あえかなる世界の終わりに The chest where all disasters were put... |
発売日:2005.12.22 / キャラメルBOX |
全CGと回想を埋めてコンプリート。
所要時間は1stプレイで14〜15時間、コンプまではスキップ駆使して20時間ほどと言ったところでしょうか。
とにかく1stプレイはやたらと時間がかかりました。
あらゆる物がネットワーク化され、NAIPと呼ばれる人工知能が人々の生活を支えるようになった近未来。
3年前に家族を失った主人公「木ノ崎なつめ」は学生生活の傍らプロのガンシュート競技であるCQショットにて生計を立てていた。
そんなある日、主人公は幼なじみの長谷川柚子から友人のボディーガードを依頼される。
それと時を同じくしてリップルと名乗る電脳怪盗とも出会うこととなり主人公の日常は大きく変化していくのだった…というあらすじ。
ゲーム自体はオーソドックスな選択肢型のADV。
ヒロインは5人で一応それぞれにエンディングが存在しますが基本的なストーリーは1本道で、選択肢によって条件を満たしたヒロインのイベントが合間に挿入される構成。
要するにほぼ全編共通ルートなので1stプレイは時間がかかるものの、2nd以降はかなり時間短縮できる作りです。
全ヒロインが万遍なく登場する反面、お目当てのヒロイン以外の設定などもかなり語られますので、初期印象で一番気に入ったヒロインから攻略するのが吉かも。
難易度的には攻略ヒロインを絞ってプレイする分には低めかと思います。
物語的には学園とアンダーグラウンド(裏社会)とサイバーワールド(電脳世界)を舞台にしたサスペンス物…となるのでしょうか。
主人公は“誘蛾灯”とあだ名されるほど厄介事を寄せ付けるタイプで、次第に巨大な陰謀の渦中にその身を置くことになっていく流れ。
序盤に気の合う仲間達との楽しい学園生活を描くことで、裏社会に関わってしまった後で気付く表の生活の掛け替えの無いさや、仲間達を巻き込みたくないという主人公の想いが良く表せていたんじゃないかと思います。
このあたり「月の子」という設定を今ひとつ活かしきれてなかった『シャマナシャマナ』に比べると格段に良くなっていたんじゃないかと。
ストーリーは全体的な構成は結構良いとは思いますし、二転三転する中盤までの展開は結構楽しめたとは思います。
ですが、中盤以降になるとかなり退屈さを感じるようになりました。
大きな理由としてはプレイヤーが気付いてることを無闇に引っ張りすぎと感じたこと。
主人公は短気で考え事が苦手という性格なので仕方ないとしても、人口知能であるリップルをはじめ頭の回転が早いヒロインが多い割りに特定の事柄には不自然に気付かないのですよ。
“泉の精”絡みなんかは特に顕著で、終盤にようやく関連イベントが発生したときは「おせーよ!」とか画面に向かって毒づいてました(笑)。
加えてオープニングムービーが相変わらずネタバレしまくりで、終盤の衝撃的なシーンが予想通りになってしまったのが残念…というかアレを出しちゃ駄目でしょ。
もうちょっと考えてムービー作ってくださいホントに。
あとストーリー云々とは関係ありませんが、主人公の“見当違いの発想”で辟易しました。
主にヒロインキャラに対して主人公の主観的な思い込みがよく語られるのですが、プレイヤーからすれば見当違いも良いとこなのはバレバレで全く同意できないモノローグが多すぎ。
おそらく主人公の思い込みと異なる意外性を出したかったのかも知れませんが…どうにうもこのあたりの仕掛けが上手くないなぁと感じられました。
キャラクター描写は全主要キャラに見せ場が用意してあり悪くはないと思いますが…妹キャラが何処にも居ないのはどういう事かと(以下略)。
キャラメルBOXと言えば「健気に主人公を想い続ける義妹」というイメージがあったものですから物凄く意外…というかショックでしたわ。
特にこのゲームの場合、護るべき対象として妹の存在はあっても良かったと思うんですけどねぇ。
まぁ個人的な不満はともかく、ヒロインのキャラ立てとしては一言で書くなら無難な感じでした。
エロシーンは一人あたり1〜2回ほど。
複数回あるキャラも本番挿入ありなのは終盤の1回のみとなっていました。
リップル、柚子、ひまわりの3人はエンディング後におまけシナリオとしてエロシーンが追加されます。
シーン自体は使用CGが少なく、尺も短かめで描写も薄い…と実用性は皆無。
せっかく良い声優さんを使っているのに勿体無いですね。
システムまわりは特に不満が無いかわりに取り立てて記述するようなもはありませんが、テキストはやや冗長ぎみに感じました。
何か一つ新事実が加わるたびに把握事項のまとめを行う上に、テキストウインドウに表示される文章の区切りが悪く、パートナーであるリップルのセリフも説明口調なので、どうにもテンポが悪く感じてしまうのですよ。
まぁリップルは一応感情付きAIなので説明口調なのは仕方ないとしても、まとめイベントはそんな大量には要らないし、テキストウインドウに表示する文章も一句点ごとにして欲しかったかなと感じます。
演出面は主に戦闘シーンで少々物足りなさを感じました。
立ち絵やイベントCGは決して少ない訳ではないのでしょうが、やっぱり物語の長さを考えるともうちょっと欲しかった気がします。
ちなみにゲーム中に登場するMMOゲームの背景が『シャマナシャマナ』の使い回しになっていたのは手抜きと見るよりスタッフのお遊びと取ったほうが良いのでしょうね(苦笑)。
音声は女性キャラだけで男キャラは無し。
最近は男キャラも声ありのゲームが多いですから、これも何となく物足りない要因になっているかな。
会話シーンなんかでは特に。
BGMは今回ZIZZではなくDoorsでした。
曲そのものはコレと言って不満はないのですが、ループ終了時の無音時間がやたらと長く感じるのはマイナス。
OP曲、ED曲は結構お気に入りです。
個人的にはエロシーンが薄かったり共通ルート多めというのはキャラメルBOXの特徴と思ってますから別に良いのですけど、シネマティックADVを謳うには物語のテンポが今ひとつなのが難だったかな…。
あとはキャラによってシナリオ落差激しすぎ、未解決の謎多すぎ…と言ったところですが、物語の構成自体はなかなか良く、1stプレイ中は盛り上がるべきところでちゃんと盛り上がれたので個人的には佳作くらいの満足度は得られたと思います。
キャラごとの雑感も少し(ネタバレあり)。
リップル
野良NAIP。
元々「ブルーローズ」と名乗る電脳盗賊(サイバーシーフ)だったが、仕事に失敗して主人公の家に逃げ込んできた。
喜怒哀楽の感情の幅が広く青山ゆかりさんの演技の幅広さも手伝ってキャラ立てはなかなか良かったかと。
ただ主人公側の描写が不足ぎみなのが残念。
主人公がNAIP嫌いになった経緯と、そんな主人公が自称NAIPであるリップルに惹かれる経緯をもう少し丁寧に描いて欲しかったところ。
それとこれはリップルのシナリオである必要は無いのですが、地上世界に関する説明が欲しかったですね。
せめて何故人類の生活圏が地下世界のセドナと呼ばれる施設になってるのか、そして地上を目指すのは何故それほど大変なのかくらいの描写が欲しかった。
長谷川 柚子
学園の優等生で主人公の幼なじみ。
行動の端々から主人公に対する一途な想いを感じられて私的には今回一番萌え転がったヒロインです。
というか柚子以外のヒロインに流れること自体が凄く不自然(言い切った)。
柚子を裏世界に巻き込ませず、あくまで主人公が帰るべき処として描いていた点は好評価。
故にラストの描写不足が惜しまれます。
近江 千冬
柚子の友人でCHIFUYUという芸名で曲を出してる歌手。
物語の発端となるキャラでありながら彼女のシナリオは真相に迫る前にエンドとなる変な構成なのが意表を付かれました。
流石にOPムービーが流れる前にEDになるとは思わなかったですよ。
EDロールもなかったしいわゆるバッドエンドなのが不憫や。
それはそれでも構わないけど、どうせなら柚子との三角関係メインで描いて欲しかったかな。
一応柚子の事を気にしてる描写はあるものの、何もかもが中途半端に終わってしまって物足りなかった。
ナギ
CQショット競技の選手で主人公をライバル視している。
主人公は男と思っているが当然女です。
終盤までほとんど見せ場が無いので、彼女のシナリオは一番“取って付け”感を強く感じてしまいました。
ナギの立場を活かしたルートくらいはあっても良かったんじゃないでしょうか。
主人公に惹かれた経緯も淡々と語るだけだし、エロシーンも既にお互い何度も経験済みな状態なので「なんだかなぁ」と言った印象。
ひまわり
殺し屋の助手をしている少女。口数が少ないペタキャラ。
個人的にはMMOゲーム内で親しくなる描写はもう少し欲しかったところです、欲を言えばバーチャル結婚するくらいまで。
主人公の出生が語られる唯一のシナリオなのに、どうにも中途半端なのが本当に残念。
はっきりと妹としても良いと思うし、主人公が夢で見た瑠璃垣みなも絡みの記憶もこのルートあたりで描いて欲しかったところです。
キャラ的には色々と個人的なツボを突かれまくってなかなかのお気に入りヒロインでした。
キャラのお気に入り順は
柚子 > ひまわり > リップル > 千冬 > ナギ
みりあ先生、今回は立ち絵無しですか…。それと竜平の妹や虎太郎の姉もできれば登場させて欲しかったですね。
私的満足度: ★★★★★ ★★☆☆☆
| |
|
|