Rascal・改 − Game Impression
[メニュー枠OFF]

終末少女幻想アリスマチック
発売日:2006-10-27 / キャラメルBOX
 全てのエンドを見て終了。 所要時間は1stプレイ約8時間、コンプまでは23時間弱。

 西暦2022年、世界は他次元からの干渉によって発生する時空融合現象「散花蝕(ペトレーション)」の脅威に晒されていた。 政府は散花蝕の脅威に対抗するためのデミウルゴスシステムを新東雲学園都市に建造し、主人公「丸目蔵人」はそのシステムを駆動させる為の適格者の一人として九州の田舎町から招聘された。 そして主人公と同様に全国から招聘された少女らと共に世界の運命を変えるため闘うことになる…というあらすじ。


 選択肢による好感度の累積値によってルートが分岐するタイプのADV。 4〜5つの章で構成されていて1〜3章がほぼ共通ルートとなっています。 章始めにはOPムービー、章終了時には次回予告が入るお馴染みの演出も健在。
 ヒロインは6人。 双子は2人で1ルート、そして何故か伊織のみ2種類のエンドが存在します。 一応攻略順による規制がありますが、好感度の上昇値は表示されるし、エンディングを迎えた後のマスコットキャラによる寸劇の中で色々とヒントが語られるので難易度は低めでしょう。


 少女剣劇・救世虚構恋愛奇譚ADV…ということで(?)、何か色々な設定がゴチャゴチャと出てきます。 主人公達は学生なので学園物っぽい日常が描かれていく事もあるけど、主人公を含めた主要メンバーはみな古流剣術の使い手で各流派の薀蓄や仮想現実世界でヒロイン達とバトる展開も見所。 更に多次元世界の概念を始めとしたSF要素、グノーシス主義やクトゥルフ神話から用いた名称…など何とも無節操というか、ごった煮感漂う内容になってました。
 まぁそんな感じで色々と詰め込んでますけど話の展開は分かり易いです。 要約すると…
 「時空の歪みでこの世界が大ピンチ」
     ↓
 「だからアーティファクトを使って秘密兵器を作った」
     ↓
 「でもソレを駆動させるには人間の高い精神力が必要」
     ↓
 「だからお前ら殺し合え」(←いまここ)
…という流れです。 上の矢印を一つ追う度に「どうやって?」とか「何故?」という疑問が沸くとは思いますが気にしてはいけません。 その辺の理由付けについてはゲーム中に観影先生や圭さんが楽しそうに語ってくれますし、その設定が物凄く強引なこじつけになっているのでコレはコレでこのゲームの見所の一つになっていると思いますよ。 「その発想は無かったわ」と思わず負けた気分になること請け合いです。


 登場キャラ達は変人揃いではありますが、キャラ立ては良いですし萌えポイントはしっかり押さえていたんじゃないでしょうか。 武道を嗜んでるからなのか皆礼儀正しく(約一名傍若無人なロリがいましたが)会話や日常シーンでは良い意味で落ち着いた雰囲気がありました。 かと言って退屈な訳でもなく癖のあるキャラとのテンポの良いやり取りを十分楽しめます。 またそういった日常会話の中にもしっかりと伏線が張られてたりするのも好印象。

 ただ主人公をはじめどのキャラも現代社会で生活してきた割に肝が据わってるというか達観し過ぎな感はありますね。 殺し合いに臨む際の覚悟なんかホントに武芸者って感じで活き活きしてますから、もし平凡な日常を送ってたら周囲から浮きまくりだったんじゃないでしょうか。 仮に主人公が普通の企業へ就職しようとしても
 面接官「貴方の特技は何ですか?」
 主人公「はい!タイ舎流剣術での喧嘩殺法です!」
とか爽やかに答えそう。
 まぁそんな武芸者揃いなのでバトルシーンはかなり力が入っていて良い感じでした。 仮想世界での一対一の死合だけでなく、二章あたりから日常シーンの中でもレムナントという敵が出てきてバトル展開があるのですけど、こちらの戦闘では登場キャラ達との共闘になって中々に熱かったです。 やっぱり背中を預けながら戦う描写は良いですな。


 このメーカーらしく共通ルートが長くヒロイン個別の展開は短めではありますが、ルートによって終盤の展開に結構違いがあったのはマンネリ防止にもなり良かったんじゃないかと思います。 どのルートもキャラの設定や目的に変化は無いけど、特定のルートではそのルート固有の行動をしたことで敵となるキャラに変化があって中々に魅せてくれました。 まぁその分、各ルート毎に次々と新設定が出てくるので把握するのに苦労するのですけど。


 エロシーンはヒロイン毎に1〜2回。 双子の中条姉妹はそれぞれ1回ずつに3Pがひとつ。 他にサブキャラのエロがありますが、そちらは主人公とのHではありません。
 キャラによっては主人公がベッドヤクザっぽくなったりしてシーン自体も頑張ってはいますが、私はそれ以上にヒロインのキャラ立てと恋愛描写の良さからくる互いの気分的な盛り上がり方が良く描かれていたのが良かったですね。


 システムまわりは安定してました。 敢えて不満点を挙げるなら全員分のエピローグを見るための好感度調節が面倒臭いことくらいでしょうか。 タロットカードとかモーションノベルシステムと言った売りにしてる要素に関しては目新しさは無いんですけど無いよりはあったほうが数倍良いですな。 薀蓄用の小窓も相変わらずで良かったと思います。


 私はこの作品を「キャラゲー」として、そして「剣戟物」の方面に期待してたので、プレイ開始当初は膨大な設定と長々と語る薀蓄に辟易したことは確かです。 実際に薀蓄の内容を理解しても「何故そういう設定になっているのか」が判らないものが多かったですしね。 ですが、それらの設定とその上で動いているキャラの言動が上手く噛み合って「雰囲気ゲー」として中々に楽しめた作品でした。


以下、キャラ毎の雑感(ネタバレあり)。


月瀬 小夜音
 新陰流の剣士。得物は三池典太。 月瀬家の当主であり財団(ファウンデーション)に雇われた諜報員として学園に潜入中。 いつも真赤なドレス(錘入り)を纏っている。
 このキャラはギャップ萌えが凄かったですね。 自信家で最初の真剣勝負で主人公を打ち負かす程の剣の腕と優秀な諜報員という超人っぷりを誇る一方で恋愛方面の初心さがたまりません。 デート時のランジェリーショップとか、ひかりと一緒に風呂に入っている事実を知って動揺する様とか、正式に付き合う前から周囲から公認扱いでネタにされてたりとなんかニヤニヤが止まりませんでした。 個別ルートの展開では信綱とのバトルが良かったけど観影は要らなかったなぁと。 あと不治の病の設定はやっぱり蛇足だと思います。

觀興寺 六花
 寶藏院槍術の使い手。得物は金房兵衛尉政貞の十字槍。 主人公を兄のように慕っている。
 このキャラは序盤から登場回数が多く、大食らい・ペタ胸・謎の自室といぢりネタも豊富でお笑い&下ネタ担当というイメージしかないですが、良いムードメーカーだったと思います。 個別ルートは個人的にイマイチ。 唐突に出てくる手袋の設定とかはともかく、STGで剣の修行とかなめてんのかと思った。 ヒロインよりサブとして良キャラ。

中条 白衣・黒衣
 富田流小太刀の使い手。得物は長曽祢虎徹。 姉の白衣は内気系、妹の黒衣はシスコンで攻撃的と非常に判り易い設定。 姉妹共に父親を嫌悪している。
 白衣のほうは黒衣が意識不明のうちに主人公をゲットしてたりと結構打算的ですね。 黒衣のほうが感情が読み易いぶん可愛げがあったと思います。 勉強イベントから初Hまでの主人公への態度はなかなかよさげ。 個別ルートでも黒衣が一度死んでいて、それを自覚した後は一人でもデミウルゴスで世界改変ができるとか優遇されてましたし…っていうか何だよその設定。 エピローグの爛れた関係は全エンドで一番のお気に入り(笑)。

疋田 伊織
 二天一流の使い手。得物は処刑刀(エグゼキューター)。 デミウルゴスシステムを開発した故・疋田博士の娘。
 色々と予想外だったキャラですね。 二天一流とか最初に言い出したときは「エー」とか思ったし、何気に作品の中で重要な位置を占めていてルートが二つあったのも驚いた。 根暗のネガティブ思考のキャラかと思いきや純情キャラで且つボケキャラ要素も保有してたりと何かと優遇されまくってましたな。 冬芽エンドのエピローグでもちゃっかり登場するし。
 一連の事件の黒幕である「深海に仕えし者(アビッサル)」の混血で多くのルートではその血が目覚めて敵として殺される展開が多く、個別ルートでも最初の展開では死亡するけど、この展開があるからこそハッピーエンド時はなかなか感慨深いものがありました。

刀伎直 冬芽
 巫術に長けた巫女さん。 生まれ付き目が見えないが人や物の魂魄を感じることができるので目が見えているように行動できる。
 意思は強いけどぽややんとした性格で素直に可愛いと感じるキャラですね。 図書館で手を繋いで眠るシーンなどは中々の破壊力でしたよ。 終盤に開放されるルートでは実は人間ではなくアマト(倭姫)と呼ばれる神の転生体という超設定が出てきて驚いた。 しかも信綱(N=素戔嗚)やソフィア(クーリー=菊理媛)と兄妹ときたもんだ。 まぁこのあたりの設定とかラストの都合の良いハッピーエンドとかちょっと苦笑することもありましたが個人的には一番のお気に入りキャラですね。

 それにしても主人公は凄いねぇ。 前世は上泉信綱(スサノオ=素戔嗚)の弟子にして今生では親友。 そしてひかり(ソフィア=菊理媛)の初恋の相手で冬芽(倭姫)の恋人ですか。
 そういやこのゲームのキャッチコピー「私の恋は、世界を救う――」というのは最初はパッケージにでかでかと描かれた小夜音の台詞かと思ったけど、あのエピローグでの手紙を見るとひかりの言葉なんでしょうかね。 まぁどのヒロインにも当て嵌まると言ってしまえばそれまでなんですが。

お気に入り順は
 冬芽 > 小夜音 > 黒衣 > 白衣 > 伊織 > 六花


私的満足度: ★★★★★ ★★+☆☆☆

Copyright(c) 2007 SHEO