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ダンシング・クレイジーズ
発売日:2005.09.30 / ソフトハウスキャラ
 CG・回想・アナザーシナリオ全て100%でコンプリート。 所用時間は1stプレイ4〜5時間、コンプまでは35時間ほどだったと思われます。

 サラリーマン生活の傍ら副業として賞金稼ぎをしている元殺し屋の主人公「伊奈瀬 晶」。 彼は娘の「姫子」との平穏な生活を求め、裏社会から足を洗うために賞金稼ぎとして一定年数を勤め上げるか、一定金額を組織に納めなければならない。 彼は無事に平穏な生活を手に入れることができるだろうか…というあらすじ。


 主に賞金稼ぎの依頼実行・サラリーマンとしての会社勤め・市内徘徊を行っていくことで進行する賞金稼ぎSLG。 過去のソフトハウスキャラのゲームと同様に序盤から色々とできるようにはなっていますが、今回は上記の3つを行っていればコンプ可能です。 個人的には同メーカーの過去作と比較して最も取っ付き易く、難易度も低いゲームになってるのではないかと感じました。
 ただ、舞台が加来山府であること、そしてランダムに発生する依頼や主人公をサポートする支援者達など、結構『真昼に踊る犯罪者』のゲームシステムを継承しているので真昼が未プレイだとまた違ってくると思いますけどね。 真昼で登場したキャラもかなり出てきますし。

 ゲームは1週間単位で各種コマンド実行していき、初期段階では150週目で強制エンド。 それ以前にエンディング条件を満たしていればいつでもエンドに突入できる作りになってます。 また『巣作りドラゴン』と同様に周回プレイを前提とした作りになっていて主人公のパラメータや所持金、そして支援者数人を引き継いで繰り返しプレイが可能でした。

 プレイしての第一印象は「良くも悪くも単調」と言ったところでしょうか。 ただひたすら「会社」コマンドを実行するだけの会社勤めは言うに及ばず、メインとなる賞金稼ぎにしても“依頼を選んで戦闘”をただ繰り返すだけなのが拍子抜けです。 『真昼〜』では戦闘に至るまでの調査や尾行といった前段階にも成否判定があってゲーム性が高く感じたものですが、何でも屋と賞金稼ぎという職種の違いがあるとは言え、今回は強いメンバーを集めて(育てて)依頼実行を繰り返すだけなのが物足りなく感じました。
 あとはイベント付きの依頼が少なすぎ。 というか主要レギュラーメンバーとの戦闘以外はほとんどイベントが無いのも不満です。 賞金首を倒したときに「捕まりたくねぇー!」と叫ぶだけでなく、CG無しのテキストオンリーでも構わないからもっと賞金首たちの必死ぶりや外道っぷりを演出して欲しかったですよ。

 戦闘シーンは陣形システムの導入やユニットの行動が視覚的に確認可能になっているのはマル。 陣形によっては損害が大きくなったり逆に一瞬で片付いてしまったりとなかなか試行錯誤できて良かったのではないかと。 ただまぁ試行錯誤するほどの強敵がほとんど居ないのが難点ではありますが。
 ユニットは職業や手持ちの武器によって見た目が変化するのが良かったです。 特に今回は巫女さんが支援者として雇えるようになっていて、しかも剣・弓・槍・薙刀と複数種類存在するのが素晴らしい(笑)。 雇用する支援者の職種はランダムなのですが頑張って巫女×8の部隊を編成しましたですよ。 8人(場合によっては9人)の巫女さんが主人公を援護するように配置される陣形や戦闘はまさに至福のひと時。 残念ながら全て汎用キャラなのでセリフの一つもありませんが、戦闘中や戦闘後のやり取りを脳内補完して悶絶していたのはここだけの秘密なのです。
 この戦闘シーンが過去作と比べて今回一番進化したポイントだと思いますが、個人的には画面効果をもう少し派手にして欲しかったところです。 戦闘開始直後のスキル発動時は結構派手な演出があるのに、手持ちの装備にミサイルや人工衛星レーザーがあった場合はいつ使ったか分からないのが寂しい。 あとは支援者達の装備もある程度プレイヤーが操作できたらもっと戦術の幅が広がって楽しめたんじゃないかなぁと感じました。

 シナリオ展開は一人娘と平穏な生活を望む元殺し屋の主人公と、そんな主人公の存在を知って接触して来るかつての家族とも言える同業者達、そして次第に明らかになっていく主人公の過去…と割と燃える材料が目白押しなのですが、悲しいことにゲーム本編ではかなり淡々と語られてしまいます。 しかも結構重要な出来事を本編では語らず、おまけエピソードのほうに収録されているのが大いに不満。
 ゲーム本編のメインはSLGだから、長々と昔語りを挿入するとテンポが削がれる…といった製作者側の配慮なのかも知れませんが、ゲーム本編で苦労して辿り着いた先でのイベントだからこそ盛り上がったり印象に残ったりするものも多くある訳で、そういった物までおまけエピソードに回すのは止めて欲しかったですよ。 特にリンテールと姫子、それと“拳”関連のエピソードはもっと本編に絡めてくれないと、あのエンドだけでは訳わかりません。

 それと主人公が元々凄腕の殺し屋だったということもあるのでしょうが、殺るか殺られるかという職業に身を置いている割に緊迫感が今一つ感じられません。 主人公はゲーム中で裏家業がバレないよう目立たない行動をしている事は描かれてますが、プレイヤーである私にその緊張感が伝わらないのです。 このあたり、例えば戦闘で一定以上のダメージを受けると休養のため会社に出勤できなくなる(数回続くとクビになる)等、ある程度プレイヤーが取る行動にも緊張感を持たせられる作りにした方が良かったのではないかと。 もしくはバッドイベントをもう少し用意するとか。

 キャラクター描写に関しては単発系イベントが多い割に個性が出ていて悪くは無いですが、先にも書いたようにゲーム本編ではあまり掘り下げた描写が無いのが残念。 ヒロインキャラなどはイベント=エロシーンという感じでしたし。
 更に『真昼に踊る犯罪者』のキャラが頻繁に登場して結構ストーリーにも絡んでくる上に天然ボケも装備しているので、正直言って今回のキャラを完全に食っていたと思います。 真昼プレイ済みの人にとっては思い入れもあるでしょうし、何よりやつらの反則的な強さはラスボスすら霞んでしまうほどで、かなりのインパクトがありました。 必ず戦わなければならない訳ではないのですけど、ファンサービースとしてはちょっとやりすぎな気もします。 余談ですが『うえはぁす』の主人公とヒロインも出てきました。 こちらの方がファンサービースとしては妥当な絡みだと思いました。

 エロシーンは基本的にヒロイン4人分のみ。 しかも4人のうちの一人リンテールに至ってはプロローグでの1回のみ。 他の3人は10回以上ありますが、いつものソフトハウスキャラらしく前戯もそこそこに即挿入&速射。
 最初のエロシーンは無理矢理系が多いですが今回はヒロインも同意済み(笑)。 序盤の数回は導入部分の描写を含めて結構良い感じなのですが、回数が進んでいくとCGの使い回しが多い上に挿入後から始まるものが多くなるので実用性のあるシーンは少なめです。
 それと本編とは別におまけのアナザーストーリーのほうにサブヒロインとのエロシーンがあります。 どれも何故本編で使わなかったんだろうと思えるものばかりで、なかなか良さげでしたよ。 今回のキャラだけでなく、『真昼〜』のヒロインや『うえはぁす』のヒロインのエロシーンもありました。 当然『真昼〜』のキャラは一義と、『うえはぁす』のクリスはエリオットとのHになってます。

 ストーリーを進行させるトリガーさえ解ってしまえば比較的テンポ良く進みますし、ゲームバランスも悪くは無いのですが、先にも書いたようにやることがかなり単調な上にエンディング数も少なく、上手くプレイすれば2回目のプレイで全てのエンドを見れてしまうという…ソフトハウスキャラのゲームとしてはかなり小粒な印象です。 加えて過去作のようなやり込み要素もあまり無いので飽きが来るのも比較的早かった。 もうちょっと長く遊べると思っていたので少々物足りなさを感じたゲームでした。


キャラ別雑感は少しだけ。


伊奈瀬 姫子
 主人公の娘。 の割に本編では悲しいくらいイベントがありませんでした(美雪関連か“出題者”関連くらい)。 母親の件やリンテールとの関係など本編で語ってくれてたらかなり思い入れのあるキャラになったと思えるだけに残念です。

秋村 美雪
 主人公の会社の課長(主人公とは部署が違うので直属の上司ではない)。 元々主人公に気があったが、姫子がきっかけで親密になってからは押しかけ女房状態。 個人的には主人公の過去を知った時の反応などを見てみたかった。 というか、3Pエンドでも裏家業のことは知らされていないままなんでしょうかね。

葉木崎 唯 (“女王蜂”)
 組織と賞金稼ぎとの仲介役をやってる零の妹。 賞金稼ぎに憬れていて主人公に負けてからは押しかけ弟子状態。 主人公に対する懐きっぷりがかなり萌えれてエロシーン後の会話とかで転がってました(笑)。

サクラ (“刀”)
 “殺し屋の誓約”のメンバーの一人。 幼い頃に主人公に拾われて殺し屋になり、その頃から慕っている。 今回の来日で主人公に負けてからは押しかけ所有物状態。 姉のカエデや主人公との過去など書けることは一杯ありそうなのにほとんどエロシーンしかイベントがないのが残念です。 姫子の事情などもサクラには伝えるべきだと思うんだけどなぁ。

リンテール
 死神。このゲームの真のヒロインらしい。 本編でこのキャラの過去が語られることは無く、いきなりエンディングになったときはポカーンとした。 主人公が他の女に手を出してリンテールの相手をしなくなったことを寂しがる描写などもっと描いて欲しかったです。

ミリア (“蜘蛛”)
 主人公の養母(養姉)。主人公に殺しや女を教えたキャラらしい。 “出題者”を使った一連のイベントを画策したりと恐らく本編では最凶キャラじゃないかと。 一時的に仲間になるが、雇用費高いよ…。
 あとミリアとは関係ないが、“棘”など他のメンバーも出して欲しかった。


お気に入り順としては
 唯 > サクラ > 美雪 = 姫子 = リンテール >>> ミリア の順。

 あと、書いていませんでしたが何でも屋の氷野麻紀って社員に昇格していたんですね。 『真昼〜』では支援者となってからは殆ど出番がありませんでしたが、なかなか美味しいポジションについているようで嬉しい限り。
 個人的に『真昼〜』ネタとしてはグノーシス(欧州犯罪組織)絡みなどが関わってくるのかと思ってましたが、全く影も形もありませんでしたな。 ま、続編に期待ということで。


私的満足度: ★★★★★ ★★☆☆☆

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