Rascal・改 − Game Impression
[メニュー枠OFF]

あしたの雪之丞
発売日:2001.08.31 / elf

◇ あらすじ

 私立鹿島学園へと転校してきた主人公「雪村 雪之丞」。 その転校先で主人公は元気で明るく皆から慕われているお節介焼きの女の子「春日せりな」と出会う。
 主人公は転校前に起きた“ある事件”がきっかけで心を閉ざし自分の殻に閉じこもりがちだったが、せりなを始め鹿島学園で出会う人たちと触れ合っていくうちに少しずつ打ち解けていくようになるのだった。


◇ ゲーム概要

 ゲーム中に出現する選択肢と放課後の場所移動によって物語が進行・分岐するオーソドックスな学園恋愛ADV。 放課後の場所移動はどこ行けば誰に会えるのかが一目で判るようにSDキャラが表示されるので、お目当てのキャラをストーキングすれば難易度としてはそれほど高くないと思います。

 ゲーム期間は10月1日からの約1ヵ月間でヒロインによって若干変わってきます。
 攻略可能なヒロインは7人。 そのうちの6人はゲーム開始直後、もしくは数日経過すれば登場して物語が展開していきますが、残りの一人「久保晶子」は中盤以降の攻略対象ヒロインが決定した後になって登場してきます。 これがこのゲームの特徴でもあるんですけど、前半は転校先での出会い〜特定ヒロインと惹かれ合うまでを描いた物語で、後半がそのヒロインと久保晶子との三角関係を描いた物語という感じで展開していきます。

 エンド総数は恋愛ADVとしては多めの35種類。 ただ分岐条件が比較的判り易いのでエンディングコンプリートはそれほど難しくはありません。


◇ システム

 CD-ROM2枚組で1枚はインストールDiscになっています。 インストールは標準(700M)と最大(1.2G)から選択できますけど最大インストールをしてもゲームの起動時にはGame Discが必要となってました。

 画面サイズはフルスクリーンと640×480の窓との二通りから選択可。 メッセージは表示速度の変更は出来ませんが、ウエイト無しなので個人的にはOK。 スキップはCtrlキーで可能で既読のみをスキップさせることも可能です。 テキストの履歴機能も備わっていて特に不満は感じませんでした。

 セーブやロードはゲーム中にいつでも可能で計33ヶ所まで保存できます。 数的にも十分だと思うしセーブ時にコメントを入力できるのもあり難かった。 尚、コメントは自動でも入力してくれます。
 全体的には動作不具合は全く発生せずに安定していました。このあたりは流石ですね。


◇ グラフィック

 原画は「ながせ まゆ」さん。 好きか嫌いかで言えば断然好きな絵柄ですし、キャラの立ち絵も表情パターンが豊富で良いと思います。
 CGの質は高いですね。 枚数的にはそれほど多くはありませんけど、背景・人物共によく描かれていると感じました。 肌の塗りがエルフ作品らしくテカテカしてるのが特徴(笑)。

 また、このゲームの売りの一つである「アソコアップモード」というのがあるんですが…これはイベントCGなどで股間や胸などを拡大表示してじっくりたっぷり鑑賞できるという画期的な機能です。 まぁ、すぐに大した機能でないことに気付いて飽きたけど。

 CGモード及びエロシーンの回想モード、そしてエンディングの回想モードがあり、共にトップの「SPECIAL」メニューより入れるようになってます。 CGはキャラ毎にサムネイル表示され達成枚数も表示してくれるようになってました。


◇ サウンド

 PCM再生の全25曲。 どの曲も使用されてるシーンに合っていて違和感は無し。 曲自体も個人的には結構気に入ってます。 特に「穏やかな季節」「たどり着いた心」などのピアノの旋律がメインの曲はいい感じ。
 EDでは「Rebirth」というボーカル曲が再生されますけど、こちらはコレと言った印象は受けませんでした。

 音声は主人公以外フルボイス。 声優さんの演技力も高いですが、どの声もキャラに合っていて気に入ってます。 特にせりなと晶子のダブルヒロインは個人的にツボでした。 ちなみに主人公の名前は固定なので、名前で呼ばれる場面も声入りです。

 音楽鑑賞モードはCGと同様に「SPECIAL」メニューより入れます。 ただゲーム中に再生されていない曲については鑑賞できません。


◇ 感想まとめ

 エルフの学園恋愛物の主人公といえば蛭田氏特有の『○級生』シリーズなどのポジテブ思考のわんぱく坊やというイメージがあるんですけど、このゲームの主人公はひたすらネガティブな思考をしています。 アージュの『君が望む永遠』をはじめ、最近この手のウジウジ系の主人公が増えてるし、個人的には蛭田キャラのノリを求めていたので、これに関しては嬉しくない誤算でした。 加えて主人公は何が原因で悩んでいるのかが初期状態ではプレイヤーには判らないので主人公に感情移入できなかったのもマイナス。

 ただメインヒロインの「春日せりな」が江戸っ子気質でノリの良い性格をしているので、主人公は済崩的にせりなやその周囲の人間達に巻き込まれつつ比較的コミカルなシーンが数多く存在するため、前半部分に関してはそれほど重苦しい雰囲気にはなっていません。
 この前半部分というのが所謂ヒロイン選出が目的となっていて、特定のヒロインと互いに惹かれあい、仲良くなっていくまでの過程が描かれていきます。 少々イベントのインパクトが弱いのが難なのですけど、そこはそれ、主人公の容姿というのがすれ違う女の子が全て「ぽぉ〜」となってしまう程の優男ってことでフォロー出来てるんじゃないでしょうか。 …所詮男は顔なんですねぇ(しみじみ)。

 そして後半になると前半のコミカルなノリから一転して重苦しい雰囲気になってきます。 というのも、主人公にとって心を閉ざしていた原因の一つになっていた幼なじみの女の子が登場し、前半で選出したヒロインとの話に関わってくるためです。
 主人公にとってかつては最も近い位置にいた女の子と、転校してきて孤独だった自分を元気付けてくれた女の子との狭間で葛藤していく様を描いた物語が進行していく訳ですが…最終的にどのような決着を付けるにせよ、学園恋愛物の王道らしいストーリー展開になっていました。 逆に言うと目新しさは無いんですけど、変に捻った展開になるよりは良のではないかと。 ちなみに奇蹟とか超常現象などの類は全くない正統派のシナリオなので、この辺りは評価してます。

 エロシーンは互いの気分が盛りあがった場面で上手い具合に挿入されていて、恋愛物にありがちな唐突感はそれほど感じません。 シーン自体もお互いの初々しさが出ていてなかなか良かったですよ。
 展開によっては主人公がヒロインを半ば強姦してしまうシーンとかもあるんですけど、これは若さ故のちょっとした暴走って感じで、いわゆる鬼畜描写に期待すると外します。 まぁ和姦・強姦シーン共に実用度に関してはイマイチかも。
 このゲームの売りになってる「アソコアップモード」も、「局部が拡大して見れる?…だから何さ?」って具合で特に必要性を感じませんでした。 どうせやるなら全てのCGの全ての部分が拡大できるようにして欲しいですよ。

 結論としてはADVゲームとしてシステムやストーリー展開は共によく出来てはいるが、イベントのインパクトもキャラの萌え度もエロシーンの内容もどれが飛び抜けている訳でもない無難なゲームに落ちついてしまっている感じがしました。 これからエロゲーを始めてみようと思ってる人や、まだエロゲの世界に入って日が浅い人は楽しめる要素があると思いますが、恋愛系のADVをある程度プレイされてる人には今一つお薦めする要素に乏しいかなと感じた次第です。


◇ お気に入りキャラ

 後半に転校してくる幼なじみの「久保晶子」ですね。 メインヒロインの「春日せりな」も嫌いじゃありません…っていうか嫌いなキャラは居なかったですよ。


◇ 備考

 所要時間: 1'stプレイ約3時間。コンプリートまで約18時間


私的満足度: ★★★★★ ★★☆☆☆

Copyright(c) 2007 SHEO