遥かに仰ぎ、麗しの |
発売日:2006.11.24 / PULLTOP |
全CGを見てコンプ。
所要時間は1'stプレイ約8時間、コンプまでは35時間は超えていたと思います。
予想していたより遥かにボリュームがあって少々驚きました。
教員免許を取得したものの、就職先が決まっていなかった主人公「滝沢司」の元に名門お嬢様学院である「凰華女学院」から教職の誘いが来る。
そこは確かに名家の令嬢達が過ごす凰華女学院ではあったが、周囲に民家が一軒もない半島に“分校”として建設された陸の孤島だった。
はたして主人公はここでどんな教師生活を送る事になるのだろうか…というあらすじ。
13話前後で構成された選択肢分岐タイプのオーソドックスなADV。
攻略可能なヒロインは6人。
全員のエンドを見た後にエピソードが追加されます。
最初の選択肢でルートが半分に絞られるなど選択肢の数は少なく難易度も低め。
この作品の舞台である凰華女学院分校は本校から移籍してきた者と最初から分校に在籍している者との二種類の学生がいて、ルート自体も大別すると本校ルートと分校ルートに分けられます。
この二つのルートはサブキャラの顔ぶれも異なってくるのですが、作中の雰囲気や主人公の言動も「ホントに同じ舞台や人物なのか?」と疑問に感じるほど異なっていて少々戸惑いましたよ。
私が最初にプレイしたのは本校ルートなのですが、主人公が教師という立場の学園恋愛物としては珠玉の出来でした。
主人公は権力に媚びず、且つ新任教師という自身の立場を弁えつつもしっかりとした信念と誠意を持って他人と接し、状況に対する判断力も行動力も高くて正直惚れた(笑)。
本校系のヒロインは他人とのコミュニケーションに問題がある娘ばかりなんですけど、それが良くも悪くも上記のような主人公に感化されていき、やがて絶大な信頼を寄せるようになる過程が非常に良く描かれていたと思います。
偶にヒロイン視点での心理描写が挿入されることもあり、主人公とヒロインの双方に感情移入しながら微笑ましく展開していく物語は居心地の良さもあって凄く癒されました。
やがて信頼から親愛に変化する際の心理描写もヒロインと主人公それぞれが抱える問題に添ったイベントの中で上手く描かれていたと思います。
ただ、話としては主人公の抱える問題を乗り越えてたところで終わってしまう為に少々物足りなさも感じるんですよ。
各エンド後のエピローグでは「身分的な障害をこうやって乗り越えました(または乗り越えていきます)」的な説明がさくっと語られますけど、欲を言えばその辺りの流れももう少し詳細に描いて欲しかったなぁ…と。
とまぁ最後に不満点を挙げたものの本校系ルートに関しては全体的に高い満足感を得られたのですが、次にプレイした分校系ルートでは作品に対する印象が坂道を転げ落ちるように下がっていきました。
とにかく主人公の言動が本校系の時と違って情けなさ過ぎ。
なんか学生気分が抜けないまま教師になっちゃった感じで行動が感情的かつ短絡的。
100%正論を言われても感情的になって納得しないばかりかそれを教え子に愚痴ったり、教え子にとってデリケートな問題に安易な思いつきで踏み込む無神経さに激しく萎えた。
しかもその無神経さを教え子に諭されるという駄目っぷり。
特に後者に関連する事として「お前の父親はあの娘の実家に酷いことしてるんか?」というニュアンスの事を父娘関係良好な本人に聞くかねぇ?
そしてそれを聞く事で主人公は何を得ようとしたんでしょう?
「はい、うちの関係者はホントに外道です。私、先生に協力します」とかにこやかに言うと思ったのか?
まぁ人間ですから自分が気に入ってる娘を贔屓するのは仕方ないとして、贔屓する娘のためなら他の娘に不快感を与えても良いとか思ってるような態度が気に入らん。
これじゃ自分のエゴを只管ぶちまけてるだけでしょ。
一応分校系のルートは主人公は状況に流されていくだけで偶にエゴが発動する…という感じなので本校系のような居心地の良さは望むべくもありませんが、ヒロイン達は考え方がしっかりしていてシナリオ展開の見せ場はそれなりにありました。
伏線の張り方、サブキャラの絡ませ方なども正直言って本校系のルートより良いかも知れません。
ただ美綺以外では本校系での見せ場の一つでもあった主人公自身の問題が有耶無耶にされてしまっていたのが残念なところ。
エロシーンはこれまた本校系と分校系で大きく異なります。
本校系は終盤に1〜2回なのに対し、分校系は2〜7回。
一部例外はありますが分校系の方がいちゃ付き描写が多く、その過程でエロシーンもそれなりに発生してました。
ただ、使用されてるCGは悉く使い回し。
一枚のCGを部分的に拡大表示させたりと苦労の跡は見えますが、それでも枚数不足は如何ともし難いものがありますな。
尺はそれなりで声優さんの演技も一部を除いて良好です。
個人的には栖香や美綺の後半のシーン、それと梓乃の2回目あたりが使い処でしょうかね。
エロシーンで選択肢が出ない事も微妙に好印象(笑)。
システム周りは私の環境では問題なし。
CGは枚数不足。
イベントCGだけでなく、立ち絵も少ないのが残念でした。
いや表情パターンはそれなりにありましたが、サブキャラの殆どは立ち絵すら無くって透明人間と会話してるような感じ。
双子姉妹なんて金髪ロリとか言ってて立ち絵すら無いのは何かの拷問ですか?
BGMは全体的に良好。
ボーカル曲はOPとEDの他に全エンド後に見れるエピソードで凰華女学院校歌「遥かに仰ぎ、麗しの」が再生されます。
教師として男として非常に頼り甲斐のある本校ルートと、教師として男として威厳もへったくれもありゃしない分校ルート。
どちらにも物語としての見所はありましたが、最初に本校ルートでの主人公の男っぷりを目にしていた私には分校ルートでの駄目っぷりがどうにも足を引っ張る形になってしまいます。
ルート別に満足度を書くと本校系が9、分校系が7…といったところでしょうかね。
以下、ヒロイン別ルート概略&雑感(当然ネタバレあり)。
風祭 みやび
本校組。学院の理事長代理。ロリ体系キャラ。
初めて両親から任された理事長の仕事を完遂しようと頑張るが、意地っ張りで短気な性格が周囲に誤解を与えてしまい折り合いが悪い。
個別ルートではみやびの本質を理解した主人公が秘書をしてみやびをサポートする流れ。
ソフト大会や文化祭を通じてみやびが主人公に惹かれていく過程が良い感じ。
クリスマスのプレゼント攻撃などでみやびとリーダさんに恋愛感情を自覚させるが、その想いを主人公は自身の過去のトラウマから拒絶。
みやびの婚約者である志藤由君に託そうとするもリーダさんにビンタ一発で諭される。
最後のエロシーンはこのルート唯一にして最大の不満点。
みやび:「せめてリーダを抱け」
主人公:「できるかっ!!」
私 :「やれよっ!!」(←魂の叫び)
鷹月 殿子
本校組。放浪癖があり、あまり他人と関わらない娘。
両親には千年の伝統を誇る鷹月家の跡取りとしてのみ期待されていて殿子はそれに反発、結果として殿子が折れるまで学院を卒業できない。
個別ルートでは殿子に案内された格納庫で戦闘機のパーツを見つけ、それを組み立てて飛ばそうとする企みに殿子や他のキャラ達を巻き込んでいく流れ。
その過程で最初は家族愛的なものだった主人公に対する想いが恋愛感情に変化した事を自覚し、鷹月家のゴタゴタに主人公を巻き込まないよう距離を取る。
んで殿子が突然姿を見せなくなった事で主人公も殿子に対する気持ちに気付いて(以下省略)。
とにかく主人公に懐いてる殿子は可愛いかった。
エピローグで殿子が数学者として有名になった事で鷹月の両親が軟化する流れは物語として組み込んで欲しかったかも。
あと個人的にですがエロシーンでの殿子の演技がなんか素人臭くて萎えました。
八乙女 梓乃
本校組。対人恐怖症な娘。
幼い頃にいじめを受け、それが元で対人恐怖症となり人の少ないこの学院へと入学した。
唯一心を許せるのは幼なじみの殿子と愛犬のダンテのみ。
個別ルートは梓乃の拠り所だった殿子が主人公に懐いてしまった事で自分の居場所が無くなると感じた梓乃が主人公を排除しようとする流れ。
主人公を排除するには主人公を中心とした教え子達の輪に入らねばならず、気付かないうちに社交性を培っていく。
そして主人公に性犯罪の汚名を着せるための計画の最中、梓乃のストーカーに本当に襲われてしまいそれを主人公に助けられ(以下省略)。
このルートは頻繁に梓乃視点へザッピングするのでドロドロした憎悪が良い感じに出ていたと思います。
「たきざわつかさぁぁっ」と負の感情を爆発させるシーンはできればイベントCGで欲しかったところ。
反転後の献身っぷりもなかなか良い感じですね。
エロシーンも本校組の中では一番気に入ってます。
仁礼 栖香
分校組。元華族で桜屋敷と呼ばれるほど大きな屋敷が実家なお嬢様。
真面目な委員長気質な性格で頼りない主人公を色々とサポートするようになる。
過去に教師から強姦未遂をうけたことで周囲の噂を気にしてこの学院へ入学。
個別ルートは両親に見捨てられてると感じつつも仁礼家の娘として衰退する家のために見合いを受ける流れ。
まぁこの流れはホントに終盤で、中盤あたりでは異母姉妹である美綺との複雑な感情が美綺ルートと合わせて見所になっているんだと思います。
流れ自体は悪く無いとは思うんですけどやっぱり主人公が流されまくってるだけという情けない立場なのが辛い。
それに過去のトラウマから他人を愛する事に臆病…という設定も有耶無耶になってる感じがしましたしね。
エロシーンは処女を失う事を栖香が恐れてる設定なためアナル系が多め。
相沢 美綺
分校組。凰華通信という学内新聞を発行していて常にカメラを携帯してる娘。
自由奔放で明るい性格。
親友の上原奏と一緒にいる事が多く、彼女との掛け合いはなかなか笑えて良い感じでした。
栖香の腹違いの姉で物心付く前に相沢家に養子に出された。
個別ルートは学院敷地内に点在する旧帝国陸軍の基地と思われる設備を調査していき、風祭家の妨害にもめげずに真相を究明する流れ。
本校組・分校組のほとんどを巻き込んで展開していく流れはなかなかに賑やかで良い感じだったと思います。
主人公の設定も忘れられてはいなかったですし。
榛葉 邑那
分校組。温室の主でいつも温室に居る娘。穏やかで落ち着いた性格。
蘆部家の9人兄弟姉妹の末娘で祖父によって死んだ祖母の身代わりとして育てられ、学院に居る間も色々な制約の元で過ごしている。
個別ルートは李燕玲と共謀して蘆部一族の長となる流れ。
まぁそうなるまでに色々と急展開ぎみな見せ場があって割と意表を付いた展開が多いのですが…邑那が個人的に属性外という事と主人公の言動に辟易してほとんど強制スキップかましてました(笑)。
一応この作品の最後にプレイする事を想定しているのか、暁先生の正体とか今まで謎だったものが解決したりもします。
沢山の策略が飛び交う騙し合いのような人間関係に興味があれば楽しめる内容かも知れません。
お気に入り順は
(リーダ) > 梓乃 ≧ 殿子 ≧ みやび > 美綺 > 栖香 > 邑那
リーダさん以下の三人はほぼ横一直線状態です。
他のサブキャラも加えると三嶋鏡花が美綺の次あたりでしょうか。
私的満足度: ★★★★★ ★★★+☆☆
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