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この青空に約束を―
発売日:2006.03.31 / 戯画
 全CGを開けてコンプ。 所要時間は1stプレイで約7時間、コンプまでは22〜23時間くらいだったと思います。 発売前から前評判が高く、体験版のインプレなどもネット上のあちこちに上がっていたようですが、私は体験版どころか事前情報を一切入手せずに登場人物の名前すら知らない状態でのプレイとなりました。 まぁ安牌ですしね(笑)。

 本州から遠く離れた南栄生島に住む学園生「星野 航」は生まれも育ちも島内であったが、とある事情で寮生活を送っていた。 島内の人口は年々減少し、主人公の住む「つぐみ寮」もこの春に入った新入生を含めて6人にまで減少。 しかも主人公以外は全て女性という状態であったが寮生達は皆楽しい日常を送っていた。 そんな折に転校生「沢城 凛奈」が入寮してきたのだった…というあらすじ。


 場所移動時のヒロイン選択によって分岐するタイプのADV。 ゲーム中に選択肢が出るような事は無く、シナリオ分岐は全て場所移動によるフラグ立てのみです。 『パルフェ』同様に一度見たイベントは概略や重要度などを表示してくれるし、基本的にはお目当てのヒロインを贔屓していけば良いだけなので難易度は低め。
 ヒロイン総数は一応7人。 構成的には春編→夏編と続き、その後はヒロイン個別ルートへと分岐します。

 ゲーム序盤の春編は寮や学園内で孤立している凛奈や、寮の早期解体を図る校長と教頭…と言った問題がいくつかあり、それらを対処しつつヒロインとのコミュニケーションも描かれていく感じで、ヒロイン達のキャラ立てと主人公を含めた寮生達の結束力の高さが上手く表現できていたんじゃないかと。

 主人公はいわゆる問題児ですけど、島民や学園生達からは慕われている“やんちゃ坊主”的なキャラで、ヒロイン達とのイベントも明るいドタバタラブコメ風のノリになっていて雰囲気は良好。 キャラ同士の掛け合いやテキストテンポも良く、イベントの落とし方も悪く無かったと思います。
 ただ、いくつかのギャグネタなどは戯画の過去作品を始め、他メーカーのエロゲをネタとして扱ってるものが存在するので、元ネタを知らないと置いて行かれそうなものが微量ながらありますね。 あとは細かい不満点として、オチが付いた後のアイキャッチがゆったりと表示されるのが鬱陶しかったりもしましたが…まぁこのあたりは敢えて不満点として挙げればというレベルなので人によっては全く気にならないかも知れません。

 で、夏編〜個別ルートでは春の問題点を皆で乗り越えた結束力を踏まえつつ、各ヒロインの設定を段々と掘り下げていく感じで物語構成としては手堅くはあるのですが…わりと王道というか先が読めるものが多かったです。 このライターさんの過去作では思わぬ伏線で意表を付かれる展開が印象的でしたけど、今回は一部のヒロインでちょっとしたフェイントが使われているくらい。 とは言え、先が読める=退屈という事は全く無く、居心地の良い世界観が上手く描かれていて吸引力は高めかと。
 個人的に特に素晴らしいと感じたのが主人公とヒロインが恋人同士になる直前と直後の描写。 元々ヒロイン達は主人公を憎からず思っているので恋愛感情へ至る経緯の描写は弱いですけど、どのヒロインにもすんなりとは恋人同士になれない理由があって、このあたりの障害を乗り越える過程と乗り越えた後の描写が気に入ってます。 先にも書いたようにヒロインのキャラ立ても良いので主人公やヒロインの言動に思いっきり感情移入しまくりでした。


 エロシーンは一人あたり3回発生(一部例外あり)。 エロ描写自体も結構濃い目ではありますけど、それ以上にエロシーンへ至るまでの流れで感情移入しまくっていてるのでヒロインに対する思い入れがかなり強い状態でのエロシーンというのが兎にも角にも興奮度を高めてくれます。 特に最初のキスシーンなんかでお互い貪るように唇を求め合う描写なんかは凄く良いです。 そんな訳で私的にはキャラ立てもそこそこに大量のエロシーンが展開する下手な抜きゲーよりよっぽど実用的に感じましたですよ。
 それと主人公達は寮生活を送っているため、同居人に気付かれないようにHする場所や時間を色々と工夫してる描写もしっかりと入っているのが笑えるし好印象。 割合的には寮内が1にその他(教室や海岸など)が2と言ったところでしょうか。 いくつかのシーンでは複数回射精も実装していて尺も長め。 選択肢が全く無いのも有難いです(笑)。


 システムまわりは『DuelSavior』以降の戯画でよく使われるタイプのやつですね。 スキップは高速だし、次の選択肢までジャンプする機能もあって快適です。 アイキャッチの表示速度の遅さが唯一の不満点。
 CGは枚数的な不足感は特に感じませんでしたが、欲を言えばもう少し欲しかったところかな。 立ち絵の動かし方や背景のスクロール処理など演出面は良好。 他にもプレイ時間によって変化するタイトル画面の背景(天気まで変わる)とかOPとは別に春編終了時にムービーが入ってたりと妙なとこが凝ってたりしました。 個人的にはこういうお遊び要素は好きな方です。
 BGMもなかなか良い感じ。『ショコラ』『カラフルキッス』『V.G.NEO』と言った過去作のBGMもあってこれがまた場面に合ってますね。 ボーカル3曲もかなり気に入ってます。


 丸戸氏の作品では『ショコラ』や『パルフェ』ほどのインパクトはありませんでしたが、全ての要素が高い水準で纏まっている良作と言ったところ。 個人的にはプラスαで主人公が気に入ったというのも高評価ポイントでした。


以下、プレイ順にキャラ毎の雑感(ネタバレあり)。


羽山 海巳
 主人公の幼なじみ。 初期状態で主人公への好感度MAXだが主人公の父親と海巳の母親が駆け落ちしてしまった為に羽山家は主人公の親戚連中から疎まれている…というヘビーな設定でした。 “みんな”とはぐれることを極端に恐れていて、過去に主人公が告白した時も“ふたり”なることを恐れて交際を断った経緯あり。
 キャラ的には上記の設定が明かされない段階だと空気読めない言動など鬱陶しさを感じますけど、設定を知ったあとも正直言ってそれほどクルものは無かったかな…。 個人的な好き嫌いで言えば嫌いなキャラですけど、作中はわりと主人公にシンクロできていたので海巳との交際を認めて貰うために寮の住人一人ずつ話を付ける展開とかは結構気に入っています。 全ヒロインルートにこの手のケジメを付けるイベントがあるのかと思ったら海巳だけだったので、この点はちょっと残念。 終盤でのイチャ付きっぷりなどは微笑ましくて良い感じでした。

六条 宮穂
 名家のお嬢様でこの春からの新寮生、兼理事長代理、兼寮のオーナー。 祖父はかつて島の生態系などを調査した名士で、夏休みの自由研究では主人公と共に祖父の蹄跡を追う展開。
 基本は鈍臭いぽわぽわ系なのに偶に毒を吐く…と言う性格とか容姿は割りと好みなのですが、主人公が自由研究を手伝う経緯が思いっきり端折られていて少し違和感を感じました。 主人公をゲットする為に立てた洞窟探索計画と、その時の宮穂の言動なども個人的には結構ツボなのですけど主人公は単に雰囲気な流されただけに感じますし…。 まぁコレは宮穂の作戦勝ちとも言えるんですけどね(笑)。 で、付き合ってからのイチャ付きっぷりはこの娘も良い感じですね。 避妊具を買う件とか笑えた。あと終盤の屋敷でのやり取りで「ざまぁ見ろですよ…」と負け犬の表情で言うシーンは結構キました。

朝倉 奈緒子
 主人公の先輩の生徒会長。 対外的には非の打ち所のない優等生だが、その実は腹黒くて計算高い性格で主人公をはじめ寮生達には本性を曝け出している。 ただし仲間に対しては非常に面倒見が良く、逆に外敵には容赦が無い。
 共通ルートで主人公が年上にモテるというイベントでの会話から予想は出来ていたけど過去に肉体関係があり主人公の初めての女性。 なんかDMFの某キャラみたいですな、流石に妊娠はしてませんが(笑)。 んで、シナリオ展開は二人の雰囲気が良くなった頃に奈緒子が昔の想い人と再会…という流れ。 後の展開は予想通りではありましたが、傍若無人な奈緒子が実はかなり一途な性格である…という設定が上手く表現出来ていてなかなか良い感じ。 受験する大学をわざわざ主人公が合格できそうなラインまで落として一年間待つあたり、めちゃくちゃ可愛いですわ。

桐島 沙衣里
 主人公のクラスの担任、兼寮長。 意図せずこの島に赴任してきたため序盤などは事なかれ主義な言動をしているが、終盤は寮の存続の為に主人公と共に奔走する展開。
 作中では合コンを企画してたりするが実は男性経験に乏しい(ぶっちゃけ処女)というこれまたお約束な展開ではありますが、年下の主人公にメロメロになっていく様はなかなかそそる。 主人公と行ったラブホ内で生徒手帳を落とした事で職員会議を開くことになるが、そこでの見せ場がなかなか見応えあって楽しめました。 キャラ的にも可愛げがあって、よくお茶を飲んでる最中に寮の騒動に巻き込まれ「あふい(熱い)よ〜」と悶えてるシーンが印象に残ってます(笑)。

藤村 静
 主人公の後輩。 両親は島に在住だが保護者として難ありな上、静も不登校な生活を送っていたため主人公が寮に連れてきた…という経緯あり。 無口ながらも主人公に非常に懐いていて、主人公もまた娘のように接している。
 シナリオ展開はふとした事で性の刺激に目覚めた静が主人公に色々と教わる…という流れなのですが、無垢で典型的なロリ体系キャラなので一連のエロ描写は軽く嫌悪感を覚えました。 バレた時の皆の冷たい反応も当然ですな。 つーか主人公も自制しろよ。 エピローグで出てきた成長した静は良い感じだったので出来ればそっちバージョンでのエロシーンが欲しかったです。

沢城 凛奈
 この春からの転校生。長距離走のタイムは全国レベル。 父親の住むこの島へ引っ越してきたが、父親に愛人が居ることを知って自宅では無く寮に住むことを希望してくる。 他人を拒絶して生活することを望むが主人公が二ヶ月かけて寮の仲間へと引き込む…という展開。 ただ二ヶ月かかって段々と心を開いていくというよりは序盤で主人公の熱さに触れたことで気になる存在になった…という感じがしました。
 シナリオ展開では島の名物である「あわせ石」を幼い頃にお互い渡した/渡された記憶がある…というお約束な設定なのですが、実は記憶の中に人物はお互いに別人だったというフェイントオチで思いっきり意表を付かれました。 石の探索からお互いの石を合わせるまでの流れをあんなに盛り上げておいて実は違ったなんてオチは流石に予想外ですわ。 んでこの瞬間、今回の真ヒロインはヤツか…と(笑)。

三田村 茜
 凛奈が転校してくる一日前に転校してきた娘。 マシンガントークが特徴なペンション「サザンフィッシュ」のマスター隆史の妹。 このキャラは全ヒロインクリア後にプレイ可能なシナリオ「約束の日」を見た後にバッドエンドルートから入れます。
 他のシナリオとは時期が異なり、他ヒロイン達は既に島から去り、つぐみ寮も既に解体されて主人公がヘタレてる時期の話。 そのヘタレた主人公を持ち前の明るさで元気付けようとする茜が凄くいじらしいです。
 凛奈シナリオプレイ中に石が合わなかったのを見て、茜が記憶の中の女の子だろうと予想していて、このあたりの茜の思いの丈が語られるのかと思っていたのですが…いや、実際に茜が思い出の女の子なのは間違い無かったですけど、作中では主人公は最後までそのことに気付かないのがちょっと拍子抜け。 もちろん後に希望が持てる終わり方でしたけど全体的に尺も短いので欲を言えばもう少し互いのイチャ付きっぷりを描いて欲しかった。 ホントこの点だけが残念です。


お気に入り順(シナリオ度外視)は
 茜 > 宮穂 > 沙衣里 > 奈緒子 > 凛奈 > 静 > 海巳
個人的には女教師キャラのさえちゃんが上位に食い込んでいるのが意外だったり。


私的満足度: ★★★★★ ★★★+☆☆

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