Rascal・改 − Game Impression
[メニュー枠OFF]

カナン 〜約束の地〜
発売日:1997.04.16 / フォアナイン

◇ あらすじ

 はるかな昔、地上で栄えていた人間達は驚異のウイルス「クラブHT1」によってその個体数が激減し、さらにウイルスや劇的に変化した自然環境から逃れる為に都市をドーム状にして暮らしていた。 そして更に人間達の中から「変異体」と呼ばれるウイルスや自然環境に耐えられる半獣人たちが生まれた事によって人間達はドーム都市すら追われ、変異体の恐怖に怯えながら地下都市や地下シェルターで細々と暮らすようになっていた。
 そんな人間達の住むシェルターの一つ、ネオアリストシェルターは突然謎の病原菌が蔓延し、そこで生まれ育った少年「カイト」を残して全滅してしまう。 一人になってしまったカイトは人間達の間で噂になっていた人間だけの理想卿「カナン」を探す旅に出る決心をする。
 同じ頃、変異体の冒険家「ウルフィ」は先の冒険で知り合った仲間達と一緒に既に伝説となった「ニンゲン」を探して旅を続けていた。 そして偶然発見した人間の物と思われる滅びたシェルター内で人間の理想卿「カナン」の存在を知る事になる。

 人間と変異体…互いに忌み嫌っている二つの種族が出会った時、どのような物語が始まるのだろうか? はたしてカナンは実在するのか? そして全ての真実を知った時、人間であるカイト、変異体であるウルフィはそれぞれ何を思うのだろうか。


◇ ゲーム概要

 この『カナン』はGAOGAOシリーズの完結編となっています。 GAOGAOシリーズは“人間ではない女の子”をテーマにした『ラジカルシークエンス』『パンドラの森』『ワイルドフォース』の3作で、『カナン』は『ワイルドフォース』のエンディングから一年後の物語になります。 主人公の一人「ウルフィ」は前作の主人公でもありますので、3作全部とまではいかなくても、『ワイルドフォース』はプレイしておいた方がより一層ストーリーに引き込まれると思います。

 このゲームは随所で主人公二人の視点が交互に切り替わる「デュアルサイトシステム」を使っています。 シーズウェアのマルチサイトのようなものですが、プレイヤーの意志で視点を変更出来ないなどの違いがあります。 物語が進むともう一人の主人公側に切り替わり、同じ時刻の二人の主人公の行動がわかりやすい作りになっています。 その他はオーソドックスなコマンド選択型のADVで「見る」「話す」と言ったコマンドを選択していく事により進行します。 選択内容によってはエロシーンが飛ばされたりします。


◇ システム

 セーブは7ヶ所に登録可能で何時でもセーブ/ロードが出来ます。 メッセージスキップ等はありませんでした。 おまけメニューとして「わくわくフォアナイン」というのがあり、ここの「プロローグ」を見ると前作までのシリーズの簡単なあらましを見る事が出来ますので、前作までが未プレーの方は先に見ておく方がいいと思います。 他にはCGモード、音楽モード、回想モードがありますが、CGモードはエロシーンのCGしか表示出来ないのがちょっと不満でした。


◇ グラフィック

 メイン原画はワイルドフォースも担当された「輪月伽吉巳」さんと、もう一人「きゃろらいんようこ」さん。 流石にワイルドフォースに比べるとかなり綺麗ですね。 しかし800ラインのスクロールCGが今回1枚も入って無かったのはちょっと残念でした。 このシリーズの売りの一つ、お馴染みのフェイスウインドウも健在です。


◇ サウンド

 FM音源かMIDIのどちらかが選択出来ます。 思い起こせば『パンドラの森』では音源認識せず、『ワイルドフォース』ではMIDI認識せずで悔しい思いをしましたが、ようやく念願のMIDIが再生可能となりました。 「オープニング」などノリが良い曲が多くて非常に良かったです。


◇ 感想まとめ

 傑作です。私がこのゲームをプレイしたのは発売してから1年半経ってからなのですが「これほどのゲームがまだあったのか」という感じでした。

 まず前作までに比べて操作性が良くなってますね。 無駄な場所移動やコマンド総当たりを駆使して調べたりする必要が一切無くなっているのが有り難かったです。 悪く言えばゲーム性が無いとも言えるのですが、この壮大なスケールのゲームではその方が良いと個人的に思います。

 話のテンポも非常に良いです。 デュアルサイトと言う事で2人の主人公の視点から見た物語が交互に繰り広げられていくのかと思いきや、同じ主人公の話が連続して続いたり、「この後どうなるんだ?」というとこで別の主人公に切り替わったりしてプレイヤーを良い感じに煽るのが上手いと思います。
 話の内容も意表をつかれたり、意外な展開に戸惑ったり、キャラ達のギャグで笑ったり、 そうかと思えばシリアスな展開にホロリときたりと終始ドキドキしっぱなしで、一度はじめたらもう止められません。眠れません(笑)。 キャラも個性がよく出ていて良かったです。

 あえて不満点を挙げるとすれば、まずは必要ないと感じる所で入るエロシーンでしょうか…。 エロゲなんだからエロが多いのは本来歓迎すべき事なのですけど、このゲームの場合はもうちょっとTPOをわきまえろと言いたくなるくらい不自然な導入なんですよね。 「おまえら、そんな事してる場合か」て思ったり、「あんな事あった後によくそんな気になるな…」と呆れたり。 まぁ殆んどのシーンは選択肢によって飛ばすことが出来るんですが、やっぱり普通はあれば見てしまうもので…(苦笑)。

 それとちょっと登場人物が多すぎる気がしました。 パッケージには25人とありますが、その他にも名前だけ出てるキャラなんかが居て人物関係図を作らないとイマイチ把握しきれませんでした。 いや、私が物覚え悪いだけだし、このゲームの場合は些細な事なんですけどね。

 あとはこのゲームを楽しむ為には少なくとも前作のワイルドフォースをプレイしておく事が条件になると思います。 前作でも登場したキャラが10人程出てきますし、その方がより物語を深く楽しめると思います。


私的満足度: ★★★★★ ★★★★☆

Copyright(c) 2007 SHEO