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やるきばこ2 エピソードV:〜やるきねこの逆襲〜
発売日:2007-10-19 / キャラメルBOX
 キャラメルBOXのファンディスク第二弾。 「きゃらスタ!?」はほとんど手付かずですが、ADVパートはCG・回想を全て埋めたので一旦終了。 「きゃらスタ!?」の方はのんびりやるつもり。

 過去作4タイトルのアフターストーリー計7本とオリジナル恋愛ADV「真紅のチョコレート」、そしてオンライン対戦も可能なカードゲーム「きゃらスタ!?」で構成されています。 ソフマップのショップ特典CDによって大富豪や特定カードが追加されますけど、その辺は割愛。


 前回の『やるきばこ』でもそうでしたが、これも特定タイトルのFDではなく、キャラメルBOX作品をある程度プレイしていないと全てのコンテンツを楽しめないので通常のFDと比べても敷居はちょっと高めですね。 と言っても全てのタイトルをプレイしていないと楽しめないという訳でもなく、個人的な印象では
『あえかなる世界の終わりに』 > 『アリスマチック』 > 『処女はお姉さまに恋してる』 > 『うつりぎ七恋天気あめ』
の順でお得感が変化するんじゃないかなぁと感じました。 例えば前二つをやってれば残りの二つが未プレイでもそれなりに満足感は得られそうですが、後ろ二つだけだとちょっと物足りなさを感じるかも知れません。 どのシナリオも本編をクリアしてることを前提として語られるため未プレイ者向けの販促効果はなさそう。 ちなみにこの順番は個人的なアフターストーリーの満足度にもそのまま当てはまります。

 そして、もちろん過去作のアフターシナリオでもそれなりのボリュームとクオリティはありますが、オリジナルADV「真紅のチョコレート」がキャラゲーとして予想以上に楽しめたのが嬉しい誤算でした。 シナリオ展開としては凝った仕掛けとかサプライズがある訳ではないですけど、短いながらも世界観は割としっかりしていたし、何より登場キャラ達とのまったりした日常描写が心地良く、キャラメルBOXらしい雰囲気の良さが印象的でしたよ。

 ちなみに7本のアフターシナリオは選択肢の無い完全な読み物(一部エロシーンで選択肢がありましたけど物語的な変化はなし)、「真紅のチョコレート」のほうは序盤から結構な数の選択肢が出てきますけど、恐らくエンディングは一種類だけで途中のエロシーンの相手が3人の中から変化するだけだと思います。 ただ一部の選択肢次第ではCGモードに登録されない某キャラのエピソードが出てこないので注意。


 エロシーンはアフターシナリオのほうは大体2回ほど。 『おとボク』では新キャラや一部の脇役キャラが主人公以外の野郎とHするシーンが出てきますが寝取られとは違うので警戒する必要はなし。 個人的には『アリスマ』のエロが中々良かった。 冬芽編では予想通り3Pがありましたからね(笑)。
 「真紅のチョコレート」のほうは一応回想枠が二つあるキャラがいますけど基本的には4人のヒロイン各一回ずつと考えて良いと思います。 このシナリオはいわゆるハーレム展開なので多人数プレイが欲しかったところ。


 相変わらずファンディスクとしては高めの値段設定ですけど、メーカーの過去作を一通りプレイし、その雰囲気の良さを気に入って身としては十分満足の出来る内容になっていたと思います。


…と先に簡単に所感を書いたところで以降は各シナリオ毎の雑感(ネタバレあり)。


処女はお姉さまに恋してる

Appendix−X 「そして、そこに立つ者たちの肖像(ポートレイト)」
 貴子エンドから約半年後が舞台。 瑞穂・貴子・紫苑の三人揃って翔耀大学に入学し、貴子は瑞穂の父親にも気に入られて楠木家に居候している状態。 そんな折に紫苑に縁談話が持ち上がり、その相手が放蕩息子と噂される貴子の兄「順崇」であると知って二人は紫苑の縁談を破棄させようとするのが主な流れ。
 縁談の裏に見え隠れする月島家の陰謀を暴いていく過程で、市場リサーチや企業戦略論などエロゲとしては珍しい話になってたのが印象的でした。 利益の為に手段を選ばない父親を嫌悪しているとはいえ結果的に経営を悪化させてしまった罪悪感と親友の未来を救えた達成感との板挟みで悩むが、結局は吹っ切って精神的に成長する…という貴子の成長物としては悪くはないですし、今回も二人っきりのときだけに見せるデレ描写はなかなか良い感じでした。 さすが正統派ツンデレ。
 エロシーンは二回。CGが1枚+差分と少なく、尺も短めで個人的には今ひとつ。


Appendix−XI 「恋と愛の主題による変奏曲(ヴァリエーション)」
 紫苑エンドから約二年後が舞台。 一浪して翔耀大学入学と同時に入籍、一年先に入学した貴子や新キャラの「松下桃子」らと共に文化祭執行部の活動を行ってる状態。 そんな折に家では父親の慶行がメイド長の楓を後妻に迎える話が持ち上がり、大学では桃子と学生会長「黒澤隼人」との関係に変化の兆しが現れ始める。 この二組の恋愛の行方を描いていくのが主な流れ。
 瑞穂と紫苑のショートシナリオというよりは『おとボク』の世界やキャラを使った外伝的な恋愛物という感じですね。 どちらの話もドラマチックなものではなく、各キャラの恋愛面での悩みなどは割とオーソドックスで親近感を抱けるものでした。 特に桃子&隼人の臆病さなんかは身に覚えがあるって人も多いんじゃないでしょうかね。 楓のほうはその一途さが素直に可愛いと感じますが、それ以上に彼女がまだ20代だったことが驚愕ですよ…私はてっきり30代半ばかとばかり(笑)。 メインのはずの紫苑は桃子に対する焼き餅っぷりが良かったが、瑞穂共々今回はサブキャラっぽい立ち位置だったこともあって個人的には貴子シナリオのほうが紫苑の印象が強かったりします。
 エロシーンは紫苑が二回、桃子と楓が各一回ずつ。紫苑以外のヒロインは当然その相手は瑞穂ではありません。


あえかなる世界の終わりに

 リップル編とひまわり編の二つのシナリオがあり、それぞれのエンディングから一年後という設定で始まりますが、発生する事件は両シナリオとも共通です。 事件に巻き込まれていく過程が異なるけど敵はどちらでも同じ行動を起こすので終盤の展開はほとんど同じ。 ただ初期状態でリップルの居ないひまわり編のほうが終盤が盛り上がってた気がします。
 そのひまわり編では新キャラ「酒井由香」が爆弾テロに書き込まれたことで事件に足を突っ込んでいく展開になるのですけど、その由香の存在が終盤で忘れ去られてるのが非常に勿体無く感じました。 キャラ立ての良さも去ることながら、由香が怪我をしたことに少なからず関わってたり、テニスの試合への意気込みとか主人公の修羅場慣れした様子に驚いたりとか良い感じに物語を盛り上げる要素になっていたのになぁ。 つかぶっちゃけエロシーンが欲しかったです。
 まぁそれ以外では元作の世界観と雰囲気を維持した中々に吸引力の強い展開になっていて個人的な満足度はかなり高め。 欲を言えば戦闘シーンの演出をもう少し頑張って欲しかったところですが、地下通路での対ジャック戦とかは結構燃えたからいいか。


終末少女幻想アリスマチック

After episode I 「南十字星、漏剋の臺(うてな)」
 小夜音エンド直後が舞台。 ハネムーンで訪れたオーストラリアにて中国系マフィア「三合会(トライアッド)」の凶手(刺客)「蔡小英(ツァイシャオイン)」に襲われる話。
 本編では剣戟バトルだったので銃撃戦というのはちょっと新鮮に感じてしまいました。 戦闘描写として恐らく並…それこそニトロの『ファントム』のように文章だけでキャラの動きを理解できるような手に汗握る描写ではありませんでしたけど見せ場として割と盛り上がっていたと思います。 そして最後のエピローグ…本編でああいう設定が出てた以上は覚悟していましたが、やっぱり切ないですね。 ただいくら私がハッピーエンド好きといっても安易な「奇跡が発動しました」では白けますから、あれはあれで良かったのかなとは思いますけど。 可能なら子供達が出てくる世界での話がまた見たいものです。
 エロシーンはなかなか良かった。 最初のエロシーンとか不覚にも萌えたしね。 二回目のビーチでの後背位も私の嗜好的にヒットしてエロ方面でも満足。


After episode II 「夢幻劇・聖る恋の重荷」
 冬芽エンドから数ヶ月後が舞台。 冬芽、伊織、蔵人の共同生活のような関係が続いており、そんな中で伊織が芸者さんの幽霊「八島」を拾ってくる話。
 冬芽の目が見えてる状態でのHとか洋服姿の立ち絵とか冬芽がお気に入りな私としては中々に嬉しい設定が多かった。 話の展開は花魁だった八島の過去を絡ませつつ、伊織が主人公に対する想いを自覚し、それを冬芽と主人公が受け入れる流れ。 冬芽アフターシナリオでありながら伊織ファン向けの話でもありますね。 戦闘描写としては伊織と主人公の木刀バトルがありますが、メインはやはり3人…というより八島を含めて4人の想いを描いた恋愛描写かと思います。 小夜音ルートに比べると少々インパクトの面では劣りますけど、これはこれでまったりしていて悪くないですね。 しかしラストがあのオチでは主人公はそのうち3人相手にすることになるんじゃなかろうか(笑)。


うつりぎ七恋天気あめ

「恋蛍」
 ノーマルエンド後の夏休みが舞台。 「豊阿弥文子」の両親が海外旅行に出かけたため夏休み期間限定で文子が蓮の家に居候して甘味処の手伝いをしている状態。 そんな折に街の名所である水路から異臭がするという噂が流れたことで調査を行う話。
 文子は主人公の幼なじみの一人で本編の頃から主人公が好きだけど不器用な性格故に無愛想な言動ばかり取っているキャラですが、個人的にヒロインとしての魅力はほとんど感じられなかったキャラなのでプレイ中のテンションは異様に低かった(笑)。 話の展開のほうも蓮・鮎乃・文子の主要キャラ三人が最初から事情を全て理解している状態なのでプレイヤー置き去りになってしまい退屈でした。


真紅のチョコレート

 人間の他に妖魔の血を引く者達も独自に国を作って生活している世界。 人虎の血を引く主人公「森崎春也」は父親が長期間不在なため妹「花凛」と共に屋敷で二人暮らしをしていた。 そんなある日、主人公のクラスに吸血鬼の貴族「霧生紅雪」が転校してきて主人公を下僕としたことで彼を取り巻く環境が慌しくなっていく…というあらすじ。

 ヒロインは吸血鬼の紅雪、人虎で妹の花凛、メイドの夕月、烏天狗の鳥子の計4人。 夕月の種族は最後まで不明なままでしたけど他人の思考が読めるっぽいのでサトリあたりでしょうかね。 他にも塚原耀というサブキャラが居て、選択肢次第ではエンド後にエピローグを見ることができます。

 どのキャラも最初から好感度MAXという主人公モテまくりの王道的ラブコメ展開なので、この手のノリが好きなら満足できる内容ではないかと思います。 紅雪がいきなり主人公にキスしたシーンでの皆の動揺っぷりとか、二人きりのときのヒロインのテレっぷりなどが可愛く描けていて、なかなか安定感のあるラブコメ物と言った印象を受けました。

 主人公は普段セクハラや下ネタギャグを飛ばすしてるけどヒロイン側から真っ直ぐな想いを向けられたりすると誤魔化して逃げるという甲斐性の無さがあり、重要なアプローチはほとんどヒロインから…というのが若干の不満点でしょうかね。 まぁこれはヘタレというよりラブコメハーレム物としての空気を読んだ行動にもなっているので不快感はありませんでしたけど、せっかく重婚が許されてる世界なのだからガンガン食いまくって欲しかったなぁというのが正直なところです。

 人間と妖魔との確執や妖魔達が各々で持つ特殊能力などの設定を上手く活かせば物語の幅はもっと広がると思うので、これと同じ世界観の話はまた機会があれば作って欲しいです。

ヒロインのお気に入り順は
 鳥子 > 花凛 > 紅雪 > 夕月


私的満足度: ★★★★★ ★★☆☆☆

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