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発売日:2007.02.02 / Purple Software
 全CGを補完してコンプ。 所要時間は1stプレイで大体5時間くらい、コンプまでは計18時間と言ったところ。

 異世界「ランドローク」と地球とが交流を行うようになって十数年。 主人公「泉 晴太」は交換留学生としてトリシア魔法学園へ通うため一ヶ月の間ランドロークで過ごすことになる…というあらすじ。


 選択肢分岐型のオーソドックスなADV。 ヒロインは5人でゲーム中の選択肢は個別ルートに入るか否かを選ぶようなものになっているため難易度は非常に低い。 エンディング後は一部の例外を除き各ヒロインのアフターシナリオ(というか追加エロシーン)が開放されます。 全てのエンドを見ると春野ゆめエピローグにあたるTrueシナリオが開放、更に全てのCGを埋めると恒例の(?)「なぜなに ぷりりん」が見れるようになります。 ちなみに今回はタイトル画面で放置しても自己紹介は流れませんでした。ちょっと残念。


 魔法や妖精が存在するファンタジーRPGのような異世界が舞台ですが、日本との交流が盛んで日本人街もあったりするので雰囲気的には普通の学園物に近い印象を受けますね。 放課後ゲーセンに寄ったり、買い物(デート)とか夏祭りなどの定番イベントも頻繁に発生してました。

 物語の流れとしては序盤にヒロイン達との出会いや舞台とキャラの設定解説、中盤はヒロインたち皆でわいわいと交流を重ね、終盤で各ヒロイン達の持つ苦悩に向き合う…という感じでしょうか。 それほど長い話ではないけど、序盤の早い段階で個別ルートへ移行するのでボリュームはそれなりにあります。 中盤での皆とのコミュニケーションが描かれるシーンでは既に個別ルートに入っているため、例えば同じ夏祭りなんかでもルート毎に異なる展開になるのは一応評価ポイントでしょうかね。

 個別ルートでは異世界の過去(700年前の大戦とか十数年前の星の巫女一号作戦とか)が各ヒロイン達の境遇に関連しており、このあたりの“設定は”悪く無かったと思います。 ですが、それら設定をヒロイン達の苦悩と絡めて説明するシーンとか話の流れがことごとく盛り上がりに欠けていたのが大減点。
 その一番の理由としては、とにかくもう主人公の空気っぷりが凄まじいことが挙げられます。 ひたすらヒロインの行動に流されてるだけだし、ヒロインの苦悩の原因を突き止めるのは妹の六花やサブキャラ達の役割で主人公はウジウジと悩んでるだけという無能っぷり。 やがて原因を解明した六花などの講釈をびっくりしながら耳を傾ける…というパターンなのでそりゃ盛り上がる訳ないよなぁ。オマエはMMRのナワヤかよ。

 また、全体的に友達とか仲間の“絆”が強調されてましたが、どうにも主人公が一方的に仲間の好意や恩恵を受けているだけに感じられます。 ヘタレとまでは言いませんけど、皆で楽しもうとしてる仲間の前で「今とっても悩んでるんだ」というあからさまに空気読まない身勝手な態度を取って気遣われる事が多いのですが、現状ではなぜ仲間達がそこまで世話を焼いてくれるのかが理解し難いので、主人公から仲間達に与えた好意や恩恵も共通ルートで描いておいて欲しかっところです。


 そして肝心のヒロインにも難あり。 いちおう私はこのゲームをキャラゲー(萌えゲー)と認識していたので、シナリオが盛り上がらなくても主人公が駄目でもヒロインに魅力を感じることが出来ればそれなりに満足するはずでした。 ところがそのヒロイン達がどうにも無理矢理ギャルゲー特有の性格や特徴を印象付けようとして却って不自然になってる印象を受けるのですよ。 はっきり言ってしまえばキャラ立てに失敗してるんじゃないかと感じられてガッカリした。

 中でも特に酷かったのがティエラ。 恐らくツンデレを意識したキャラなんでしょうがファーストインパクトが最悪。 このキャラが学園のテラスで出会った際に主人公に投げかけたセリフを要約すると大体以下のような感じになります。
 「あなた日本人ね!じゃあ私をナンパしに来たのね!魔法も使えない凡人の分際で!日本の男ってホント最低っっ!!…誰も私の気持ちを知ろうともしないで勝手ばかり。
 どう見ても反日民族の火病です。本当にありがとうございました。
つか最後のセリフが前のセリフと繋がってねぇぞ。 初対面の女の気持ちをどう理解しろっての。 しかもその後いきなり攻撃魔法の詠唱を始めて殺る気満々だしな。
 一応個別ルートでファビョってた理由は語られますけどこれはツンとか以前の問題では? 主人公も「あ、いや、あ、あ、あの…」とオドオドしまくって学園外まで逃げ帰ったところで急に「なんだよあの女!」とか強気になったりする三下っぷりを披露してくれて駄目だこりゃ。


 エロシーンは1キャラあたり本編では2回、アフターシナリオで1回の計3回発生します。 全員が初物でしたが青姦の比率が高いですね。 衣装は3回それぞれ異なっていて制服・私服・浴衣などそれなりのバリエーションがあったのも良かったかな。 ただシーン自体は割と普通でキャラに対する愛着も弱かったこともあり、個人的には特に印象に残るようなシーンはありませんでした。


 システムまわりは不満なし。 1024*768という高解像度でキャラも良く動いていましたけど高速で処理してくれているので鬱陶しさもありませんでした。 1画面に3〜4人の立ち絵を並べ、喋るキャラにズームアップしていく演出はワイド画面の利点が活かされていてなかなか良かったのではないでしょうか。
 CGは過去作に比べて少々劣化してる印象を受けました。 立ち絵は皆なんか顎が上がってる感じがしたし背景画とのバランスが怪しい箇所もちらほら見受けられます。
 BGMは良好。 まぁyanさんの曲は昔アレンジをやってた頃からのファンなので少々贔屓目に感じてるのかもしれませんけど。


 まとめとしてはシナリオ展開はともかく、期待していたヒロイン達に魅力を感じられなかったのが痛かったですね。 主人公の空気っぷりも物語展開を盛り下げてしまって突出した魅力のないキャラゲーになってしまったなぁという印象です。


以下ヒロイン毎の雑感(ネタバレあり)。


春野ゆめ
 帯広出身で主人公と同様に日本からの交換留学生。 明るく天真爛漫なキャラとして描きたかったのだと思いますが、変な方向にばかり行動力があって落ち着きの無いキャラという印象を受けます。 ところで帯広に何か意味があるんでしょうかね?いや正直どーでも良いですけど。
 ランドロークが産み落とした星の子で生まれた直後にランドロークの研究をしていた男に拾われ地球で過ごすことになった。 ゆめが魔法を使うようになったことでランドロークに導かれ単身で星の中心を目指し、それを主人公達が後から追いかけるという流れ。 ランドロークが未来の地球で作られたとか星の回廊は時間の流れが違うとかSF要素の超設定が色々と出てきましたが、世界観への没入度が低かったので個人的には「フーン」って感じで流してました(笑)。

ティエラ=モレーニ
 良家のお嬢様で魔法力も強いが翼を持つものとして地元では忌み嫌われている。 魔力依存度の強い体質ということで魔力供給の弱まる雨の日は鬱状態になり、その翌日は情緒不安定になるという傍迷惑な設定を保有。 主人公と初めて出会ったのも情緒不安定な時期で、それが先に書いたDQN発言の理由になっているのだが素の性格も唯我独尊系なのであまりプラス補正にはならなかった。 このルートではシナリオ展開もエロも主人公はひたすら流されるだけだし、エンディングを見ても何か消化不良な感じが拭えませんでした。

リコフェリア=デュエンデ
 サミエラという高名な魔法使いの弟子で主人公達より少し前に転校してきた。 丸太体系でペタ胸をネタにした会話が多く少々辟易ぎみ。 攻撃系の魔法は使えず民生魔法のみ使えるが、それはゲートを作り出せる巫女の血筋だから。 母親は十数年前の星の巫女一号作戦で従軍したアルテシア・ラズラフォートで現在はトリシア学園長をしている。 ただしリコはアルテシアが母親であることは知らない。
 個別ルートでは人一倍羞恥心が強く、自信も無かったリコの成長とプリミティブの種を絡めたのは良かったと思います。 キャラも一番立っていたんじゃないでしょうかね。 Trueルートでも主人公に好意を抱いているので、ゆめ・六花あたりとのハーレム展開も欲しかったなぁ。

シオン
 遺跡の中で眠っていたところ発見され育てられた魔法兵器。 妖精の森に住みんでいて学園生達から恐れられているため森からほとんど出ない。 それが主人公達によって皆とコミュニケーション取れるようになっていく流れで他シナリオに比べて主人公も頑張ってます。 まぁ妖精との戦闘シーンでは富樫のようになってしまいましたけど(笑)。 シオン役の声優さんがやや棒読みぎみとか細かい不満は色々ありますが、まぁとりあえずこのルートに関してはハルシオンの出番が少ないのが一番の不満です。

泉 六花
 ランドロークの日本人学校に通う主人公の妹。 かりん糖好き。 鋭い観察眼と推理力を発揮して何もしない主人公に代わり強引に物語を進展させていく。 主人公曰くクールビューティとの事だが誰よりも主人公依存度が強いのはバレバレなのでキャラ的な意外性はありませんでした。
 個別ルートでも主人公と記憶が半分ずつになっているという伏線で大体のオチは予想できましたが、タイムパラドックスを扱って描いていく流れは割と良かったんじゃないでしょうか。


お気に入り順は
 リコ > 六花 > シオン >> ゆめ >>>>> ティエラ


私的満足度: ★★★★★+ ☆☆☆☆☆

Copyright(c) 2007 SHEO