルが怪物化しても触手凌辱は無しという体たらく。 またクングールやサーシアと言った那由里・一乃ルートで語られるキャラとの因縁もほとんど放置されてるので、エリッサルートは他二人のエンド後に入るような規制を設けるべきだったと思います。

折山 那由里
 神社の巫女さん。 前世の恋人エスカテリィナの転生体で転校初日から気になる存在として描かれる…のに詩亞&牧歩ルートではほとんど絡んでこなくなるのが腑に落ちません。
 個別ルートは某大陸崩壊後、日本の与那国島(?)での因縁がメインとなる展開。 主人公達が不老不死になった描写とか大陸崩壊前のクングールとの因縁描写が無いのでやっぱりイマイチ感情移入できません。 十二聖天絡みの話もなければ十二聖天の主であるアティナこと静流先生も全く絡んでこないのはどういう事ですか。 それに主人公の治癒能力がどの程度かは知りませんが試されもせず見殺しにされたリーダーさんカワイソス。

家氏 一乃
 主人公の中学時代の知り合いで主人公と共に静流先生宅に居候しているお嬢様。 同居という美味しいシチュエーションがほとんど活かされていないのが勿体無いですねぇ。 他ルートでも色々と絡めることも出来たでしょうに。
 個別ルートでは雷帝フィンフィールとしての前世での描写が最もしっかり描かれていて感情移入度も随一でした。 サーシアとの出会いによって成長し、その後ファビウスを見出して惹かれていき、反乱軍として活躍するも暗殺される…という一連の流れが勢力図つきでしっかりと描かれて非常に解りやすかったし面白かった。 何故に他ルートでコレをやらんのかと問い質したい。 でも戦闘シーンはやっぱり盛り上がりに欠けますねぇ…つか不死者ディヌースと風のバルダグクって立ち絵同じなのかよ(笑)。 現世でのバトルからエンドにかけての流れは那由里ルートでも感じたけど中途半端というか消化不良というかすっきりしません。 あとラスゴルはどこ行ったんでしょうか?

蒼井 詩亞
 学園内でメイド喫茶を開いてるメイドさん…つか、いくら原画が村上水軍氏とはいえ無理にメイド入れんでも…と感じました。 原画やる条件が「メイドさん出せ」だったんでしょうか(笑)。 正体は人間ではなく“はじまりの青”と呼ばれる精霊さん。
 個別ルートは前世の罪で力を失ったアトラスが主人公を含めた転生キャラと詩亞の力を吸収しようとする流れ。 那由里や一乃は完全にヤラレ役、匠人に関しては立ち絵すら登場しません。 とりあえずバルダグクの変貌っぷりは吹いた。 前世ではアトラスの描写が不足しているのが不満ですね。 戦闘描写は相変わらずイマイチですけどラストバトルからエピローグにかけての流れは先にプレイした3人に比べるとかなり良い感じだったと思います。 特に成長した牧歩や望ちゃんのように他キャラのフォローもしっかりしてあるのが好印象。

高村 牧歩
 明るく元気な学園の後輩。 前世とは全く関わりが無く、その性格を詩亞に気に入られた為に一連の事件に巻き込まれていくという超被害者。 牧歩視点での主人公を意識する様子とかそれを家族にからかわれる様子とか非常に良い味を出しており、キャラ的萌え度も高め。 それだけにあの展開はプレイヤーの私もちょっと凹んだ。
 個別ルートは詩亞と同様にアトラスとバルダグクの転生体が襲ってくる流れですが、展開がちょっと異なりキツめです。 その分エロシーンでは色々と見せ場があったので個人的には悪くなかった。 那由里や一乃は相変わらず見せ場無し。 そんな敵に向かってラストバトルでは鍬で戦う牧歩がちょっと浮いてた気がします。 エンドは詩亞ルートに比べるとしんみり系ですね。 あと個人的にはおまけシナリオとして見れる望ちゃんと楓花さんの来世話「琴梨ちゃんと室堂くん」の話がなんかジーンとくるものがあって良かった。 でも楓花さん…美形じゃなくて残念でしたね。


お気に入り順は
 牧歩 > 詩亞 > 一乃 > 那由里 > エリッサ

思いっきりプレイの逆順だな…。つか静流先生はマジで何の見せ場もないのか。
先生で一番印象に残ったのっておまけの世界観講座の中で“12000年”を「いちおくにせんねん」と発言していて私に茶を吹かせた事くらいですよ(笑)。


私的満足度: ★★★★★ ★☆☆☆☆

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