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パティシエなにゃんこ
発売日:2003.02.28 / PAJAMAS SOFT
 全CGを補完してコンプしました。所用時間は1プレイ4時間前後と言ったところ。 これを書いている時点でコンシューマ移植(追加キャラあり)や『プリンセスうぃっちぃず』の豪華初回版に付いてたりしますが、私がプレイしたのはCD初回版です。

 親元を離れて一人暮らしをしていたが、父親が腰を痛めて入院してしまった為に実家のケーキ喫茶「ひよこ館」の店長代理を務めることになった主人公「矢口翔一」。 久しぶりに再会した幼なじみの「芹沢かなで」やパティシエールの「秋月みちる」と店を再開させたまでは良かったが、ちょっとした手違いで猫魔法使いの「ミオ」に夜の間だけ主人公が猫になってしまう魔法をかけられてしまう。 これからクリスマスに向け店が忙しくなっていく中、主人公はどのような生活を送ることになるのだろうか…というあらすじ。


 店内の移動先を指定してヒロインと会話していくことでゲームが進行する喫茶店物では良く使われるタイプのラブコメADV。 お目当てのヒロインを狙っていけば後半に個別ルートへ入れますので難易度は低め。 ヒロインは6人ですが、妹の茉理は実質バッドエンドとなっていました。

 序盤から中盤にかけての共通ルートは小さな喫茶店独特のアットホームな雰囲気とヒロイン達との会話…特にノリツッコミが楽しく、テンポも非常に良いので掴みは良好と言えます。 ヒロイン達は萌えゲー特有の口癖を乱発してきますけど、個人的にこのあたりは許容範囲ではありました。ただ…。

 「にゃんにゃんするなら、たすけてにゃんぴ☆」

ミオが主人公に猫化の魔法をかけたときの呪文(↑)なのですが、冒頭からいきなりこのノリだったのでおぢさんちょっと引いちゃったかな(笑)。 いや事前情報で「萌えゲー」という評判は聞いていたのである程度くどい口癖などは覚悟していたんですけど、このノリは少々予想を超えていたと言うか…(笑)。 そういうノリならそれはそれで脳みそ空っぽにして楽しめば良いだけなのですが、こういう「大きなお友達」ウケするようなノリが苦手な方は要注意かと。 割とシリアスなシーンで「にゃんとドッキリ、パティシエにゃんこ」とか萌えボイスで呪文唱えられたりしますので。

 シナリオはライターさんが複数の割に主人公の設定…(父親に対する気持ちとか自身の夢など)…がどのシナリオでも上手く活かされていたのは好印象。 この主人公、真面目で努力家で困ってる人を見過ごせないお人良し…という恋愛ゲームでは珍しいタイプで、プレイしていてストレスを感じなかったのは特筆すべき点だと思う。 更に時期がクリスマス間近という事もあるのですが、舞台がケーキ喫茶ならではと言えるイベントも多く、ちゃんとこれらの設定を最大限使い切ってると感じられたのも高評価ポイントですね。
 設定といえば忘れてならないのが「主人公が夜の間はネコになる」ことですが、これも主人公の前では見せないヒロインの側面を上手く描けていたんじゃないかなと感じました。

 演出面もなかなか頑張ってますね。 イベント絵で定期的に白い息を吐かせたり雪がちらちらと舞い落ちてくる様などはなかなか良かったですよ。 主人公とヒロインとの会話などでもツッコミなどの効果音が入ったりして頑張っているのですが…この辺はちょっと鬱陶しく感じる場面もありました。
 演出面ではもう一つ、BGMが高水準なのが非常に嬉しい。 曲担当はManack氏でBGM以外にもヴォーカル曲がどれも良い感じです。 冬華シナリオでかかる挿入歌はサビの部分が凄く印象に残りやすいフレーズで普通に口ずさめてしまいます(笑)。

 エロシーンは…ぶっちゃけこのゲームで唯一と言っていい欠点ですね。 コンシューマ移植されてる現状からも推察できると思いますが、必然性があまり感じられないし、内容も特筆すべきものはありません。 普段無邪気なヒロインが多いだけにエロエロに喘ぐ様とか見てギャップを楽しみたかったものですが無念です。 亜里咲なんかエロシーンすら無いですしね。

 個人的にはいかにもユーザー受けを狙ったヒロイン達の言動が少々鼻に付いて萌え度的には思ったほど高くはありませんでしたが、ゲームの雰囲気や設定を上手く使ったシナリオ展開などは割と楽しむことができて満足しています。

 

以下、ヒロインごとのシナリオ雑感(ネタバレあり)。

 

芹沢 かなで
 幼なじみ。主人公は学校へ通ってる訳ではないが「幼なじみの特権」とか言って毎朝起こしにくる。 シナリオ展開は終盤のすれ違い展開などやきもきしますけど、主人公の人柄(何だかんだで母親を見取らなかった父親と同じ行動をしてるんですよね)と、幼なじみ故にそんな主人公を信じてるかなでが良い感じだったんじゃないかと。 サンタクロースの絵本は演出効果としてはなかなかだけど、ちょっと都合良過ぎかなとも感じます。

秋月 みちる
 ネコが苦手なパティシエール。 鼻歌とか矢口家のまともな朝食にありつけない様とか、割とお茶目なシーンが随所にあるのが良い感じ。 シナリオ展開のケーキ対決は何というかお約束だなぁと感じましたが、話の閉め方とか割と気に入ってます。

姉小路 冬華
 ツインテール+ツンデレキャラ。向かいのライバル店「ショコラ・ル・オール」のオーナーの娘。 営業妨害になってない営業妨害とか、主人公や茉理に弄られる様が微笑ましい。 父親がどう考えても頭悪いとしか思えない攻撃を仕掛けてくるのが難ですが、主人公も父親と確執があって設定的に一番盛り上がりますね。 挿入歌の使い方も良い感じでした。

ミオ
 ねこ魔法使い。無知故の純真さがなんか良かったです。 理不尽な客に対する態度とか、賞味期限切れの材料で作ったケーキの扱いなど、人間社会では当然とされてる事でもミオにとっては納得行かないことで、その純真さが心地良い。 ラストの展開はやっぱりちょっと都合良過ぎなんじゃないかと感じるけど、それを言ったらミオが幼い主人公に会っていた事も魔法使いになった事も都合良すぎになってしまうし、これはこれで良いのかな(笑)。
 どのシナリオも「笑顔を作る名人」になるという主人公の夢と「ケーキが人を幸せにする」展開が見られて良い感じでした。

私的満足度: ★★★★★ ★★★☆☆

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