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英雄伝説 空の軌跡 the 3rd
発売日:2007.06.28 / Falcom
 Lv.142でクリアしました。 所要時間は約65時間、初代から合わせると計180時間以上もかかった訳で、我ながらよくやったなぁと思います(笑)。

 リベール王国とその周辺国が混乱に陥った「浮遊都市リベル=アーク」の事件から半年後、崩壊した都市の調査を行っていたリベールの調査員によって謎のアーティファクトが発見された。 七耀教会との規約により発見されたアーティファクトは教会の手に委ねられる事となり、その確認と保護のために教会の守護騎士「ケビン=グラハム」と従騎士「リース=アルジェント」が派遣される。 ところが、それまで無反応だったアーティファクトがケビンの到着と共に反応し始め、結果的に彼らは謎の閉鎖空間「影の国」に転移してしまうのだった…というあらすじ。


 『空の軌跡』の三作目。 前作のSCから半年後の世界で主人公がエステルからケビンに変更されています。 前作のクリアデータが存在する場合はそのデータを読み込ませる事で引き継ぎ特典がありますが…アクセサリーが1つとセピスが少々増えるだけでプレイヤーレベルは90固定というショボイ内容なのであまり意識する必要は無いかも。
 過去作を知らなくてもプレイすることは当然可能ですけど、キャラ同士の会話などは前作までの流れを踏まえた上のものとなっているので過去作未プレイだと話に付いて行けずに疎外感を抱くと思います。


 大まかなゲームシステムや操作感は過去作から特に変わっていません。 オーブメントとクオーツの組み合わせによるステータス補正やアーツ(魔法)の類も微修正・微追加と言ったところ。

 戦闘も従来通りのシンボルエンカウントからのAT(Action Time)バトルで、ユニットの行動順は左上にアイコンで表示されます。 偶にATボーナスとしてHPやCPの回復、攻撃力アップなどが発動するのは従来通りで、今回は更にバニッシュ(一時的に戦闘離脱&EPロスト)や即死やガード(必ずガード“されて”しまう)と言ったものが追加されてました。 味方がこれらボーナスの恩恵を受けられる場合は素直に有難いのですが、当然敵の行動ターンでも発動するため、雑魚の即死発動で思いがけず戦闘不能に陥ったりすることもありました。 ザコ戦闘でも緊張感を保てるように…とのメーカー側の配慮なのかも知れませんが、正直言ってストレスのほうが溜まりました。

 パーティメンバーは最終的に16人集まりますが、探索や戦闘に参加できるのは4人まで。 しかも物語の都合上1〜2人は強制的に活動メンバーに組み込まれる事が多く、活躍の場が無いキャラも出てきてしまいます。
 最終的には4つのパーティに別れて全員の参加が必須となるのですが、一度も使ってないキャラをラストステージに連れて行っても直ぐにレベルが追い付くゆとり仕様になってます。 せいぜい近距離型と遠距離(魔法)型のキャラのバランスを考慮するくらいでしょうかね。
 ちなみに今回の敵キャラは「時」属性と「空」属性が弱点なのが多いので、この二つと回復を重視していればかなり楽に進みます。 特にダークマター改の使い勝手の良さは異常。


 物語展開のほうも正直言って微妙。 まず主人公が一介の遊撃士から「外法狩り」と呼ばれる守護騎士に代わった…ということは前回のブレイザークエストの代わりに外法たちを粛清する展開だと思うじゃないですか。 リベール王国だけでなくエレボニア帝国とかカルバード共和国を旅してまわると思うじゃないですか。それがなんで閉鎖空間…。 しかも何者かが作り出した架空世界ということで旧作で登場した街や施設のMAPが無人化されてそのまんま使われてたりするんですよ。 素材の有効活用も度が過ぎると唯の手抜きにしか感じられません。 ファルコム式のエコなんでしょうかね。

 そしてその架空世界での展開…中でも都合よく配置されてる封印石の存在が作為的すぎて白けぎみです。 封印石というのは文字通りキャラ達が封じられてる石で、この封印を解いていくことでパーティに加えられるメンバーが増えていくのですが…封じられているのは全て過去作に登場したキャラ限定な上に解除される順番までがことごとく作為的なのですよ。
 要するに「影の国」という閉鎖空間を作り出した黒幕が展開や探索MAPの構築、そして開放されるメンバーの人選と順番、果ては宝箱の中身までの全てを管理していて主人公達(プレイヤー)はその黒幕の用意した展開通りに進まされるだけ。 まるでシナリオライターとかプロデューサがゲームの中に登場して誘導しているような嫌な感覚がありました。 常に「作られた(用意された)世界」を歩んでると実感させられ、RPGとしての爽快感…というか充実した時間を過ごしてると感じないんですよ。 黒幕の正体も三話あたりで予想できてしまので終盤も今ひとつ盛り上がりに欠けましたし。


 そんなこんなで先ず不満点がだらだらと出てくる本作ですが、もちろん好印象を抱いたものもあります。 その一つが封印石と同様に都合良く配置されてる「扉」の存在。 この扉に特定の条件を満たしたり特定のメンバーを連れて訪れたることで、様々なサイドエピソードを体験することが出来るのです。 その多くはSC以降の関連キャラ達のエピソードになっていてFC・SCとプレイしている身には色々と感慨深いものがありました。 いくつかミニゲーム形式(STG・釣り対決・トランプなど)になっているものもありましたが、それほど苦労するような内容では無く、息抜きに丁度良いレベルだったのは有難かった。
 また前作同様にメンバーの組み合わせによってイベント会話パターンが変化するのも悪くない。 物語中に登場する敵も黒幕によって用意された人物(厳密にはもう少しややこしいのですが)で、やっぱりシリーズお馴染みの顔ぶれだったりするのですが、その敵と対峙した時に自分達のメンバーに因縁のある人物が加わってると会話パターンが異なるのが中々良かったと思います。 逆に関連キャラを加えていないと物足りない会話になるので、いっその事イベント毎に参加必須メンバーを固定化しても良かったんじゃないかなぁと感じました。 どうせRPGとしての自由度は元々低いのだし。


 システムまわりや操作性は過去作と同様なので不満は無し。 グラフィック関係のほうは先にも書いたようにMAPの使い回しが目に付きますが、立体的なダンジョンの構成や背景は如何にも不思議空間といった雰囲気が出ていて悪くは無いですね。 ただ設定資料集にあったアルテリア法国が全く登場しなかったのにはがっかり。 演出面では新規のSクラフトが中々に良かったです。 キリカとかフィリップの技をはじめラスボスのバハムート零式(違)あたりはPCゲームとしては中々に派手で見応えありました。
 音楽のほうも過去作からの使い回しがありますが全体的な質は相変わらず高く、OPや戦闘曲などはかなり気に入ってます。 中でもラスボス戦の曲が印象的でした。


 とりあえず個人的にこのゲームをまとめると「続編シリーズへの設定ネタ振りゲー」かな。 歴代『空の軌跡』に登場したキャラ達が総出演となるので脇役も含めてキャラに愛着があるのなら見所もそれなりにあるゲームだとは思います。 ただし私が今回やりたかったのは前作までのようなRPGであって「設定の垂れ流しが見たかった訳じゃない」んですよね。 最初からエピソード集として出したのなら納得できますけど、そうじゃないですからねぇ…少なくともRPGとしての満足度は過去作と比べて大きく下がった作品となりました。

 それにしても…今回のエピソードでカンパネルラが《身喰らう蛇》の盟主や使途達と交わしていた会話から察するにこの世界観はまだまだ続きそうですねぇ。 今後『英雄伝説』シリーズをプレイし続ける意思や予定のある人なら評判はどうあれ今作はやっておいた方が良さそうですよ。 おそらくレギュラーキャラ達も何らかの立場で登場すると思いますし。


以下、備忘録として今後のシリーズで気になる設定をいくつか挙げときます。
(ネタバレ注意)


身喰らう蛇
 今後もシリーズを通して敵役として登場しそうですね。 組織を上げてオルフェウス最終計画というのを画策していて、その第一段階の福音計画がSC時点で終了。 今後は第二段階の幻焔計画へ移行するとのことでこのあたりが物語に絡むんでしょう。 SCで第三柱のワイスマンが倒れて残る使途は6人。 そのうち第六柱は十三工房の局長で第七柱は《剣帝》レーヴェ以上の剣士らしい。 執行者はルシオラが行方不明だが新規も合わせて今後も出てくるでしょう、きっと。

七耀教会
 聖杯騎士団の階級は守護騎士 > 正騎士 > 従騎士で守護騎士(ドミニオン)は聖痕を持つ12人のみ。 実力によって守護騎士の階位が決まる訳ではなく発現した聖痕の階位で決められる模様。 実力があっても聖痕を持たないものは守護騎士にはなれない。 第一位のセルナート、第五位のケビン以外の守護騎士は未だに謎のまま。 第八位は「塩の杭」エピソードで語られたけど生きてるんでしょうかね。
 それと教会関連といえば七十七体いるという悪魔も今回は四体しか出てこなかったから続編でもまた何体か出てきそうですね。

リベール王国
 今後も話に関わってきそうなのは王室関連のクローゼとユリア、情報屋のリシャール、技術面ではティータの両親あたりが出しゃばってきそう。 対パテル=マテル用の機動兵器も開発中だしね。 遊撃士ではアネラスやアガットよりもレイヴンの三人が気になるかな。 根性注入とか馬鹿にできん。 カシウスあたりはまた美味しいとこを持っていきそう。

エレボニア帝国
 今後混乱すると言ってたのでこのへんがメインで語られるんじゃないかなぁと思ってます。 でもその場合はオリビエやミュラーが主役級だとRPGの初期状態としては強すぎなので別のキャラを立てて欲しいところ。 エレボニア関連では何と言っても3rdでその非凡っぷりを見せ付けたレクターの動向がきになりますね。 なんとなく結社絡みな気もしますけど…。

カルバード共和国
 キリカとジンが戻ったということぐらいなので他に比べて話題性は今ひとつ。


 キャラのエピソードで印象に残ってるのはやはりレンですね。 ありゃ18禁でもキャラの年齢的に直接描写は不可ですけど、なまじ直接描写が無いからこそヨシュア達に発見されたときの惨状から色々想像してしまってキツかったです。 つかシリーズに出てくるキャラって不幸な生い立ちが多いですな。 ケビンは母親に殺されそうになった挙句に見捨てて姉代わりだったルフィナをその手に掛けてるし、エステルは百日戦役で母親が、ヨシュアはハーメルの悲劇で姉をそれぞれ亡くし、シェラ姉さんも悲惨なスラム時代を送ってたし。
 まぁこれらのキャラ達の動向を気にしつつ、続編を待ちたいと思います。


私的満足度: ★★★★★ ★+☆☆☆☆

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