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うつりぎ七恋天気あめ
発売日:2007-02-23 / キャラメルBOX
 全エンドを見てコンプ。 所要時間は1stプレイで約7.5時間、コンプまでは20時間前後だと思います。

 八阿多学園の七不思議委員会に所属する主人公「八千古島 蓮」。 彼は最近噂になっている小動物の惨殺事件と七不思議との関連を調査するため深夜の学園に潜入し、そこで魔女の国からの留学生「エリン・グィディル」と出会う。 これを機に主人公は七不思議の真実に触れていくことになるのだった…というあらすじ。


 古い町並みが特徴の街を舞台とし、魔女とか霊とか妖などが主人公にとっては割と身近な存在というファンタジー要素を含む恋愛ADV。 期間は7月上旬から下旬までの約二週間。 ヒロインは7人で基本的には放課後などにお目当てのキャラを選んでいけば良いので難易度は低めです。


 七不思議といえば怪談話=暗めの話をイメージしがちですが、この作品は初夏の季節感とヒロイン達との会話が心地良い爽やかな雰囲気なのが印象的。 主人公は神童と言われるほど成績優秀な上に女顔(ショタキャラ)で面倒見が良く、周囲からは結構慕われているようです。 そして良くも悪くも純粋なヒロイン達、鈍い主人公を弄ったりサポートする幼なじみの鮎乃、更に主人公のペットである三匹の狐精もマスコットキャラとして優れた和み成分を含んでいてキャラゲーとしては文句のないラインナップではないでしょうかね。


 話の展開としては基本的にキャラ紹介も含めた起承転結で纏まっているのですが、独自の味付けとして7人のヒロインルート毎に学園の七不思議を絡めているのが特徴です。 この七不思議の真相などはシナリオに上手く絡められていて、演出効果としても好印象を抱きましたけど、ヒロイン達が苦難に直面する場面…いわゆるシナリオ上の転機への入り方が強引で不自然さを感じたのが物凄く勿体無く感じました。 例えばエリンのルートでは主人公と鮎乃が暴走車に轢かれそうになってた少女を救出するというイベントがあるのですが、これが「魔法を使って少女を助けなかったエリンの過失」となるのは如何なものか。 後の流れを見ると言いたいことは判るのですけど、どうにも強引に感じられて正直白け気味でした。

 それとこの作品は放課後に会いに行くヒロインを選ぶ構成になっているため、折角7人ものヒロインが登場するのに横の繋がりが殆ど無いのも勿体無かった。 妹の華や同居してるエリンなどは他のヒロインルートに入った後もそれなりに登場しますけど、残りのヒロイン達は序盤に顔見せした後は登場すらしなくなりますからねぇ。 複数のキャラ達でわいわいと騒ぐ日常を期待していた身には拍子抜けしました。
 あとこれは個人的な要望になりますが、この作品はヒロイン一人につき七不思議の一つが解明される構成のため、どのエンドを迎えても残りの七不思議は未解決のまま…というのがスッキリしないので、一度のプレイで全ての謎が解決するTrueルートのようなものも欲しかった。 別にハーレムルート希望という訳ではなく(あればそりゃ嬉しいけど)、七不思議に纏わるエピソードは切ない系が多いので放置されたままだと気になって仕方ないのです。


 エロシーンは深雨のみ4つで後は1〜2回ほど。 全員初物で何故か青姦率高めですけど内容自体はエロいというより初々しいとか可愛い…かな。 個人的にあまり実用性はありませんでしたが、このメーカーとしては頑張ってるほうだと思います。 ちなみにスタッフルームのほうにもエリンのエロシーンが入っているので忘れずに(笑)。


 システムまわりは快適でした。 このメーカーは目立った不具合をほとんど出さずに安定していて良いですね。
 CGは華の枚数の少なさが泣けてきますが塗りのほうは素晴らしい。 のり太氏の描くキャラも可愛くてお気に入りです。 毎度お馴染みの八重歯も全員に実装されています。 顔を真赤にして慌ててるときの「はわわ」な表情が良いですな。
 BGMと主題歌は今回ちょっと印象薄かったです。


 キャラメルBOX作品らしい雰囲気とキャラ立ての良さは今回も健在で「キャラゲー」としては悪くないですが、その良キャラに個別ルート以外での見せ場がほとんど無い事と強引な展開で興醒めする場面があった事が惜しまれます。 やっぱり全ルートを纏めて『あえかな』のようにほとんど共通ルートにしてしまっても良かったんじゃないかなぁ。 そうなったらなったでまた共通ルートが長いと文句言いそうですけど。


以下、ヒロイン毎の雑感(ネタバレあり)。


エリン・グィディル
 魔女の国から来た留学生。 高所恐怖症だがド近眼なのでメガネを外せば箒で空も飛べるらしい。 負けず嫌いな秀才タイプ。
 関連する七不思議は「ロッカー錠のおまじない」。 魔女の国の現女王の留学中に発端となったおまじないだと気付き、そこからエリンの祖母が魔力を失った事件の真相を知ることになる。 この流れは良いのですが「他人のために魔法を使うと魔力を失う」という設定はその定義も今ひとつ曖昧でなんだかなぁと感じました。 最後に魔界の扉を封印するイベントがありましたけど、この封印は他人(女王)のためじゃないの? 女王が先生の身体に乗り移ったのも他人(エリン)のためになるんじゃないの? とか屁理屈が出てしまいますよ。 真夏の雪などの演出面は良かったんですけどねぇ。 あとエピローグのあれは要するに帰還通知を無視した不法滞在ってことで良いんでしょうかね。

明松 月砂
 主人公の幼なじみの一人。 普段は人の姿をしているが正体は街の神社に祭られている稲継魂大神で昔怪我を主人公に手当てして貰ったことで3つの願いを提示し、主人公に友人となることを求められて現在に至る。 学園の中庭にある大樹が月砂の塒へ通じていて主人公もよく訪れる。 また主人公のペットである三匹の狐精の創造主。
 関連する七不思議は「妖精のチェーンメール」(で良いのかな?)。 と言っても謎の解明ではなく、月砂の宿敵「火火結命(ほほむすびのみこと)」を封じる手段として活用。 普段の姿は妖としての力を失った状態のもので、主人公とHすることで魂を分け与え力を取り戻す…というのは予想通りでしたが、力を取り戻した月砂が幼女化するのはもうGJとしか(笑)。 月砂のクーデレっぷりも中々良かったですが、このルートでは三匹の狐精達も見せ場があったのもマル。

鷺ノ宮 ひより
 納豆好きな後輩。 由緒ある旧家の娘でお目付け役でもある智香といつもつるんで漫才のような会話を繰り広げている。 優秀なボケキャラ。
 関連する七不思議は「桜の古木の呪い」。 鷺ノ宮の家格を欲する相手との見合い話が持ち上がり、断った場合は鷺ノ宮家に依存している智香の家にも影響を及ぼすことを知ってしまう。 そして智香の家の平穏と主人公への想いを貫くために自らの魂を贄として桜の精に願いを託す。 でも桜の精の正体はひよりの祖母の親友だったから祖母の手紙を見せたら魂を取らずに願いだけ叶えてくれましたとさ…というお話。 悪くはないんだけど淡々と進んで行ってる印象を受けてしまい勿体無かったです。

井荻 智香
 凛々しい外見とは裏腹に蜂蜜たっぷりの激甘カレー好きな先輩。 このルートではひよりのお目付け役というより親友という面が強調されて描かれてる印象。 ひよりのツッコミ役。
 関連する七不思議は「古井戸の精」。 ひよりルートでは智香が主人公に嫉妬してたけど、智香ルートだとひよりは二人を祝福してくれます。ええ娘や。 ひよりがお見合いで云々の流れはひよりルートと同じでですが、こっちでは桜の古木の呪いを解除するため智香が古井戸の精へ願い事をする展開。 代償として智香の主人公への想いが消えてしまったけど無問題でした…という何だかなぁという流れで苦笑してしまった。

亜多良 巫鳥
 学園の先輩で稲継魂神社の巫女さん。 不自然なくらい横文字を使わない。大和撫子だからです(←結論)。 姉の静鶴と神社で二人暮らしをしている。
 関連する七不思議は「逆さ連理の精」。 それ以外にも13階段の悪霊とか体育倉庫の謎といった退魔師としての活動を通じて惹かれあっていく過程が他のルートより丁寧に描かれてる印象を受けました。 そして恋愛が出来なかった事が心残りとなっている六条斎季が巫鳥に憑依し、主人公は斎季の望みを叶えるために恋人を演じる…という流れ。 その後も巫鳥の霊感が無くなるなど一波乱あって他のルートよりもシナリオボリュームがありますね。 キャラ自体も割とお気に入り。 初めて主人公の家に招待されたときの動揺っぷりが可愛いかった。

天矢 深雨
 鮎乃の姉で学園の養護教諭。 ゲーム好きで引き篭もりで主人公を携帯で呼び出しては雑用を依頼している。 主人公のクラス担任の霍野茉清とは大学時代の同期生。 彼女曰く深雨は「ぱーぷーな娘さん」。 語尾に「〜だよ」が付くだよだよ星人でもある。
 関連する七不思議は「校庭を走る少女」。 陸上の練習中に脳梗塞で倒れて死亡した深雨の親友が霊の正体。 深雨はその時に何も出来なかった後悔の念から養護教諭になる。 親友の心残りが「走ること」で霊が主人公に乗り移って深雨と共に走ることで昇華…という割とありがちな話ですけどエリンの見せ場も多くて悪くない流れだったと思います。 でもそれ以上にこのルートは主人公の女装がヤバすぎる。 あのセーラー服姿は反則だろ。 エロシーンも他のルートより頑張ってましたね。 「マニア心を擽る黒スト」に同意することは吝かでないです。 それとシナリオ内容と直接関係は無いけど『シャマナシャマナ』の街はすっかりネットRPGの舞台として定着してしまいましたね(笑)。

八千古島 華
 主人公の義妹。 両親が従兄妹同士なのでそれなりに血の繋がりはある。 甘味処「八千」の看板娘として、そして神童と言われてる主人公の妹として人前では品行方正な言動をしてるが主人公の前でだけはだらけた姿を曝す。
 関連する七不思議は「久々利山神の呪い」。 華の友人の想い人が華に好意を持っていて、それを妬んで呪いをかける。 そしてその呪いを解除しようと放課後にクラスメイト数人で儀式を行うが、逆に呪いが発動して華は自我を失ってしまう。 その時、最も想う相手を殺そうとする呪いに掛けられた華が攻撃した相手は主人公だった…という流れで演出としてなかなか良いですね。 『BLUE』のなずな、『シャマナ』のリースと同系統の、私がキャラメルBOXに求める妹として非常に満足のいくキャラでした。


お気に入り順は
 華 > 深雨 > 巫鳥 > 月砂 > エリン > ひより > 智香

んで、やっぱり親友の鮎乃は攻略対象外なのね…文子はどーでも良いけど。


私的満足度: ★★★★★ ★☆☆☆☆

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