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加奈 〜いもうと〜
発売日:1999.06.25 / D.O.

◇ あらすじ

 藤堂加奈…慢性腎不全のため物心ついた時から入退院を繰り返してる妹。 とても頼りなく儚げで、幼い頃からずっと守ってきた唯ひとりの妹。
 加奈が17歳になる春、ようやく念願の高校入学が決まった。 今まで色々と苦労してきた加奈にようやく運が向いてきたのだ。 これから何もかもが良い方向へ向かっていきそうな、そんな気がしていた…。


◇ ゲーム概要

 主人公と加奈の物語を綴ったノベルタイプのゲーム。 途中に出る選択肢はダイレクトにシナリオ分岐するものではなく、いくつかのポイントを積み重ねて分岐していくような感じでした。 例えば難しい本を貸したり図書館へ連れていったりすると知的ルートへ進む…といった感じですね。 ただ物語の終盤ではダイレクトにエンディングが決定されるものもあり、全部で6種類のエンディングが用意されています。


◇ システム

 画面はフルスクリーンとウインドウの二通り。 メッセージは表示速度が何段階かに切り替えられる他、オートプレイ(クリックしなくても文章が進んでいく)機能があって結構便利かも。 読み飛ばしてもメッセージのバックログ閲覧もあるので安心です。 でも普通のスキップはやや使い難い感じがしました。

 セーブは全部で30ヶ所まで保存可能で、物語の進行状況まで表示してくれるので有り難いです。 セーブやロードはプレー中にいつでもできました。


◇ グラフィック

 原画は「米倉けんご」さん。 原画はともかく塗りのほうが少々独特の雰囲気を醸し出しており、購入当初はちょっと抵抗がありましたけどプレイしてるうちに「この絵じゃないとだめだ」と思えるようになりました(苦笑)。 物語の雰囲気が合っていましたし、枚数も比較的多くて満足してます。
 ちなみにオープニングはDirectX Mediaのムービーになってました。 おまけでCGモード(達成率表示あり)とエンディング回想モードがあります。


◇ サウンド

 CD-DA再生の全16曲。 これがまた、めちゃくちゃ雰囲気出てて最高でした。 ボーカル曲がOPの「白い季節」、EDの「あなたへ」、そして挿入歌の「Believe 〜つぶらな瞳〜」と3曲あるのですが、どれも皆素晴らしく雰囲気が出ていて演出としてこれ以上無い出来だと思います。 もちろんBGMもなかなか良さげ。 おまけで音楽観賞モードがあります。


◇ 感想まとめ

 人生を生きるということ、死ぬということ、かけがえのない存在を守るということ、強い人間とは?、弱い人間とは?、そして幸せとは? ……この『加奈』という物語から色々な事を考えさせられました。 なんか訳わからない事を書いちゃって我ながら痛々しいのですが、演技臭いTVドラマなんぞより余程私の心に響いたのは事実です。

 「加奈」を守るべき存在として意識しはじめた幼年期から中学〜現在とストーリの組み立て方が素晴らしく、また文章も大変わかり易く、変に捻ったシナリオじゃないので余計に感情移入しまくりでした。
 ただシナリオがかなり重めで“死”というテーマを真っ正面から描いているため、その手の話が苦手な人はちょっと引くかもしれませんね。 実際私も今までにレビューを書いたゲームの中にも「死」を扱った内容を含む物がいくつかあって、とあるゲームではそれが安易に使われていた為にこの手の話は苦手だったのですが、この「加奈」のように真剣に描いたものだったら恐らくそんな事は無かったでしょうね。

 不満点としては「夕美」がとあるルート(といっても複数だが)で菩薩のような心の広さを見せていたのがちょっと嘘臭かったって所でしょうか。 まあほとんど重箱の隅を突ついてるような物ですが…。
 私にとってはこれからのノベルゲーを語る上でリーフの『痕』と共に外せない1本になる気がします。


私的満足度: ★★★★★ ★★★★☆

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