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ショコラ 〜maid cafe ”curio”〜 Re-order
発売日:2004-12-22 / 戯画
 2003年4月に発売された『ショコラ』の再販版。 追加要素として香奈子の後日談が語られるショートシナリオがあります。 私自身は旧版もプレイ済みですが、お気に入りヒロインである香奈子のSSが追加されるとあっては逝くしかあるまい…という理由から購入。 我ながらメーカーに踊らされてますが、実際にプレイしたのは発売から更に3年近く経過してからという駄目っぷりを発揮してしまいました。

 父親の突然の再婚&新婚旅行で欧州風アンティーク喫茶「キュリオ」の店長代理を務めることとなった主人公「結城大介」。 スタッフには恵まれているキュリオだが、新しく家族となった義妹の「すず」や、偶然知り合った世間知らずの家出娘「真名井美里」が加わり悪戦苦闘の日々が始るのだった…というあらすじ。


 店内の移動先を指定してヒロイン達とのコミュニケーションをとっていくイベント探索型のADV。 ゲーム期間は4月から6月までの約三ヶ月で、移動先選択は午前と午後の一日二回発生。 さらに店長代理としての仕事が毎日少しずつ溜まっていき、一定量溜め込むとゲームオーバーとなるのでヒロインを追いかけるだけでなく、タイミングよく仕事も消化していく必要があります。

 …というように、旧版で不評を買っていたゲームシステムは今回もそのまんま(システム面は多少改善されているけど)。 各ヒロインのイベントが満遍なく発生する前半はともかく、個別ルート突入後の後半は二週間近くも何のイベントも発生しない場合もあり、三ヶ月という期間のわりにイベント総数は不足ぎみ。 イベント発生の間隔も開いているため、話のテンポが削がれるのもマイナス要因ですね。 移動先を選択した時に表示されるSDキャラアニメは可愛らしいのですけど、せめて後半のMAP選択は止めて欲しかったところです。


 シナリオ展開も旧版と全く同じ…まぁ当然か。 上記の通りゲームシステム的には難ありですが、全体的にアットホームなほのぼの感が漂っていて非常に居心地が良く、ゲーム開始のプロローグから秀逸なテキストセンスや会話のノリでプレイヤーを物語の中に引き込んでくれます。
 主人公はいわゆる元ヤンキー(笑)で現在は偶に素が出るものの実直でお人よしな性格をしていて会話センスも良好。 翠や香奈子から昔の主人公をネタにからかわれたときの反応とか結構好きでした。

 ヒロインは6人ともキャラ立ては悪くありませんが、ライターさんに贔屓されてるキャラとそうでないキャラとで物語展開の格差がありすぎ。 贔屓キャラ筆頭の香奈子などは個別イベントだけでなく共通イベントでも伏線が鏤められ、強制バッドエンドと関連ルートを経てようやくTrueエンドが見れるという熱の入れよう。 それに加えて複線の張り方とそれを使う場面のセンスが素晴らしいのです。 例えば何気ない会話の中で出てきたコロッケの話では、後に香奈子というキャラの一途さを演出する要素になっていてなかなか上手いなぁと驚かされました。
 逆に真子などは主人公の何処に惹かれたのかすらさっぱり判らず、その主人公自身も他ルートでの好青年っぷりが嘘のようなヘタレ具合になっていて激しく萎えてしまいましたよ。 個人的にこのあたりのルートは「なかったこと」にしたいくらい。

 今回のRe-orderで追加された香奈子ストーリーは本編のハッピーエンド後という設定になってます。 結婚式を数日後に控えても相変わらず掴み処のない言動で主人公を悩ます流れ。 見所はクリスマスイヴの翠が気持ちにケジメを付けるシーンとラストの香奈子の笑顔でしょうか。 本編ですら見ることができなかった香奈子の笑顔を見れたというだけでもプレイした甲斐はあったと思ってます。


 エロシーンはヒロイン毎に2〜4回ほどですが、NormalルートとTrueルートでは異なる場合があるので1ルートでは実質2回と考えて良いと思います。 ちなみに旧作リリース後に公開された香奈子の「黒ストパッチ」はRe-orderだと最初から適用されていました。
 内容的には店長室などの店内で行う行為が衣装効果もあって割とエロく感じましたし、キャラへの思い入れが非常に強かったのでテキスト以上に興奮できました。 愛撫したときや射精時に画面がぴくっと揺れる演出も悪くはなかったと思います。


 システムまわりは後の『パルフェ』などと比べると劣りますが、旧版のシステムには無かったバックログ閲覧が追加されてるし、何より店内MAP上にイベントが発生しそうなキャラが表示されるようになっていたのは評価ポイントですね。 まぁ出来れば『パルフェ』のシステムと合わせて欲しかったですけど。


 ゲームシステムに難があり、ヒロイン毎にシナリオ落差が激しいといった荒い面もありますが、これらのマイナス要素が吹き飛ぶほど一部のルートで受けたインパクトが強烈で2003年当時としては十分良作と言える出来でした。 具体的には香奈子・翠・美里の3ヒロインだけで満たされた。


以下、ヒロイン毎の雑感を軽く(ネタバレあり)。


真名井美里
 世間知らずの家出娘。 一応パッケージ的にはメインヒロインという位置付けなんでしょうね。 明るく真っ直ぐな純真さが心地よかったです。夜の店内での告白シーンも印象的。
 Trueルートでは美里の親(ヤクザの親分)に連れ帰された美里を奪還しにいく流れで、このときの主人公は流されてるだけでしたけど他キャラ達の活躍っぷりが凄かった。 特にバラさんは何者だ?ってなもんですよ。

結城すず
 父親の再婚相手の連れ子=主人公の義妹。 最初からほとんど無条件で主人公に懐いてるのがちょっと気になった。 人見知りの激しい設定なのに大遅刻→三つの願いだけで即信頼に至るのは無理があるなぁと。 翌日には既に美里に対して嫉妬してたりするしねぇ。
 個別ルートではすずを異性として意識するようになって家に居づらくなり冷たく当たる…という流れ。 このルートは翠と香奈子にすずのことで相談するシーンが印象的でした。 溜まってるんじゃないか→二人で抜いてやる…な流れの後に出てくる翠と香奈子の会話はなんか良いですよ。 最後は両親にもあっさり認められてハッピーエンド。

大村翠
 中学時代からの同級生。 過去の主人公を良く知り、フロアチーフでもあるので他のシナリオでもサブキャラとして活躍するシーンが多いですね。 ある意味不憫ではありますが。
 香奈子の想いを知っていて、罪悪感を抱きつつもずるずると関係を引き伸ばしてド壺に嵌る流れ。 このルートもバラさんが大活躍。 当て馬にされたバラさん曰く「彼女の恋人にも夫にもなることはできる。けど彼女の一番には決してなれないんですよ。そこはもうずっとある男の指定席ですから」はちょっと痺れた。

桜井真子
 おっとり系ウエイトレス。 ぽややんとした性格は嫌いではない(寧ろ好き)ですけどシナリオ展開で割を食ったキャラですね。 主人公はなんか増長する上にエロ小僧と化すし、真子の「私の身体はある方のもの」発言で自棄になったりと痛すぎて見てられんかった。
 二つの大きな夢(目標)があり、ひとつは喫茶店を持つ事、もうひとつは素敵なご主人様に見初められる事…らしい。 うーん、求めているのはあくまでご主人様であって主人公ではないというのが微妙ですね。 ノーマルエンドでの堕落しまくった主人公と残念そうな仕草で応える真子が印象的でした。

橘さやか
 キュリオのパティシエール。 菓子職人としての腕は確かだが接客業に向かない性格なので全体的に出番は少なめ。 まぁアンチ眼鏡っ娘な私にはどうでも良いキャラでした。

秋島香奈子
 主人公と翠の学園時代からの友人で現在は店の常連となっている短大生。 ゲーム開始時にいきなり素っ裸で出てきたときは驚いたが、この掴み処のない仕草が上手く活かされていたと思います。
 チロルを絡めたファンタジー要素のある展開は賛否あるかもしれませんが使い方が上手くて個人的には無問題。 共通イベントや他ヒロインルートなどでも印象に残る言動が多く、一度Trueエンドを見た後に他ヒロインルートをプレイするとなんとも切ない気分になりますね。


ヒロインお気に入り順は
 香奈子 > 美里 > 翠 > すず > 真子 > さやか


私的満足度: ★★★★★ ★★★☆☆

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