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英雄伝説 空の軌跡SC
発売日:2006.03.09 / Falcom
 最終レベル90にてクリア。 物語重視のRPGとして前作は結構気に入ってるし何より続きが気になって仕方なかった…というのが購入動機。 プレイ時間は約75時間超という長丁場になりました。

 正遊撃士を目指してリベール国内の遊撃士ギルドを巡る旅に出たエステルとヨシュアは様々な事件や出会いを経験し遊撃士として成長していった。 そしてその道中でリベールを揺るがすクーデター事件にも巻き込まれたが多くの仲間達と共にその陰謀を阻止することに成功し、二人は晴れて正遊撃士となった。 しかしその直後にヨシュアはクーデター事件の黒幕がかつて自身が所属していた組織であることを知り、単身で戦うために姿を消してしまう。 そしてそれを知ったエステルもまたヨシュアを追う決意をするのだった…というあらすじ。


 SC(Second chapter)と表記してある通り『英雄伝説VI 空の軌跡』の続編にあたる作品で、前作のエンディングの翌日から物語がスタートするため前作プレイは必須。 一応前作のセーブデータを引き継ぐことが可能ですが、装備や所持金には反映されず、若干初期レベルや登場キャラとの会話が変化するだけのようです。 前作で必死に覚えた料理レシピなども全て忘れてしまっているのが悲しいので個人的にはもう少し引継ぎ要素には凝って欲しかったところです。 ちなみに初期レベルは35〜40の間で変動する模様。


 初っ端からレベルが高いのでザコ戦闘なんて楽勝じゃん…と思いきや、敵モンスターのレベルも上がってるので油断してるとボコボコにされます(笑)。 このゲームはクオーツというものをスロットに填め込むことによってステータス補正が付いたり魔法が使えたりするのですが、これの恩恵をあまり受けられない序盤が一番苦労すると思います。 逆にゲーム中盤あたりでクオーツが充実してくると強力な魔法をガンガン使えるので凄く楽になりますけどね。

 戦闘自体は前作と同様にシンボルエンカウントからのタクティクス形式なので目新しさはありませんが操作性は相変わらず快適。 一応敵キャラ達はそれぞれ効率の良い倒し方が異なるし、クオーツの配置を模索したり、今作で新たに追加されたチェインクラフト(複数人による連続攻撃)など、戦闘がワンパターンにならないよう色々と工夫されているのは個人的に好印象でした。


 物語は序章と終章を含めると全十章構成で、中盤までは前作同様にリベール国内の各地方を巡ってギルドに持ち込まれた依頼を消化しつつ、敵組織の“執行者”と呼ばれる幹部達とも接触していく…という流れ。 執行者達と主人公の仲間達との間には何かしらの因縁のある組み合わせがあったり新たに因縁が生まれるという展開になっていて、それなりには盛り上がってたし全体的なストーリーテンポも悪く無かったと思います。

 それと前作はストーリー展開に合わせてパーティメンバーが強制的に入れ替わる展開でしたが、今作は連れ歩くメンバーをある程度自由に選べるようになっていて、キャラの組み合わせによってイベントでの会話パターンが変化するのが中々凝ってるなぁと感じました。
 加えてこのゲームに登場するキャラ達には町人の一人に至るまで全て名前が設定されていて、わりと個性も出てます。 前作をプレイしてから一年半経っても結構覚えてるキャラが多かったし、そういったキャラにもパーティメンバーの組み合わせや物語の進展に合わせてテキストが変化するのが凄い。

 中盤から終盤にかけては敵組織が大きく動き出して国全体を巻き込む大騒動に発展していき、なかなか燃えます。 敵空母からの脱出時やヨシュアとの再会、ムービー挿入によるドラゴン退治とか空中戦闘は自分的にはかなり盛り上がりました。
 前作からの伏線もかなり明かされ、やっぱり前作の時点で既に物語の全体的な流れは決まっていたんだなぁと感じますね。 ただ、今回新たに出てきた伏線もいくつかあって、後のシリーズに続きますよ〜と匂わせまくりなのが何とも歯がゆいというかスッキリしません。 今回の話はかつて女神が与えたとされる《七つの至宝》の一つに過ぎないので、単純にあと6回は話が作れそう。 組織の盟主や帝国の陰謀などキナ臭かったり謎だったりなままですし、七耀教会も色々と謎が多そうです。


 と、褒てばかりなのも難なのでいくつか不満点も列挙していきますか…。 まず一番不満だったのが主人公の戦闘レベルや遊撃士ランクが物語展開上では全く関連性が無いこと。 強い“設定”のキャラは戦闘レベルがいくら低くてもイベントでは強いキャラとして扱われ、逆にエステルはいくらレベルが高くても最後まで新米の遊撃士という扱われ方なのですよ。 いくら戦闘で圧勝しても戦闘終了後には倒したはずの敵キャラが平気な顔してるのが凄く悔しい(苦笑)。
 遊撃士ランクに関してもA〜Gのどのランクにいてもイベント内容に変化が無いのが拍子抜け。 まぁ確かにシェラ姉さんが5年掛かってランクBになったのものを半年も掛からず追い抜いてしまうのは不自然だと思うし、実際エステル自身に高ランクとしての威厳も無いのですけど、それなら最初からDやCを最終到達ラインにしてランクが上がった事を実感できるようなイベントが欲しかったところです。

 その他には戦闘終了後に入る経験値がレベルによって差がありすぎたり、基本的に前作と同じ土地が舞台なため新鮮味に欠けるというのが一応不満としてあります。 ただ前者に関してはパーティーメンバーを自由に選べる構成上、レベル差を埋める必要があるので仕方無いと思うし、後者に関してもラストステージ関連で納得はできるかな。 でもやっぱり帝国や共和国など他の国も旅してみたかったです。


 グラフィック関連は前作同様に素晴らしいですね。 影の描き方なども光源に近ければ影が短くなり遠ざかると影も段々と長くなっていくという具合に凝っています。 あと意外だったのがイベントCGがいくつか存在したことでしょうか、まぁ使用されてるのは回想シーンとエンディングだけだし、ほんんどが線画のみでしたけどね。 欲を言えば温泉イベントなどで使用して欲しかったところです(笑)。
 BGMもかなり秀逸。 オートイベント時の同期もしっかりしていて盛り上がりに貢献してました。 個人的なお気に入りは戦闘系に偏ってるかな。 執行者戦の曲(ED6425.ogg)なんかは特に気に入ってます。


 前作から合わせると実に120時間という長さになりましたがプレイした時間に見合うだけの満足度は得られたかなと思います。 舞台が小国内だけに終始していて前作から合わせて3周も各地を巡る必要があるので次第に新鮮味は薄れますし、シナリオ展開的にも特に捻ったものはありませんが、各キャラが活き活きと描かれていてプレイ感や達成感の高い良作と言ったところでした。


私的満足度: ★★★★★ ★★★+☆☆

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