Rascal・改 − Game Impression
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うたわれるもの
発売日:2002.04.26 / Leaf
 エンディングを見てコンプ。プレイ時間は20時間を少し越えるくらいだったと思います。 購入動機はライターさんの過去作(『恋姫』や『BE-YOND』)が好きだからという理由だったかな…。
 なお、このゲームは戦闘難易度調整やイベントCGを追加したDVD版が発売されていますけど、私がプレイしたのはCD初回版です。

 大怪我をして倒れているところを「エルルゥ」によって助けられた主人公。 彼は目覚めた時に一切の記憶を無くしており自身の名前すら思い出せなかったが、村長でありエルルゥの祖母にあたる「トゥスクル」から「ハクオロ」という名を与えられ辺境のヤマユラ村で過ごすことになる。 余所者である主人公を暖かく迎えてくれた村人達の恩に報いるため、自身の持つ知識を使って農業や産業に貢献し、次第に信頼を得るようになるが平和な日常は長くは続かなかった…というあらすじ。

 ゲームはSRPG+ADV。 登場キャラ達との会話やイベントの多くはADVパートとなっていますが物語の分岐は一切無い一本道シナリオ。 物語進行の合間にSRPGの戦闘パートが挿入される形式で、戦闘中はセーブ不可能という仕様です。 いくつかの戦闘では連戦を強いられる箇所があり結構時間を取られる場合があるので中断セーブくらいは実装しておいて欲しかったですね。

 物語の序盤は記憶を失ってる主人公が村人達と打ち解けていく過程が描かれていくのですけど、ここでの主人公への感情移入度(シンクロ率)がかなり高く、更にこの主人公を通して得られる世界観がプレイヤーにとって非常にわかり易い構成になっていたのが好印象。
 主人公の知識や一般常識は現代人に近く、村人達の耳の形状や尻尾の存在に戸惑ったり、ゲーム内世界で特有の食材解説なども「芋のようなもの」という感じでプレイヤーに理解し易いものになっていて物語に入っていき易いです。 そして気さくな村人達と接していくうちに彼らの生活水準が主人公の知識より低いことを理解すると農地開拓や製鉄の技術を教え、次第に信頼されていく過程も上手く描かれてると感じました。 やがてある事件を機に村人達が主人公と共に戦うことを決意するのですが、このあたりの流れも非常に丁寧。 戦いを続けていく過程で、この世界には沢山の小国や部族が存在して信仰する神がいて…と段階を踏んで世界観を伝えていく構成も見事です。

 ところが物語の中盤以降になるとそれまでの丁寧な描写から一転してかなりの急展開。 特に主人公の正体やカミュの設定、そして今の世界になるまでの歴史に関する流れは急ぎすぎな上にちょっと説明不足に感じました。 もちろんプレイヤーが解釈できる程度の説明はありますけど、それまではプレイヤーに理解しやすい展開だったものが突然置いていかれるような印象を受けてしまってちょっと残念。

 登場キャラは魅力的に描かれていたと思います。 イベントの内容も笑えるものが多く、主人公のリアクションも割と楽しい。 それに女性キャラだけでなく、テオロ・オボロ・ベナウィと言った男キャラもかっこよくて好感が持てました。 それだけに一部でかなり不幸な目にあうキャラがいたのが痛かった。 まぁだからこそそんな目に合わせた相手に対する怒りが増して更に物語に没頭できるという事もあるんですけど。 あとは音声があれば更に良かったんですけどね…音声追加版出してくれないかな…。

 戦闘シーンは各ユニットの素早さ順に行動できるターン制。 とは言ってもユニットの素早さは隠しパラメータになっていてプレイヤーには判らないのですけど…。 仲間になるキャラは総勢12人ほどで、それぞれある程度の個性(初期攻撃力が高かったり機動力が高かったりという程度ですが)はあります。 ただ実際に戦闘に参加できる人数が5〜6人までというステージが多いため、どうしても思い入れのあるキャラばかり使用してしまい、レベル差が開いてしまいました。 私の場合、カルラやトウカなどは殆ど使う場面が無かったです。
 戦闘難易度はかなり低く、各キャラの持つ必殺技などは一度も使用せずともクリアできてしまいます。 アイテムも無いですし正直言って手ごたえが無さ過ぎて物足りないのですけど、ADVパートでの盛り上げ方がなかなか良く、主人公達が敵に対して抱く怒りなどに思いっきり感情移入して敵を蹴散らせるのは良かった。 それとこの手のゲームにありがちな作業感もほとんど無くてストレスとは無縁だった事も高ポイントとして挙げておきます。
 また戦闘シーンとは別にユニットキャラを動かしてイベントを盛り上げてる場面が随所にあり、演出効果としてなかなか良いです。 主人公が鉄扇を振るった後に仲間が突撃していくシーンとか、ムカつく奴が情けなく倒される様とか視覚的にも楽しめました(笑)。

 エロシーンはほとんどのキャラは1回のみ。 寸止めやフェラだけというのを含めると2回以上あるキャラもいますけど全体的に描写は薄め。 最初のエロシーンは中盤になるまで発生しないのですが、正直そのエロシーンを見るまで私はこのゲームが18禁であることを忘れていたくらいです(笑)。 1度のプレイで全てのエロシーンが見れる入れ食い系の展開ですけどアルルゥ・サクヤ・クーヤなど、何故エロシーンが無いんだ?と感じるキャラが結構いるのがホントに残念。 音声も無いですしエロゲーとしては期待しない方が良いでしょう。

 終盤の駆け足展開とエロの薄さが残念ではありますが、物語の吸引力は強烈で時間を忘れてプレイできたので満足度はかなり高め。 最後で挿入歌が流れるシーンでは不覚にもちょっと涙ぐんでしまいました(苦笑)。

私的満足度: ★★★★★ ★★★☆☆


 

最後にキャラごとの雑感も書いておきます。
雑感というより設定なども交えた備忘録で、超ネタバレ内容になってるため未プレイの人は絶対見ない事を薦めます

 

…警告はしましたよ?

 

ハクオロ
 このゲームの主人公。外れない仮面を付けていて素顔は結局最後まで拝めず…。 元々は現代の考古学者だが謎の化石(オンカミ)が目覚めて憑代とされてしまい、アイスマンとして長い眠りに入る。 その後、人類が非常に脆弱な存在となっている時代にアイスマンは発見されて実験材料にされるが、その時にマルタ(亜人種)として作られたミコトやムツミと出会う。 研究所を脱したアイスマンとミコトは束の間の安息を得るもののやがて研究所に連れ戻されミコトは殺されてしまう。 怒ったアイスマンは憑代となっている大神(オンカミ)の力を使って研究員達をスライムにするが、この時に二つの人格に別れてしまいムツミに封印される。 それ以降は二つに別れた人格が交互に目覚め世界に干渉していくことになる。 ところがディーによって本来目覚めない筈の分身が目覚めてしまい、空蝉(主人公)と争ったことによって主人公は重傷を負い、記憶も失ってエルルゥに介抱される。

エルルゥ
 重傷を負っていたハクオロを介抱した少女で戦闘ユニットの中では唯一の回復要員。 素朴な雰囲気とヤキモチっぷりが心地良く、個人的には割とお気に入りなヒロインでした。 ゲーム開始時期より前に空蝉としての主人公に出会っていてアルルゥの生命を救う換わりに空蝉(主人公)の癒し手となる契約をしている。 アルルゥが重傷を負った経緯は不明だが、何となく空蝉とディーの争いが原因のような気が…。 またミコトとアイスマンの直系の子孫のようだがエルルゥ自身はそのことに気付いていない(当たり前か)。

アルルゥ
 エルルゥの妹。主人公を「おとうさん」と呼び慕う。 このキャラ絡みのイベントはほのぼのした雰囲気のものが多くて癒されました。 カミュとのかくれんぼ等は主人公の茶を吹くリアクション共々和んだ(笑)。 エルルゥの妹ということはミコトの子孫でもある訳だし、それ以前にこの世界の人類は皆主人公の素材が使われているので「おとうさん」というのはあながち間違ってはいないですね。 ただ個人的には実の父親の話をある程度は描いて欲しかった。 主人公のもつ鉄扇も元々はエルルゥやアルルゥの父親の物だし、あの鉄扇を使って何をしていたのかくらいは知りたかったかな。

ユズハ
 生まれつき病弱なオボロの妹。 一番幸せになって欲しいと感じたキャラだっただけに、あのエピローグはもうちょっと何とかして欲しかった…。 というか大神(オンカミ)の力を使えばユズハの病も癒せるだろうと思えるので最後のオボロとの会話は「そこで契約を交わせよ」と叫びたい衝動に駆られました。
 兄のオボロの方は男キャラでは一番お気に入り。 仲間に犠牲が出そうな作戦を実行することに躊躇った主人公に対して「兄者はただ一言“行け”とだけ命じれば良い」とか言っちゃってカッコ良すぎです。

ウルトリィ
 調停者オンカミヤムカイの姫。 彼女の子育てエピソードは自身の立場や役目を受け入れているからこそ叶わないと思っていた事に対する反動が良く表せていたんじゃないかと。 彼女の一族が崇めてるウィツァルネミテアとは空蝉(主人公)のことで良いんですよね…。 戦闘要員としては数少ない魔法要員の一人だが、イマイチ使えませんでした(苦笑)。

カミュ
 ウルトリィの妹。始祖の血を濃く受け継いでることで羽が黒い。 この始祖とはムツミで、要するに実体を持たないムツミはマルタの一人に憑依してそれがウルトやカミュの先祖になったということですね。 ただこのキャラはカミュというのはいくつかの人格の一つらしいけど他の人格の事は全く描かれてなかったり、血を欲することとか霊のようなものが見える事など、結構謎なものが謎なまま放置されてるのが何ともすっきりしません。

カルラ
 奴隷剣士の女という設定だが某国の姫。 性格の掴み難さもあって彼女のエピソードは何故そこまで姫であることを隠したがるのかが謎でした。 自分の存在を認めれば弟が自分に頼りきってしまい皇として大成しないという考えから…と勝手に解釈してますが、真偽は不明。 戦闘シーンでは攻撃力の高さは魅力だが素早さが低いようでなかなかターンが巡ってこないのが難点ですね。

トウカ
 武に秀でたエヴェンクルガ族の娘。 イベントシーンではかなりの使い手のように描かれているが実際の戦闘ではほとんど役に立ちませんでした(笑)。 かなりうっかり者というか不幸なキャラという印象。 子を欲しがっていたのに結局最後まで妊娠することは無かったですし…。

クーヤ
 クンネカムンの皇。中盤からの主人公との逢瀬、そして戦いに巻き込まれていく過程などがなかなか上手く描かれてると感じました。 何だかんだで主人公と結ばれると思っていたので最後にああなってしまったのは結構ショックが大きかったです。 彼女の一族は“大いなる父(オンヴィタイカヤン)”の“忠実なる者(クンネイェタイ)”ということですが、大いなる父とは即ち研究所の人間達のことで、彼女の先祖は創造主である人間に可愛いがられていたが、そのことで他のマルタ達の妬みを受けていて研究所崩壊後は虐げられてきたということですな。 そのため研究所を壊滅させた大神を禍日神として嫌悪してる…と。 でも彼女の一族が授かったアヴゥ・カムゥは大神の分身が与えたものですよねぇ…。


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