Rascal・改 − Game Impression
[メニュー枠OFF]

PRISM ARK ―PRISM HEART II
発売日:2006.08.25 / PAJAMAS SOFT
 エンド・CG・回想・プリズムを全て補完してコンプ。 所要時間は1stプレイで約12時間くらい、全エンド達成までは…戦闘を飛ばさずにプレイしたことで約50時間くらいでしょうかね。 既読スキップを使ったにも関わらず最終ルートだけで10時間ほどかかりましたよ。 全エンド達成時のレベルは99でした。

 ヴィントラントの国王・王妃・王女を乗せた馬車がサブルム帝国軍に襲撃されてから十数年、未だに両国は戦争状態にあり王族達の行方も不明なままだった。 そんな情勢の中、騎士を志す主人公「ハヤウェイ」はローゼンベルグ騎士養成学校へ入学してきたのだった…というあらすじ。


 『プリズムハート』から約20年後の同世界を舞台にした「SRPG style ADV」。 前作は自己育成型のSLGでしたが今作はパーティ制バトルによってレベルアップしていくRPG色の強い仕様に変更されています。
 ヒロイン総数は7人。 全13章で構成され、8章までが共通ルートになっていますけど半分以上のヒロインは特定のエンディングを見るまで個別ルートには入れないエンディングフラグ方式になってました。 推奨クリア順はプリーシア→神楽→フェル→華鈴→テレサ→リッテ→フィーリアですかね。 プリーシアルートで入手する「レッドホットショット」を一周目で取っておくと二周目の戦闘が非常に楽になります。 もっとも二周目以降は戦闘をスキップできるので物語だけを追いたい人は気にする必要ありませんけど。


 共通ルートではヒロインやサブキャラ達との出会い、そして授業や訓練といった学園生活と実戦経験を経て仲間との絆を深めていく流れになってます。 癖のあるキャラが揃っていることもあって日常描写は戦時中とは思えないほどのドタバタハイテンション系ですが、世界観の説明や登場キャラの特徴付けどが割としっかりしていて個人的には好印象でした。 章の節目に挿入される次回予告やOPムービー(台詞が毎回違う)も良い味出してたと思います。

 後半になると軍の一部隊として本格的に戦争に参加することになり、更にその中で各ヒロインの重めの設定などが明かされていくため、ほぼシリアスな展開になります。 ヒロインの設定や立場はそれぞれ違えどラスボスを含む大まかな展開はどのルートもほとんど同じで、好意的な言い方をすれば「一つの大きな流れを7つの異なる視点から描いた物語」という感じですね。

 物語の舞台となる世界観に関しては大きな特徴が二つあります。 ひとつがいわゆる宗教対立がベースになっている事。
 主人公が属するレリヒオン教の国々は異教徒=悪として扱い、その異教徒であるサブルム帝国から聖地を奪還するために過去に何度も大遠征軍を派遣している…。 という世界史に出てきそうな状況なのですが(勢力地図なんかはモロに某海沿岸地域の地形だし)、このあたりの教義と現実の矛盾点などで苦悩する様子が何人かのヒロインルートで描かれていたのがちょっと印象的でした。
 ただ個人的に一番興味のあった宗教対立の結末をどう付けるかに関しては正直言って期待はずれ。 結局はどのルートも敵国を滅ぼして終了ですからねぇ…。 共存の道を模索するような流れがあってもよかったんじゃないかと思います。

 もう一つの特徴が旧世界の遺産、いわゆるオーバーテクノロジーの存在。 これは冒頭から天使と呼ばれる人型破壊兵器が登場しますが、そういった技術の研究や開発の過程で被害者となった者と加害者だった者の両方がヒロインの中に居て、物語の展開に上手く活かされていたのも印象的でした。 余談ですが天使の登場ムービーはかなりお気に入りです。 あの独特のフォルムと雄叫びに萌えた(笑)。

 一部のルートで主人公が精神的に幼い言動を取るので何度かイラつく場面もありましたけど、最初は宗教・国家間の戦争として描かれたものがクリアを重ねる毎に設定をより深く掘り下げて描いていたのは悪くなかったと思う。 ただ、そのために各ルート毎の大まかな展開が同じになり、二周目以降はモチベーションが低下するのが難点ですね。 同じ展開を七度もプレイさせられたんじゃそりゃ普通は飽きますよ。
 一応個人的には戦闘関連のやり込み要素(レア敵討伐時の称号集め)などに割と熱中できたのでコンプまで持ちましたが、物語展開だけを読み進める人にとっては1つのルートが長い分、余計にダレやすいのではないかと感じました。


 章の合間に何度も発生する戦闘パートのほうは、メーカーは一応SRPGと言ってますけど戦略的な要素はほとんどありません。 せいぜいその戦闘で最終的に倒すべきボスの地点までEASY・NORMAL・HEARDのどのルートを通っていくかを選ぶだけ。 強制一本道のステージもあるのでEASYルートばかり選んでるとレベル不足になる可能性もありますが、大体は無限に敵が湧き出るポイントが用意されてるのでそこで経験値稼ぎをすれば詰む事は無いでしょう。

 戦闘シーンは敵/味方ごとのターン制バトル。 必ず味方からのターンで始まります。 特徴としてはADVパートで入手するプリズム(ステータスアップや技など様々な種類がある)を七つまで装備できることと、敵キャラや主人公達が全て3Dで描かれていて非常に処理が重い事。
 後者に関しては本気で3Dにした意味が不明でした。 TAという特定のキャラ同士による合体技を使用した時は無駄に凝ったアクションを取ってくれるので、せいぜい3Dにした事によるメリットはこの辺りくらいですね。
 私が最初にプレイした時のPCが少々ロースペックだったこともあり、戦闘が開始されるまでの読み込み時間が1分前後掛かって凄くストレス溜まりましたよ。 その後にPCを買い換えてから再プレイした時は2〜3秒で読み込み完了し、ストレスとは無縁だったのでPCのスペックによって戦闘に関する印象は大きく異なってくると思います。


 エロシーンは何故かフィーリアには存在しませんでした。 まぁフィーリアはあまり好きなキャラでは無かったし、元々このゲームにエロを期待してなかったので割とどうでも良いんですけどね(笑)。
 他ヒロインは1〜3回ほど、キャラによってバラ付きあり。 全て和姦でねちっこいテキストじゃ無いので正直言ってあまりエロくは無いですね。 尺はそれなり、声優さんの演技も良好ではあるので好きなキャラが居るなら頑張れば何とかなる…かな(笑)。


 システムまわりは基本的な機能は実装されていたしステータスやプリズムのデータは別管理というのも微妙にポイント高かったです。 後は戦闘モードの重さが改善されれば言う事ないんですけど。
 CG枚数はやや少なめでしょうかね。 コメディなシーンで使用されるミニCGが結構ありましたけど、それでもイベントCGはもう少し欲しかったところ。 あとはADV部・RPG部ともにエフェクト処理が相変わらず凝ってますね。 プリズムなんか回転してたし。 それと…これも相変わらずですが立ち絵というか衣装が凄いですな。 フェルの帽子なんて普通にドア枠に引っかかって通れなそうですよ? 主人公の剣やプリーシアのレイピアなんかも鍔の部分で所有者の方がダメージ受けそうだし、テレサの十字剣なんか振った瞬間に腕が抜けそう…というより持ち上げられるのが凄い。 いや、突っ込む方が無粋なのは分かってるんですけどね。
 BGMは相変わらず良好。 『プリズムハート』の曲もいくつか使われていて懐かしかったです。 ボーカル曲が13曲というのは凄いけど、印象に残ってるのはOP「贖罪のラプソディー」とシーンとベストマッチしてた「追憶のノクターン」それと個別ルートOP「原罪のレクイエム」くらいかな。 後者は2006年のエロゲボーカルソングとしてはベスト3に入りそうです。


 とりあえず物語のボリュームや各ヒロインの関連性の深さ、凝ったエフェクトやムービー、豊富なボーカル曲…と十分に大作と言える出来だった事は間違いないです。 プリズム収集など意外とやり込める要素があったことも悪くなかった。 しかしどのルートも展開が全く同じな上にヒロインの設定に関する伏線があからさま過ぎた事で2周目以降(特に4〜6周目)が展開を確認するだけの「消化試合」になってしまったのが凄く勿体無く感じました。


長くなったのでキャラ毎の雑感は軽く(ネタバレあり)。


プリーシア
 行方不明の王女ではないかと噂されてるツンデレキャラ。 実は学園長キザーロフの娘で王女の影武者として周囲に王女であると思わせている。 まぁとにかく主人公が気になって仕方ないけど素直に行動できない不器用さが売りのキャラですね。 それにしてもキザーロフは相変わらず反語野郎で安心した。母親は結局誰なんだろう?

神楽
 和の国からプリーシアを警護するために来た巫女。 不老不死に近い身体を持ち、個別ルートではそのあたりの流れが語られるのですが、本来の流れから言えば外伝的な内容ですね。 前作の神弥無と何か関係あるのかと思ったけどよく判らんかった。 個人的に神楽の惚けた性格は結構好きです。

フェル
 自称天才魔法少女。あの帽子はやっぱり何度見ても気なって仕方ありません。 元々は孤児で天使の研究でモルモット扱いされるがテレサの助力などもあって脱出しリッテの保護を受けたという過去を持つ。 背中に天使の名残で羽が残っていて風呂に入るときはバスタオルで隠している。 初期印象ではウザキャラでしたが予想外に重い設定のキャラでラストのシャリーが絡む例のシーンからは感動しましたよ。

華鈴
 ヴィエーラ王国のテンペル騎士団に所属する騎士で学園に教官として赴任してくる。 体育会系の熱血教師なノリで主人公達に接するが重度の方向音痴、料理下手、幽霊苦手と弱点も多い。 異性に対する免疫もなく萌え度はそれなりに高めかも知れませんが、レリヒオン教を崇拝するあまり物事を大局的に見れず個別ルートは何とももどかしかった。

シスター・ヘル(テレサ)
 元はレリヒオン教のシスターだが孤児を天使の実験素材にしている事実を知って離反。 以後はサブルム軍の傭兵となる。 中立地帯でテレサとして出会い、主人公との距離が近付く過程はかなり展開が速くてちょっと無理があるように感じました。 でも彼女の性格や行動は理解しやすくて個人的には割とお気に入りなキャラ。 パルティの件は分かってても切なかった。 ちなみにこのルートではちょい役で前作のエコーが声だけ登場します。

リッテ
 超ロリ体系だが優秀な研究者であり学園の教師。 このキャラに関しては最初から最後までウザかった。 あの泣き叫び声だけでも不快だというのにそれが演技で更にあの個別ルートの展開ですからねぇ。 しかも主人公が情け無い言動を多く取るし、メガネキャラだし、敵のときは強烈な回復魔法使ってくるのに味方のときは全く戦力にならないという良いとこ無しなキャラでした。 唯一のプラスポイントは個別ルートで他ヒロインの水着が拝めることくらいですかね。

フィーリア
 主人公の妹。極度のブラコンで主人公を追って学園にやってくる。 実はヴィントラントの王女だが本人も主人公もその事実は知らない(でもプレイヤーにはバレバレ)。 「かな?かな?」と二回繰り返す口癖がオリジナリティ無さすぎて最初からちょっと萎えました(笑)。 個別ルートでは物語展開よりも敵キャラがやたら強くなっていて驚いた。 まぁそのおかげで物凄いスピードでフィーリアのレベルが上がって行った訳ですが(笑)。 最終シナリオらしくラストは今までのヒロイン総出演となり割と盛り上がってたと思います。 最後の12連戦はやり過ぎな気もしますけどTA技を使えば1ターンで済むので良いレベル稼ぎになりましたし。
 あとエピローグでは主人公の出生に関しても少し触れられてましたけど、結局詳しいことは判らず仕舞いですね(じっちゃんが前作のグスタフ王だったのは判ったが)。 まぁ聖域の扉が主人公の手に反応して開いたことを考えると恐らくレリヒオンの転生体か子孫、もしくは三賢者と同じ神の一族の末裔なのでしょうけど。 このあたりはFDとかで補完されるんでしょうかね。


お気に入り順は
 神楽 > テレサ > プリーシア > フェル > 華鈴 > フィーリア >(超えられない壁)> リッテ


私的満足度: ★★★★★ ★★+☆☆☆

Copyright(c) 2007 SHEO